カウンター・パルス
ある日、わたしが現場でめちゃくちゃな口笛を吹いていると、
「へえ~『クロアチアの夜』ですか。やっぱり現代音楽とかお好きなんですか?」
と話しかけられた。
わたしは『クロアチアの夜』という曲は知らなかったが、現代音楽は好きなので「はい。」と答えた。
話しかけてきたのは少し前に派遣会社から現場に来た小柄な中年の方だ。工事の仕事の経験は浅いという。しかし落ち着いた口調と丸眼鏡をかけたその顔からは、どことなくアカデミックな気配が漂っていた。何より現代音楽においてわたしなんかより遥かに