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サッカーとチェス

これまで新戦力やライバルチームの紹介をしてきたが、オフシーズン個人的に勉強していることがあるので紹介したい。
今、私はチェスを新たに勉強をしている。
昨シーズンいっぱいでプレビューやレビューをやめるつもりでいたが、サッカーを学ぶことは続けて行こうと考えてはいた。
その中で書籍を読み漁ることは昨シーズンの開幕前に行っていたが、新たな試みとしてチェスに挑戦してみた。
なぜチェス?と思われる方もいらっしゃると思うが、伊藤彰前監督が好きなジョゼップ・グアルディオラ監督(マンチェスターシティ)によって有名となった「ポジショナルプレー」という概念は元々チェスの世界で使われていたものであった。
ヴァンフォーレにおいて考えてみても吉田達磨新監督も近い価値観を持っている。
アカデミーに新たに招聘すると噂されている中村順氏や渋谷洋樹前ヘッドコーチが影響を受けたと言われているピム・ファーベーク氏も似たような思考を持っていたとされている。
即ち、今後の甲府を語る上でポジショナルプレーとは何かは重要なキーワードとなる。
だが、ポジショナルプレーに関する説明は多くの方がされているため違った形で紹介してみたいと思う。
そこで登場するのがチェスとなる。
チェスとサッカーの比較や共通点からポジショナルプレーに迫っていきたい。

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1.チェスとは

まずはチェスとはどのような物か説明したい。
将棋や囲碁のように2人で行うボードゲームである。
白と黒に分かれ、16の駒を使い敵のキングを奪うことが目的となる。

チェスの盤面は縦横8マスずつに区切られた64マスからなる正方形をしている。
駒は、キング、クイーン、ビショップ×2、ナイト×2、ルーク×2、ポーン×8の16駒からなる。
駒の形は以下の通り
♔(キング)
♕(クイーン)
♗(ビショップ)
♘(ナイト)
♖(ルーク)
♙(ポーン)
小さくて見にくいかもしれないが、このような駒を使い相手のキングを追い詰めていくゲームとなる。

続いて駒の基本的な動かし方を説明したい。
キング♔の動ける範囲は全方向に1マスずつとなる。
クイーン♕は全方向にいくつでも動くことができる。
ビショップ♗は斜め方向にいくつでも動くことができる。
ナイト♘は上下左右に2マス進み、そこから垂直に1マスの位置に移動ができる。
ナイトだけは他の駒を飛び越えることができるのも特徴となる。

黄色のマスがナイトが動ける範囲

ルーク♖は縦か横にいくつでも動くことができる。
ポーン♙は基本的には前に1マス進むことしかできない。
だが、ポーンは特殊な動きをいくつかできる。
まずは最初の位置から動く際には前に2マス進むことも可能となる。
斜め前に敵の駒がある場合は、その駒を取ることもできる。
相手のポーンが通過したマスに、自分のポーンを移動させて駒を取る事もできる。(以下の図をご覧ください)

また、ポーンが敵陣の最後段に達した場合はクイーン、ルーク、ビショップ、ナイトのいずれかの駒になることができる。

このように駒を動かし、キングが次の手で絶対に逃げられないように追い詰める「チェックメイト」という状態に持っていくことができれば勝利となる。

詳しく説明すると物凄く長くなるため、これくらいにして次に進みたい。

2.共通点

軽くチェスとはどのようなものか説明したが、キングを取ることを目的としているチェスはゴールを奪うことを目的とするサッカーと目的は似通っている。
チェスは1度キングを取ることで終了となるが、サッカーはこの作業を何度も繰り返し結果的に多くの得点を取った方が勝つということが違いとなる。

共に目的を達成するために有利な状況を作ることが最初の狙いとなる。
チェスにはサッカーのように偶然ゴールが生まれてしまったということは考えにくいため、有利な状況を作ることは大事となる。
局面を有利にするために重要となるのが、「駒を得すること」と「駒を良い位置に持っていくこと」である。
「駒を得すること」は「マテリアルアドバンテージ」と呼ばれ、駒の価値を得点に置き換えて状況の優位性を示す。
駒の価は以下の通りとなる。

クイーン9点
ルーク5点
ビショップ、ナイト3点
ポーン1点

この「マテリアルアドバンテージ」を重視するという発想はサッカーに置き換えて考えるとスタジアムで良く見られる「前だ!」「後ろに下げるな!」と叫んでいる方と似たような発想なのではないか。
駒をすぐにたくさん取ろうとする考え方は速くゴール前にボールを送ることに似ているかと思う。
チェスにおいて相手より駒が多いかどうかは重要となり、サッカーにおいてもゴール前に次々にボールを送られることは相手としても嫌なことであるので決して悪いことではない。
だが、目の前の取れる駒を放置したり、ボールを後ろに下げて戦況を整えることも必要な時はあるため、その時の状況を理解することが重要となる。

