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悲しみを和らげるために与えられた時間

つい今朝まで、ついさっきまで一緒にいた
大切な人、愛する人を突然亡くす悲しみは...

"心臓が止まった"

友人からのLINE

えっ? なにっ?

夫婦で四国を旅行しているはずだけど⁈
さっきまで
きれいな景色や美味しそうな料理の
写メを送ってきてたけど⁈

心臓が止まったのは友人のご主人

LINEが来た時には、すでに
ICUにいるらしかった。
意識不明。当然だけど...

旅行先での突然の出来事

私には詳細はわからない、見えない
次に入ったLINEには、
脳死の一歩手前の状態とのこと

それからまもなく、ひと月は経つ頃

まだ、友人は旅行先のホテルにいる
そこから毎日病院に通っている

この状態になった当初、友人は
自分のことを責めていたらしい

異変に気がつかず、
救急車を呼ぶのが遅かったと。

友人の体と心が、
ボロボロになっているのが
容易に想像できる

何も飲まず食わずでいるんだろうな...
泊まっているホテルで一人
泣いているんだろうな...

ご主人の兄弟や、親戚が
入れ替わり立ち替わり来ていたらしい

当初は、私のLINEへの返信は、
うん、うん...ばかり
言葉すら見つからないのだろう
おそらく体力も消耗する中
自分を責め続けていたのかも

ホテル泊まりをしながら、そこから
毎日病院へ行っているらしい

今再びコロナが流行り出し、あげくに
インフルエンザまで出ている影響で、
面会は、一日に一人限定の
面会時間は15分。

病院には病院の言い分があるのだろうけど
それでもね、
意識がないとはいえ、まだ生きている。
まだ生きてはいるけど、
もしかしたら...もうその姿すら
会えなくなるかもしれない。

なのに、面会時間が15分。
友人はおろか、兄弟が面会したら、
妻である友人は、その日は会えない。

友人は、面会できる時間以外は、
病院の外にずっといるらしい

少しでも近くにいたいのだ。
たとえ中に入れなくても、できる限り
近くで見守っていたいのだ。

仲の良い夫婦。友人は10歳年上妻。
旅行が好きで、頻繁にあちこち行っては
写メが送られてきた。
一心同体なんじゃないかと思うほど
仲が良い夫婦。

旅行中の突然の出来事
家に帰ることもできず、
一日たった15分の面会に足を運ぶ
それ以外の時間は
病院の外にずっといる毎日。

もうすぐひと月になろうとする頃。
その辺りから友人のLINEのメッセージが
変わった

まだね、頑張ってくれてるの。
だから、二人で一緒に頑張るから
心配しないで。
私は食事も取れるようになったから
大丈夫。心配しないで。

時間が友人を変えたのか。

時間は、人を変える。

旅行先のホテルに泊まり込み
たった15分の面会に毎日毎日
足を運んで、病院の外から
見守っている。

看病。
大切な人、愛する人が病床になったら
形はさまざまでも看病をする。
そこには、自分の時間も体力も捧げる。
看病の時間が長ければ長いほど
疲れが積もっていく。
やがて疲れの中に、あきらめがついてくる。

それは、大切な人、愛する人を失う悲しみを
和らげる時間なのではないかと思う。

朝、いってらっしゃいと送り出し、
夜には、お帰りなさいと迎えるはずの人が、
二度と帰らない人となった時の悲しみは
計り知れない。

そんなふうに突然失うのではなくて、
看病という時間によって、疲れた体と心には
あきらめが付いてくる。

もちろん、今の友人だって、
愛する人の回復は願っている。
願っていながら、毎日15分の面会に足を運ぶ。

その時間は、
友人に何かを与えているかのように見える。

"一緒に頑張ってるからね"

時間は、
友人に穏やかな心を与えているようだ

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