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☆138:少食・断食で長寿遺伝子が目覚める?<要約・出典>

<主な参考書籍>『老化はこうして制御する 「100年ライフ」のサイエンス』(詳細な内容は書籍をご覧ください。良書です。)

「腹八分目」という言葉は日本で昔から言われている。これは百寿者(センテナリアン)が多く住む世界の長寿地域「ブルーゾーン」としても取り上げられた沖縄の健康長寿の秘訣としても取り上げられている。

<参考TED>Dan Buettner: How to live to be 100+
https://www.ted.com/talks/dan_buettner_how_to_live_to_be_100/

健康長寿に「遺伝子」は関係するのか?
健康な21~105歳の45人と、アルツハイマー型認知症患者24人を対象とした研究では、100~105歳(センテナリアン)のサーチュイン遺伝子(SIRT1)発現量が56~82歳の人の2.2倍高かった。
一方でアルツハイマー患者の発現量は著しく低く、比較するとセンテナリアンの方が8.4倍発現していた。

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Sci Rep. 2018 May 31;8(1):8465.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29855513/

このサーチュイン遺伝子は「長寿遺伝子」と呼ばれている。
「遺伝子」と聞くと遺伝性?と思われるかもしれないが、家系などに関わらず誰でも持っている。→活性化しているかどうかの違い。

長寿遺伝子活性化には「NAD」という補酵素が深く関わっているが、その分泌は一般的に年を追うごとに減少する。逆に言うとNADの減少を食い止める、そして増やす出来れば長寿に繋がるのかもしれない。

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Rejuvenation Res. 2019 Apr;22(2):121-130.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30124109/

じゃあどうすればNADを増やし、長寿遺伝子を活性化出来るのか?
2014年にNAD(米国国立老化研究所)が「ライフスパンを延ばす7つのメソッド」として纏めた表中にも「Caloric restriction」(カロリー制限)・「Fasting strategies」(断食)が取り上げられている。

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Cell. 2014 Jun 19;157(7):1515-26. 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24949965/

カロリー制限といえばアカゲサルの研究が有名であるが、人間を対象とした研究もある。
米国国家プロジェクト「CALERIE試験」では、21歳~50歳の男女218名をカロリー制限群と好きなだけ食べて良い群に分けて2年間追跡。カロリー制限群が結果的に達成したのは1日平均11.9%減だったが、体重や血圧総コレステロール等の低下がみられた。

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J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2015 Sep;70(9):1097-104.
A 2-Year Randomized Controlled Trial of Human Caloric Restriction: Feasibility and Effects on Predictors of Health Span and Longevity
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26187233/

さらに睡眠の質や生活の質の改善も見られた。
JAMA Intern Med. 2016 Jun 1;176(6):743-52.
Effect of Calorie Restriction on Mood, Quality of Life, Sleep, and Sexual Function in Healthy Nonobese Adults: The CALERIE 2 Randomized Clinical Trial
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27136347/

但しこの研究では、カロリー制限群で身体活動度・骨密度低下などが見られたというマイナスの報告もある。この点は上述の「7つのメソッド」でもNegative Effectsとして指摘されている。

J Bone Miner Res. 2016 Jan;31(1):40-51.
Effect of Two-Year Caloric Restriction on Bone Metabolism and Bone Mineral Density in Non-Obese Younger Adults: A Randomized Clinical Trial
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26332798/

そもそも、BMIと寿命を調べた大規模研究でも「少し太め」くらいの人の方が死亡率が低いとする報告がある。特に高齢者は注意が必要かもしれない。※高齢者のフレイルの観点のみならず若年女性も「やせ」傾向も問題視されている。

J Epidemiol. 2011;21(6):417-30.
Body mass index and mortality from all causes and major causes in Japanese: results of a pooled analysis of 7 large-scale cohort studies
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21908941/

そもそもNADは運動で増やすことが出来ることが分かっており、オートファジー関連の書籍でも、筋肉量を減らさないために運動と組み合わせた方が良いとされている。
『 「100年ライフ」のサイエンス』の中でも、まずは試しに1日断食から始めてみることや、カロリー制限や断食の前に、しっかり空腹になってから食事をとるように心掛けることなどがお勧めされている。






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