一方で、「駒を良い位置に持っていくこと」は「ポジショナルアドバンテージ」と呼ばれ、駒の配置が有利か不利か、駒が良い位置を占めているかを示す。
「ポジショナルアドバンテージ」は「ポジショナルプレー」とサッカー界で呼ばれている言葉に置き換えることができる。
「ポジショナルプレー」において重要となるのは得点よりも、まずは選手が良い位置を占めること、陣形上の優位、選手の位置の良し悪しを基準にボールを支配し攻める事と言える。
当然、サッカーは多くの得点を取った方が勝つ競技となるがとにかく前にボールを送り込んでカオスを作り出すサッカーは多くの得点チャンスを作れる可能性がある一方で、リスク管理を考えずにゴールを目指してしまうと失点のリスクも持った戦いとなる。
対して「ポジショナルプレー」という概念で見ていくと最初に重要視する点は選手の配置のため、カオスな状況は生まれにくく自身も正しいポジションを取る時間を作れる反面、相手にも時間を与えることとなる。
そうなると必然的にスコアは動きにくくなるが、試合の行方はコントロールしやすくなる。
だが、サッカーにおいてもチェスにおいてもこの位置にさえいれば良いというものではない。
その位置にどのような役割を持った選手や駒を置けるかが大事となる。
それが、伊藤彰前監督が用いていた可変によってもたらすプラス効果である。
整えられた相手を崩すために1人で状況を打開できる泉澤をサイドで孤立させ、ボール保持やセカンドボールの回収で優位に立つために新井や山本と3バックの真ん中に入った選手を中盤に上げることで中盤に厚みをもたらしていた。

どのような戦い方をするにしてもどのような意図があるのかを知った上でサッカー観戦できると楽しみも広がるかと思う。

続いて、サッカーとチェスにおける共通言語についてみていきたい。

列、レーン

チェスにおいては縦をファイル、横をランクと呼ぶがサッカーにおける列やレーンに置き換えて考えることができる。

サッカーにおいて列という言葉は良く使う方も多くいるかと思う。
2列目の選手の背後への飛び出しといった使い方は良く耳にする。
上に示した図を見てもらうと442の形で選手が並んでいるが上から1列目、2列目、3列目という表現をする。
一方でレーンという言葉は詳しくサッカーを見ている方で無いとあまり耳にしないかと思う。
「ポジショナルプレー」という概念の説明を先程したが、その中で用いられた言葉から広まった表現と言える。
ピッチを縦に5分割したエリアをレーンと呼んでいる。
サイド、センターと3つのエリアに分けて見ることは中継映像でも良く見られるが、その中間のエリアに「ハーフスペース」と呼ぶエリアを左右に作り、5レーンと呼んでいる。

チェスにおいてポーンが縦に重なるダブルポーンと呼ばれる状況になることは良い手では無いと言える。
これはサッカーにも当てはまり、同じレーンに人が重なる状況ではパスを繋ぐ上で適したポジションとは言えない。

後ろのポーンが動けない
パスを貰っても次のプレーに移りにくい
斜めのサポートが入ることで次のプレーの選択肢は増える

ただし、重なることが必ずしも悪いことではない。
チェスにおいては「バッテリー」と呼ばれる同じ列や行、斜めの筋にその方向に動ける駒を2つ以上並べて、一点に攻撃を集中させる戦法もある。
これはサッカーにも言えることで前線の選手に縦パスを送り、ポストプレーからの落としを受けるために縦に選手が並ぶことは決して悪いことではない。

連続攻撃を仕掛けられる
前向きの状況を作るのに適している

即ち、大事なのはその時の状況である。
原理、原則がある中で柔軟に状況を判断し、適したポジションに立つことが必要となる。

ピン
チェスにおいて「ピン」とは敵の駒が動けないように釘付けにした状態のことを指す。

ナイトがピンをされた状態

「ピン」は敵のキングやクイーンといった価値の高い駒を間接的に攻撃している状態となる。
そのため、直接攻撃されている駒は動ごいてしまうと奥にいるより価値の高い駒を失ってしまうため動けなくなってしまう。
チェスには「ピン」と似たような戦術も他にある。
「スキュア」と呼ばれているが、「ピン」との違いは価値の高い駒が直接攻撃されているか間接的に攻撃されているかとなる。

黒はルークを動かす代わりにナイトを失う

価値の高い駒を守るために価値の低い方の駒を捨てなくてはいけなくなってしまう。

サッカーにおいては「ピン止め」という言葉を用いる。
これは立ち位置によって相手選手が動けない状況を作ること。
分かりやすいのがサイドの高い位置で外に張ることで相手のSBが前に出ていけない状況。
昨シーズンの甲府で見られた形から見ていきたい。

左サイドでは泉澤や宮崎とシャドーに入った選手、右サイドではWBの関口が高い位置に張り出すことで相手のSBを「ピン止め」する。
左サイドを例に出すとWBの荒木やボランチの野津田が相手のライン間に侵入することで中盤の選手も「ピン止め」させることで左サイドの低い位置で起点を作ることが可能となっていた。
野津田や荒木が降りてくることやメンデスがドリブルでボールを運ぶことで前進することを狙っていた。

