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2023年 ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ音楽祭レポート その2

みなさんこんにちわ。パリ在住音楽ジャーナリスト・翻訳家のVictoria Okadaです。パリは過ごしやすい日が続いていますが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。

前回に引き続き、今年2023年のラ・ロック・ダンテロン音楽祭 Festival international de piano La Roque d'Anthéron をレポートしていきます。


名物ピアノ運送トラクター

ラ・ロック・ダンテロンの名物は何と言ってもピアノを運送するトラクター。恒例のアトラクションとして、運送中のトラクターには毎回小さな人だかりができます。このようなピアノの扱いは思ったより大変なのですが、担当の方の技術は素晴らしく、センチ単位でピタッと決められた位置にピアノを搬入・搬出するのは見事という他ありません。

会場にピアノを運ぶ © Victoria Okada
コンサートが終わって。ピアノだけでなく機材も搬出 © Victoria Okada

フロラン城公園のメインステージ

メイン会場のフロラン城公園 Parc du Château de Florans (公式にはフロラン城公園なのですが、一般には「フロラン公園」と呼ばれています)のステージは、野外ステージであるにもかかわらず音響が全く施されていないという点で、おそらく世界で唯一のステージだと思われます。外れ席はありませんが、客席のほぼ中央に座ると、まるでクラシック音楽専門の音楽ホールのように、細部まで本当によく聴こえるのです。
しかし最初から大規模なカプセル型の反響システムが導入されたわけではありません。客席裏に展示されているかつての写真を見ると、ほとんど手作りに近い小さな設備から徐々に発展してきたことがわかります。

座席表。2段になっている中央ブロック上部の緑色部分と下部の上方が音響的にベスト。
© Victoria Okada
ベストシートは写真左側あたり © Victoria Okada
1986年。座席下の展示写真より。© Victoria Okada
1991年ごろ。座席下の展示写真より。© Victoria Okada
2013年ごろ。座席下の展示写真より。© Victoria Okada


現在の舞台の総面積は300平米、反響版は122枚で、それぞれの反響版には細かいアングル設定がなされており、その角度は設計図との誤差1/10度の精度で設置されているそうです。

座席下。開口部から反響板が見える © Victoria Okada
座席下の写真ギャラリー © Victoria Okada


財団になったフロラン城公園

「フロラン公園」はこれまで何代にもわたってある家族がこの土地を所有してきました。音楽祭発足以来、この家族が3代にわたって音楽祭の運営主体者となっていました。しかし今年の音楽祭の開幕日に、音楽祭の存続を保証するために、今後は新しく設立された財団(Fonds de dotation du Festival International de Piano de La Roque d’Anthéron)が音楽祭を運営していくことが発表されました。財団の総裁はパリ・エコール・ノルマル音楽院の総裁でもあるグザヴィエ・モレノ Xavier Moreno 氏。新体制となったラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ音楽祭(アソシエーション)の会長は、ジャン=ルイ・ブラン Jean-Louis Blanc さんです。

縁の下の力持ち

ラ・ロック・ダンテロンのような大きな音楽祭になると、多くの裏方さんが働かれており、これらの方々の尽力は欠かせません。しかし彼らは決して前面に出ることはありません。毎年音楽祭開始の1ヶ月前から反響版と客席を組み立て、終了後1ヶ月間にわたって解体する作業に関わる方もしかり、上のピアノ運送の方々もしかり。フロラン公園の入り口で持ち物検査をしている警備の人もしかり、ボランティアでチケットチェックや座席案内をしている人もしかり。アーティストや関係者の移動時のドライバーさんや、宿泊関係者、ケータリング・売店の方々もしかり。また、芸術面での運営を一手に引き受ける CREA (ルネ・マルタンさんを筆頭として、ラ・フォル・ジュルネやラ・ロック・ダンテロンをはじめとするさまざまな音楽祭のプログラミング等を担当)のスタッフの方々もしかりです。

下の若い女性は、公園の裏口の警備員さんです。メインの入り口ではないので、ここを利用する人は限られているのですが、常駐して安全を確保する必要があります。音楽祭の期間中ずっと任務につかれているそうです。お名前をお聞きするのを忘れてしまいましたが、大変にご苦労様です。

フロラン公園の裏口で警備にあたっていた女性。© Victoria Okada

そして昨年もご紹介したプレス担当のアリーヌ・ポテ Aline Poté さんと、昨年から彼女のアシスタントとして奮闘されているポーリーヌ・カレ Pauline Quarré さん。ポーリーヌさんは昨年は学生の研修として、今年は社会人1年生として、アリーヌさんと名コンビを組んですでに多くの音楽祭などでジャーナリストをサポートしてくれています。

プレス担当のアリーヌさん(左)とポーリーヌさん。コンサート前のチケット配布ブースにて。
© Victoria Okada

写真は無断転載禁止。

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