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ガーゴイリアン

 霊感がある知人と心霊スポットに行ってやれ何か見えたとか肩が重いとか騒いでいるつまんねえ怪談。その「霊感がある知人」、がヘルメットかぶって働いてるのが工事現場!自称「視える人」のなんと多いことか──「この現場にくると肩が重くなる。」毎日重い物担いでるし肩こりじゃないでしょうか?英語だとNintendo。地下が停電になる度「悪い霊のしわざだ」って言うけど、水中ポンプ、送風機、投光器、電動ピック、ベビーサンダー、電気使いすぎてブレーカー落ちただけ。霊は静かで清潔な環境を好むという話もありますし、結論、現場に霊はいない!

…とはいえ不思議なことは、ありました。お疲れ様ですとんかつです。(懐中電灯を顔の下から照らしながら。)例えば着工前に地鎮祭をやらない建物はないですし、事務所には必ず神棚が置かれ毎日お供えをし、受電した電気室の四隅には塩が盛られます(感電死を防ぐ)。効率・コスパ第一主義(おっと安全第一主義でしたっけ?)の建設業界においてもまだ神仏に割くお金と時間があるとはさてもさても。わたしは霊感などありませんが、仏様に足を向けては寝られませんし、神棚のお酒がカビてしまわないように気にしています。夜は墓場で運動会なんてもってのほか、超自然への畏れのような気持ちを抱いて暮らしていることは、人間にとって大いに意味のある事だと思っています。では現場であった不思議な話を何個か書いてみます。

第1話 畜生札

 とある神殿のご本尊の改修工事。天井裏で作業していた2名が急に体調不良になった。別の作業員が作業したところ今度は彼の実家が火事になった。
「何かまずい。」
関係者に相談したところ、「頭の上を人間がうろうろしているので神様が怒っている。」とのこと。
現場は一計を案じ、全作業員に誓約書を書かせた。

わたしは人間ではありません。
□YES    □NO


また、関係者がご祈祷なされた、家畜のイラストがかいてあるワッペン(お布施¥1,000)を身につければ天井裏での作業も祟りフリーとのことだった。

あと、天井裏で人間の言葉をしゃべる事を禁じられた。ブーブー。ブヒ~?ブヒブヒ?

ブッヒろす!

おわり

第2話 GARGOYLIAN(ガーゴイリアン)

 ある冬の日の夕方、高層ビルの窓を外部作業用ゴンドラに乗って2名で掃除していた。

地上100m、外部作業用ゴンドラ(が故障して2時間宙吊りの状態でうなだれるTちゃん)

「なんか飛んでない?」
400m先、幸福の科学本部の建物の上を何かが飛んでいた。時は2010年、ドローンはまだお目にかかった事はなかった。

「なんかでかくない?」
ここが地上120mだから、その半分ぐらいの高さを、ゴンドラの幅と同じ4mぐらいの物が飛んでいる。パラグライダー?注目したのはその飛び方だ。まるでアルファベットのWを書くように、上に行ったり下に行ったり、まるで狂ったコウモリのようで、なんか寒気がした。
わたし「なんかプテラノドンじゃね?」

「何丼っすか?」

──プテラノドンをご存知ない相方の教養に驚いた。

わたし「ガーゴイルかもしんねえ。」
「なにがILLんすか?」

「ガーゴいる。」

ガーゴイルは幸福の科学の屋根にとまった。
わたしは暗くなってきたのでゴンドラをビルの屋上に戻した。おわり

第3話 恐山

 わたし「へー実家青森なんだ。恐山とか行った?」
「恐山ってなんすか?」
青森県出身で恐山知らない人っているの? おわり

第4話 ハロー! Youtube

 現場に池や井戸があると良くない事が起こるのは常識。無人の重機が突然動き出して首を刎ねた話は有名。図面にない古井戸が出た!90年の歴史がある遊園地の解体工事。工事を進めるには神主さんを呼んで井戸を埋める儀式をしなければならない。霊や魔物などよからぬモノが寄ってくる前に──
次の日、朝礼は上役が発狂モード。曰く、


「昨日◯◯建設の下請けの作業員が敷地内に自称Youtuberが乗る車両を呼びこみ、現場の様子を撮影させていた!」とのこと。

霊や魔物ではなく霊夢や魔理沙が来た。

お施主さんは激おこ、◯◯建設は指名停止になった。

動画みたけどつまんなかった。これほどの極上コンテンツをおもしろくできないなら収益化は無理! おわり

第5話 墓地の彼方に・・・

 三鷹に住んでいた頃、現場で使う新型ヘッドライト1800ルーメンの威力を確かめるべく、深夜に、街灯がないあたりをTESTSETしていたら、墓地の暗闇から楳図かずお先生が急に現れた。 おわり

──いかがでしたでしょうか。現場に霊はいない!けど現場というか地球には何かいる!
ということがお分かりいただけただろうか。
ちなみに現場で出会う一番怖いものは入れ墨パンチ鳶職人やパワハラ所長ではなく、こいつら↓です。

第6話 ガーゴイリアン2(GARGOYLIAN 2)

「コレ開けてくれよ。」
現場の喫煙所で話し掛けられた。おじさんは両手の指が親指と人差し指、2本ずつしかない。
「力入んなくてよ。」
わたしは渡されたペットボトルのふたを開けて尋ねた。「ケガしたんですか?」
おじさんは答えた。

「いやよう、カネがなぐなるタンビに指、一本ずつ現場で切り落どしてたらよ(労災)、あど4本しかなぐなっちまったのヨ!」

「ダガラ今度はヨ、カラーコーンやってねえ重機のどごさブツカリ行ってオガネもらったの、ヨ!」

おじさんは歯のない顔でガーゴイルよろしく満面の笑みを浮かべた。
…わたしは重機を運転するとき周囲の立ち入り禁止をよりいっそう徹底するようになった。

おわり 完

みなさんも気をつけてください!

おわり 完
──────

Nintendo


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