守る上で一番危険なのがDFラインの背後を取られることであるため、サイドの高い位置で外に張られるとSBは出にくくなる。
これは中盤のラインでも言えることで背後を突かれてしまうのを避けることが守る上で重要となるため、それを逆手に取って相手を動けなくさせることが「ピン止め」の狙いとなる。
このようにボールを持っていない状況でも相手を困らせることはできる。
ボールの無いところを見ることもサッカーを見る楽しみも広がるかと思う。

フォーク
これは「ピン」のように共通言語というわけではないが、似たような考え方はサッカーにおいても有効となる。
まず、「フォーク」とは一つの自分の駒で二つ以上の相手の駒を同時に攻撃する戦略。

白はクイーンで黒のキングとルークを攻撃

この状況では当然、キングを逃がすため黒はルークを失うこととなる。

これをサッカーに置き換えて考えてみると伊藤彰前監督が使っていた「ホール」にポジションを取ることの有効性にも繋がってくる。
ライン間という表現もされるが、サッカーにおいてこのポジションでボールを前向きに受けられると様々な選択肢を持つことに繋がる。

シュート、クロス、パス何でもできる

この位置にボールが入り、前を向くとシュート、パス、クロス、ドリブルどのプレーを選択してもゴールに繋がる可能性のあるプレーを行うことができる。
そのため、どこかを犠牲に対応しなくてはいけなくなるがSBが食いつけばサイドの裏が空き、CBが食いつけば中央にギャップが生まれることとなる。

このようにチェスにおいて正しいポジションを取ることを学ぶことはサッカーを見る上でも役に立つかと思う。

3.あとがき

思い立って書いてみたものの正直書いた感想としては失敗かな?という思いが強い。
勉強も足りず知識も曖昧なため、わからないことも多かった。
また、オチも無く何を伝えたかったのかハッキリしていない点も個人的に失敗したかなと思うポイントである。
これを読んでサッカーの見方が広がってくれたらと思うが、上手くいくのか…

だが、チェスを勉強し始めて今まで以上にサッカーを理屈的に考えられるようになったと実感している。
ここに立てばこの選手が動き、ここが空く。
こういう見方ができるようになったことは自分自身の成長かなとは感じている。
また、サッカー観戦において良くあるのがボールばかりを追ってしまうこと。
自分自身に置き換えて考えるとボールだけを追うことは無いが、ボール以外の意識が集中しやすいのがゴール前となっていた。
ゴールを決めなくては勝てない競技だから必然的のように考えていたが、チェスを初めてみて感じたのはキングばかりを追いかけてもキングは取れないこと。
これはサッカーにおいても同じで全体をしっかりと見ることで理解できる範囲は増え、サッカーの楽しみ方は増すと感じた。

今回理屈の上でサッカーを学ぶのに役立ったが、個人的にはサッカーの魅力は理屈を越えたとこにあると思っている。
思いもよらない感動や悔しさといった感情的な部分がスポーツにたくさんの人が嵌まる要素ではないかと思う。
だが、理屈的な見方もできると魅力はより増すのではないか。
今年はその両面をお伝えし、多くの方にサッカーの面白さを伝えられたらと思っています。

基本的にはボードゲームはサッカーと類似点も多いのではないかと思う。
私自身は幼少期の頃少しだけだが、囲碁をやっていた経験も今に繋がっていると感じている。
将棋を嗜む友人もいるが、やはりサッカーの話をすると勉強になることもある。
今回はチェスについて語ったが、サッカーを学ぶためにもボードゲームに挑戦することは良いのではないかと感じた。
また、チェスを勉強し、この記事を書いてみて感じたことはサッカーに限らずだが、正しい位置を取ることは重要なのだなと感じた。
他のスポーツに置き換えて考えて見ると例えば野球では一歩あるいは半歩ポジションを間違えば打ち取っていた打球もヒットとなってしまうこともある。
サッカーでもプレイヤーだけでなく、審判もポジション取りは重要である。
昨シーズン、大きな議論となったアウェイ琉球戦での判定も当てはまるかと思う。
当初、私は正しい判定では無いかと感じていた。
だが、何度か映像を見返すことで判定は違っていたと感じるようになった。
その点は反省しなくてはいけないが、決して誤審ではないと今でも思っている。
誤審ではなく、見えていなかったが正しいと思う。
これもある意味、ポジショナルプレーの概念に当てはまるのかなと感じている。
正しいポジションを取れていれば結果は違っていたかもしれない。
私生活でも同じかもしれない。
見方や見る角度を変えることで他人の違った側面が見えることもあるかと思う。
今までとは違った位置から周りを見渡してみると世界は広がるのかもしれない。
この記事を読んでいただいたことで、起きた現象に対して正しいポジションを取れていたかを議論や検証の対象としていただけたら嬉しく思います。
ミスをしたと思った審判や選手、部下や子供を責めることよりも楽しいサッカーの見方や生き方ができるのでは無いでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
重ねて投げ銭やnoteだけでなくTwitterでのフォローやRT、いいね、スキをいただけたら嬉しく思います。
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