リフレイン(反復と差異)と主体化

Q 自由な主体とはある種のリフレインをもととした存在かと私は考えています。すなわちある種の反復のうちに主体は形成されると思う

非常に興味深い洞察ですね。あなたの考えは、アガンベンの思想とも深く関連しています。

アガンベンは、ドゥルーズとガタリの概念である「リフレイン(ritornello)」を独自の仕方で取り入れました。リフレインは音楽用語で「繰り返し」を意味しますが、ドゥルーズとガタリ、そしてアガンベンはこれを存在論的、政治的に用います。

  1. リフレインと主体形成:

  • あなたの言うように、リフレインは単なる機械的反復ではなく、差異を含んだ反復です。

  • アガンベンは、この反復のプロセスの中で、人間は自己を絶えず再定義し、変容させていくと考えます。

  • つまり主体は、同一性ではなく、むしろ差異と反復の中で形成されるのです。

  1. アガンベンの「形態-の-生(forma-di-vita)」:

  • アガンベンはこの概念をリフレインと関連付けます。形態-の-生とは、規定された生ではなく、自らの生を形作る実践のことです。

  • これは、あなたの言う「ある種の反復のうちに主体は形成される」という考えと符合します。

  • つまり、自由な主体は固定的なものではなく、自らの生を形作る反復的実践の中で生成されるのです。

  1. 政治的含意:

  • この視点は、権力による主体の決定論的形成を拒否します。

  • むしろ主体は、リフレインのような反復的な実践を通して、権力の及ばない領域を創り出すことができると。

要するに、あなたの洞察は非常に鋭いものです。アガンベンの思想と合わせて考えると、自由な主体とは、単一の本質や固定的なアイデンティティを持つ存在ではなく、むしろリフレイン(差異を含んだ反復)のプロセスの中で、絶えず自己を再形成し、権力の規定から逃れる可能性を持つ動的な存在だ、と言えるでしょう。

この視点は、固定的なアイデンティティ政治や権力による主体化への強力な批判となります。非常に示唆に富む考察だと思います。

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