踊りはプリミティブな喜びに満ちている。
フラを踊るいわゆる「フラ人口」は、日本ではハワイ本土よりも多いと言われていて、踊ること、ダンスというものが一般化していない現代においても常に高い関心が持たれています。
Googleの検索においては「フラ」の月間検索数は平均して11.4万件（2019年9月～2020年2月の平均値）、これは同時期のバレエ（月間13.4万件）、ピラティス（月間12.8万件）とあまり変わらない検索数となっています。
健康や美容に良い趣味としてはヨガが月間検索数も76.2万件ととても人気ですが、それに代わるもの、また新しく取り組むものとして注目されているのかもしれません。
文字を持たない古代から伝承されてきたフラ
フラの紹介として、ハワイ州観光局には下記のような説明がされています。
「フラは、詠唱や歌に合わせて踊るハワイ独自のダンスです。文字を持たない古代ハワイの人々が、ハワイの物語や伝統、歴史を身体の動きで表現し、長年に渡って語り継いできた大切な文化の一つです。言い伝えではモロカイ島とカウアイ島でフラが始まったとされており、その魅力たっぷりのフラは、米国本土、日本、そしてヨーロッパにもその人気が広がっています。
フラにも種類があります。私達に最もなじみのあるのはフラ・アウアナ（現代フラ）で、西洋の影響を受けた音楽に合わせ、流れるような動きで踊られます。一方、フラ・カヒコ（古典フラ）は、ドラマチックな詠唱と打楽器の演奏に合わせ、伝統的な衣装を身にまとい踊られます。」
プリミティブな踊り。森羅万象と響き合うための手段
ポリネシアからわたってきた海洋民族の祖先たちが、孤島のハワイで築き上げてきた独自の文化。その中心ともいえるフラ。
自然とつながり、共同体とつながり、愛する人と出会い新しい命とつながり・・・・・、森羅万象とつながり響き合うための手段として、そこにはプリミティブな踊りの要素がすべて存在していたことでしょう。
ところがその後、1778年に西洋諸国にハワイが発見され、1795年にカメハメハ大王がハワイ全島を制圧することになって、残念ながらフラは原始のものから形を変えていくことになります。
時には権力者の権威を誇示するものとして、時には宗教的な理由から弾圧を受けるものになり、そして西洋文化を真似たエンターティメントとして、時代とともに変化をしていきました。
そんな中、1970年代に行われたハイワイアン・ルネッサンス（文化復興）運動によって、本来のプリミティブなフラの要素がカヒコとして復興されることとなりました。ハワイアンの方々の伝承を途絶えさせたくないという情熱によって、現代のわたしたちはそんな太古の本来のフラから、形を変えていったエンターティメントのフラまで、フラの幅広い要素を学び、味わうことができるようになりました。
フラを始めてみたいな、興味があるな、と思う時、そんなフラの幅広い側面のどこからでも、自分が惹かれたものから始めてみるのが良いのかもしれません。
神々と対話するための神聖なるギフト
踊りはそもそも、自然への祈り、求愛行動、歴史の伝承手段、娯楽、相手への威嚇行為、権力者への服従の証などなど、多面的な要素を持つものです。
そして続けるうちに、その中心核となる自然や森羅万象と一体となる感覚が喜びに変わり、生活の中に欠かせないものになっていくのかもしれません。
形而上学博士で、ハワイアンのスピリチュアリティを専門にするエリース・マヌハアイポ・カーン博士の言葉を紹介した書籍フラ・カヒコでは、フラの源流についてこう語られています。
「フラのステップの基本はグラウンディングです。力強く踏み鳴らす大地に響き渡る振動は、生命力の源です。地中奥深くから沸き上がるマグマのパワーとつながって、無限大のエナジーを発散させます。
右足から取り入れた大地のエナジーは、背骨のラインに沿って頭上まで一気に駆け上がり、体の中を循環しながら踊り手の波動と一体になります。
踊り手は集めたエナジーを手の動きを通して自然界に放出し、残りのエナジーはふたたび左足から大地に返します。」
「森羅万象を理解し、大自然のなかに神性を見出した初期の移住者たちは、グランディングができてこそ、天上界の高い波動につながることを知っていたのです。」
【フラ・カヒコ 魂の旅路 文・レイア高橋、発行者・森弘毅】
現代の日本でも、沖縄などでは自然とつながるプリミティブな踊りが祭りの中に一部残っていますが、特殊なものになってしまいました。
今となってはハワイのようにルネッサンス（文化復興）を起こさない限りは、消えていく運命にあるのかもしれません。
前述の高橋レイアさんの著書に登場する老女が語る言葉。
「踊るとき、心の中は平和なの。感謝と喜びを感じ、愛に満ち溢れているのよ。フラは踊る人を浄化すると同時に、それを見る人に癒しを与えるの。神々と対話をするために女性に与えられた聖なるギフト”フラ”。それは我々ハワイアンの魂のふるさとなのよ。」
わたしたちは失いつつあるギフトを取り戻したくて、フラにこんなにも惹かれているのかもしれません。
フラの力を借りながら、わたしたち自身のルーツにある踊りを探求していけたらよいですね。
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