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餓狼伝説、泣いた赤鬼

 コロナで自宅療養してる間に本、楽器、CD、DVD、ゲームという、俺がモテない原因5大アイテム(次点でGショック)の整理をしました。小売店かというぐらいたくさんあったんですが、それだけ全然モテなかったんですが、結婚して早や5年、息子が生まれて1年8ヶ月、その間ほとんど非モテグッズには触っていません。
独身全盛期には映画観ながらギター弾いてる横でプレステの◯ボタンをガムテープで固定してドラクエ7のカジノでコイン稼ぎしながら攻略本を足でめくっていたのになぜだろう。
今でもゲームをやりたい。映画を観たい。本を読みたい。そしていついかなる時でも、霊感で浮かび上がってきた新曲のアイディアは逃したくない!ハードディスクレコーダーはいつでもボタンひとつでレコーディング可能な状態、ミックスしてすぐCDに焼けるようにCDレコーダーもミキサーを通してあります。リズムマシンやプリアンプなんかはすぐ音が出せるようにモニタースピーカーに繋ぎっぱなしです。なのに5年間、1小節のトラックさえも作っていませんでした。

AKAI XR20(と、パパイヤ)


ご覧のように、夜中にこっそりパパイヤを食べる際の照明としてしか使っていません。なので全部しまいました!ところで息子が今年「シマーノ(しまうの)。」という言葉を覚えました。使ってないのに場所ばかり取る音楽機材をシマーノ。
あとギターも思い立ったらすぐ弾けるように5本スタンバっていたんですが、よく考えたらギターを弾いたのってこの5年で1時間ぐらいなので、1本に減らしました。潔く全部しまったほうがよかったんでしょうが、やっぱり弾かなくても、1本はすぐに手に取れる場所に置きたかった。ギターは男にとっていわば刀、練習なしのナマクラ1本でもいざ鎌倉!と、いつでも弾けるようにしておきたい悪あがき。
 その他にもすぐにプレイできるようにスタンバっているレトロゲームの数々、すぐに観れるように並べられたカルト映画のDVD、どれも埃を被っていました。ああ何故おれは何もしなくなっちゃったんだろう!仕事や育児が忙しいから、というわけではないのです。こうしてスマホをいじっている時間はあるのですから。

【ひとくちコラム:わたしの子育ての体たらく】

おむつ替え、沐浴、70℃のお湯でミルク作り、水と氷で人肌の温かさにミルク冷まし、お着替え、寝かしつけ、哺乳瓶消毒と洗い、なんとか博士の育児本で勉強、パタパタうちわで扇ぎ、ワセリン塗り、爪切り、掃除、消毒、ベビーグッズの組み立て、洗濯、畳み、整理整頓、おしり拭き、ミュージックのセレクター──産まれたばかりの赤ちゃんのお世話はやることがたくさん!折しも真夏のコロナ渦。とにかく大変だが妻はおれの100倍以上大変だ。産後の傷んだ体で、暑い盛りなのに授乳、搾乳、夜通し本当にありがとう…。そんな中わたしは早々に自律神経がおかしくなってしまい、不眠と拒食の症状が出てしまったので心療内科のお世話になることに。
「適応障害です。」畏れながらもかつてのとあるやんごとなきお方と同じ病名。わたしは新しい環境に適応できませんでした…。
昔からそうだ…不器用で、初めてやることに関しては誰よりも劣った結果しか残せない。初めて工事の仕事をしたときは一輪車で生コンをひっくり返したうえ水銀灯を割ってしまい現場を真っ暗にした…初めてスキーに行ったときはスキーが止まらず「ハの字」のまま知らないおばさんにとっしんしてケガをさせてしまった…初めてパソコンを使いハイエナズクラブの記事を書く練習をしようとしたらボタンを押し間違えすんげえ恥ずかしい文章を許可なく全世界に公開した…子育てでも1番楽をしている自分が真っ先に壊れ妻と子に迷惑をかけた。
そんな中、励ましてくれた妻、そして息子の笑顔のおかげで元気を取り戻し、それからはとにかく栄養のあるもの(すた丼、カツカレー等)を食べるようにしていたら、すげえ太った。(91キロ) 

おしまい


さあ、何故わたしは準備にばかり精を出しそのあと何もやらなくなってしまったのか。思い出すのは格ゲー(対戦型格闘ゲーム)全盛期の頃──

1992年 茨城県北部 カナサゴー村

 ゲームセンターなんて望むべくもない田舎に、格闘ゲーム旋風が巻き起こった──スーパーファミコンでストリートファイターⅡ発売!わたしが初めてそれに触れたのは中学生の頃、たまり場になっていたダイチャンの家だった。
ダイチャンの家は両親が共働き、広い3LDKとたくさんのマンガ、ビデオ、CD、ゲーム、そしてギターとベースがあり、今思うとかなり裕福な家庭だった。そこに部活をサボった5、6人が集まって、買ってきたポテトチップとコーラを飲みながら、マンガを読んだりCDを聴いたりゲームをしたりして遊んでいた。わたしはよく自分のギターを持っていってダイチャンと一緒に弾いていた。
 そしてある日ダイチャンがスーパーファミコンに差し込んだカセット、それまで思い思いに遊んでいた皆の目が画面に釘付けになった。
大きくて存在感のあるキャラクターたちが休むことなく躍動し、ボタンを押せばキビキビと動く。一対一のタイマンだ。殴ればパンチに感じる重量感、足元を蹴ればダダンとすっ転ぶ。そして手からなんか出した。「ハドーケン!」みんな爆笑した。
ハドーケン!ハドーケン!タイマンの最中に唐突に言う言葉がハドーケン!普通ぶっ殺すとかじゃないのか。でもなんか絵面に説得力がある。これはどう見てもハドーケンだ!力士が頭からドスコイと突っ込むるに至っては1人過呼吸になった。
「何これめちゃくちゃ面白そう!?」
「これ昨日買ってもらったストリートファイターⅡ!」
その後、全面クリアを目指し、全員で交代しながら遊んだ。勝って楽勝、負けたら爆笑、素でいいから頭から突っ込め!(ラップ)

 今思うとこれまでのゲーム体験の中でこれほど笑った日はない。

結局その日はスペインの忍者バルログが倒せず、夜8時になりダイチャンの両親が帰って来たのでお開きになった。
次の日も、その次の日も皆ストⅡをやりにダイチャンの家に詰めかけ、ギャラリーも増え、最終的には11人がかりでようやくエンディングに辿り着けた。

わたしはうらやましかった。
ストⅡが欲しいというのではなく、あんなにたくさんの人が毎日家に遊びにきてくれたらどんなに楽しいだろうか、と。

「よし、俺も何かおもしろいゲーム買って友達を家に呼ぼう!」

何ヵ月分かのお小遣いをため、当時ゲームセンターでストⅡと人気を二分していたという格闘ゲーム、

「餓狼伝説」のスーパーファミコン版を買った。

まず箱の裏の画面写真を見るとゲーセン版と遜色ないグラフィック。これは100%面白いに違いない!しかしすぐにはプレイしなかった。
まず、部屋の模様替えをして、大人数でもテレビ画面が見やすいようにした。次に持ってるマンガやCDやギターを誰でも手にとって楽しめるように作者、巻数、メーカー、アーティスト別、あいうえお順に棚に並べた。そしてお母さんに「明日友達たくさん来るからジュースとポテトチップ買ってきておいて!」とおねがいした。

 わたしは次の日学校で「スーファミの餓狼伝説買ったから放課後うちでやろう!」「ジュースやお菓子もあるよ!」などと仲間たちに嬉々として触れ回った。

「へえー」「行けたら行く」「ダイチャンち行ってから行く」「たぶん行く」

…なんだろうこの気持ちは。いやな動悸が早鐘を打った。

ゆうくん「今日?分かった帰り一緒に行くよ!」

ようやく1人遊びに来てくれることになった!その他「行けたら行く系」3人を頭数に入れると4人。想定よりちょっぴり少ないがスタートには十分。

さあ、今日からはスーファミの餓狼伝説で大いに盛り上がろう!

放課後、ゆうくんと一緒に帰宅。すると母がジュースとポテトチップと、

大量のいなり寿司

を用意して待っていた。わたしはまたなんか動悸が速くなってくるのを感じた。
ゆうくん「みつくんのお母さんこんにちはー。餓狼伝説やろ~」

わたしは額にうっすらと汗を滲ませながらスーファミにカセットを差し込んだ────。

【からくちコラム:スーファミの餓狼伝説は本物のクソゲー】
SFC餓狼、クソ!格闘ゲームで最も大切なものは何か!?わたしはゲームの専門家ではないが言わせてもらうと「重・量・感」!餓狼伝説はペラッペラの「トイレットペーパー」!ジャンプしてみればふんわ~り。無音で着地。そんなのトイレットペーパー以外ねえだろうが!水に良く溶けろ!
効果音も、かある~い。同じスーファミのストⅡはベシー!ドゴオ!ズゲシ!と重みのある大迫力!これぞ重量感!かたや餓狼は ヒュ ピシー ヒュ・ヒュ …やる気ある?アーケード版は普通にバキッ ドカッみたいな音なのになぜ…。
しかもふんわりしてるくせにカックカク。キャラのコマ数が異様に少ない!敵のおっさんはカポエイラ使いらしいがひょうきんロボットのモノマネをしている芸人にしか見えない。こんなふざけた奴に負けたくねえ!負けたくねえ!負けたくねえ…のに…
説明書通りに操作しても必殺技が一切でねええあ!!
敵はガンガン飛び道具やら突進やらの必殺技を使ってくるのにこっちはヒュ ヒュ のみ。どうやらコマンド受け付けの仕組みがゴミのようだ。しかし良く見りゃ敵のアルゴリズムがバカ過ぎるのでジャンプキック→下段キックでハメ殺して全面クリア可能。ヒュ・ピシー  ヒュ ヒュ。 つ・まんー  ね   えええええええええああ!!


…こんなシロモノが¥11,000…小遣いを貯めて楽しみにして定価で買った俺…発売したメーカーはタカラ…
    「遊びは文化」 タカラ

でもスタートボタンを押した直後のキャラクター選択画面がゲーセン版そっくりでよかったです!そこだけしか褒めるところがないんですけど!

100メガショック NEO GEO


ゆうくん「…これつまんない。 塾があるからもう帰るわ~」

その後、友達は誰も来なかった。

大量のいなり寿司は家族の晩ごはんになった。


…わたしは、タカラ餓狼がクソゲーだった事より、友達が来なかった、いや、本当はいなかった、という事より、

わたしの友達が喜んでくれるだろうと、たくさんいなり寿司を作ってくれた母が今どんな気持ちなのか、考えるだけで胸が苦しくなってきた─────


──────で、何でわたしが、楽しむ準備ばっかりして自分では何も楽しまないかっていうと、ひとつは妻と子に楽しんでほしい、もうひとつは父と母に楽しんでほしい、もうひとつは誰でもいいから楽しんでほしい、からです。

人を楽しませる事は自分が楽しむより楽しい。なのでいつでも遊びに来てください。おもちゃもお菓子もございます。赤鬼


と、新型コロナ自宅療養明けに思いました。

おわり 完
─────

NHK


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