見出し画像

2021シーズンレビュー

伊藤監督就任3年目のシーズン。
前年を上回る順位、勝ち点を得ながらも惜しくも昇格を逃すこととなった。
2021シーズンを振り返ってみたい。

1.シーズン前

2020シーズンを4位で終えて降格クラブが無いシーズン、監督就任3年目と昇格が現実的な目標として迎えた今シーズン。
だが、例年通り多くの主力が退団することとなってしまう。

https://www.football-lab.jp/kofu/transfer/?year=2020

2020シーズンは30試合以上出場した選手が8人いたが、内5人か移籍。
エースとしてチームを牽引してきたドゥドゥやルーキーながらCBとして出場機会を重ねた中塩もJ1クラブへ引き抜かれて迎えるシーズンとなった。
また、太田や今津と山梨県出身の選手の退団も重なり、昇格を目標としながらも厳しい船出となった。

一方で獲得した選手は即戦力となる実績のある選手と大卒の選手を中心の補強となる。
また、昨シーズンチームを支えた泉澤と山田を完全移籍に移行と限られた資金力の中で強化部は最善の手を尽くした。

https://www.football-lab.jp/kofu/transfer/?year=2020

だが、即戦力として期待された選手の中でシーズン通して活躍したのは浦上と野津田のみと補強が成功したとは言い難かった。
特に三平、有田、金井と実績充分の選手たちが活躍出来なかったことはチームとして誤算であっただろう。
三平は怪我に悩まされ、有田はチームのスタイルにフィットできなかった。
金井は開幕直前の怪我で出遅れ、結果的に夏に琉球へと移籍してしまう。
それでも彼らの補強が失敗だったとは言えない。
戦力としては期待されたほどの活躍が出来なかったが、精神的な面ではチームに欠かせなかった。
キャンプから3人がチームを盛り上げたことで若手の選手が活躍しやすい環境作りに貢献した。
また、誤算となったのは外国人選手の合流が遅れたこと。
新型コロナウイルス感染症対策として外国人の入国が制限されていたこともあり、リラとバイヤは4/19まで合流することが出来なかった。
そのため、リラは前半戦コンディションが整わずバイヤはチームへのフィットや日本のサッカーに慣れるまでに時間を要してしまう。
後半戦からリラはコンディションも上げ、最終的に9ゴールを挙げる活躍は見せたがキャンプから合流し、開幕からコンディション良く戦えていれば結果は違っていたかもしれない。

一方で、大卒の選手の活躍がチームを牽引した。
野澤陸は1試合の出場に留まり、活躍の機会は多くなかったが他の4選手は主力として大きくチームに貢献した。
最も出場機会を得たのは関口。
34試合に出場し、出場時間はチーム4位の2928分。
右サイドを無尽蔵のスタミナで支えた。
次いで多かったのは、長谷川元希。
2245分の出場時間を得たが、出場試合数は関口を上回る36試合に出場。
チーム3位の7ゴール、2位の6アシストと攻撃陣を1年間牽引した。
試合数で見ると鳥海も30試合に出場。
途中出場が21試合と出場時間は1066分と関口、長谷川と比べ少ないが攻撃の切り札として欠かせない存在であった。
最後に、須貝はオリンピックによる中断明け前は大学時代に負った負傷の影響で全休となったが、中断明け以降は全試合にメンバー入りして出場しなかったのは25節の相模原戦のみと後半戦は無くてはならない存在であった。
彼ら大卒選手の活躍が今シーズンの甲府を牽引した。

2.チームデータ

 2−1.シーズンデータ

では、ここからはデータからシーズンを振り返っていく。
まず、佐久間社長(当時GM)がシーズン前に掲げた目標を見てみたい。

上が開幕前に掲げていた目標であり、昇格(2位以内)、勝ち点80以上、得点は65、失点は37を目標として挙げていた。
下がシーズンの結果となるが、ほぼ目標は達成できたと言える。
続いて、昨シーズンとの比較で見てみたい。
左が昨シーズン、右が今シーズンとなる。

https://www.football-lab.jp/comparison/team/2020/150/2021/150/

順位は4位から3位へ1つ上げ、勝ち点は昨シーズンから15も上乗せした。
得点は15増やし、失点は3つ減らすことに成功し昨シーズンから数字で見ても上乗せすることができた。
だが、一番達成したかった昇格にはあと一歩届くことが出来なかった。

https://data.j-league.or.jp/SFRT01/?search=search&yearId=2021&yearIdLabel=2021%E5%B9%B4&competitionId=493&competitionIdLabel=%E6%98%8E%E6%B2%BB%E5%AE%89%E7%94%B0%E7%94%9F%E5%91%BD%EF%BC%AA%EF%BC%92%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0&competitionSectionId=0&competitionSectionIdLabel=%E6%9C%80%E6%96%B0%E7%AF%80&homeAwayFlg=3

昇格した京都との差はわずかに勝ち点差4。
引き分けを2試合勝ち試合に変えていれば手が届いたわずかな差。
勝利数を見ても得失点差を見ても京都とはほとんど差がないことがわかる。

差を分けたのはどこなのか。
ホームとアウェイの結果でも見てみたい。
まずはホームから。

https://data.j-league.or.jp/SFRT01/?search=search&yearId=2021&yearIdLabel=2021%E5%B9%B4&competitionId=493&competitionIdLabel=%E6%98%8E%E6%B2%BB%E5%AE%89%E7%94%B0%E7%94%9F%E5%91%BD%EF%BC%AA%EF%BC%92%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0&competitionSectionId=0&competitionSectionIdLabel=%E6%9C%80%E6%96%B0%E7%AF%80&homeAwayFlg=1

京都と同勝ち点、磐田ともわずかに1の差しかなく昇格したチームと変わらない数字を残している。
最終節水戸に勝っていればホームでの勝ち点はリーグトップであったことが惜しまれる。
クラブ記録のホームゲーム16戦無敗という記録を打ち立てながら昇格した2チームに差を付けられなかった。

一方、アウェイでの成績を見てみたい。

https://data.j-league.or.jp/SFRT01/?search=search&yearId=2021&yearIdLabel=2021%E5%B9%B4&competitionId=493&competitionIdLabel=%E6%98%8E%E6%B2%BB%E5%AE%89%E7%94%B0%E7%94%9F%E5%91%BD%EF%BC%AA%EF%BC%92%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0&competitionSectionId=0&competitionSectionIdLabel=%E6%9C%80%E6%96%B0%E7%AF%80&homeAwayFlg=2

ここに昇格を逃してしまった要因が見えてくる。
アウェイでの成績で見てみるとリーグ8位に沈んでいる。
アウェイで勝ち点を落とした理由としては移動の負担の大きさが挙げられるかと思う。
例えば新潟を例に出して見ると新潟が甲府ホームに乗り込んできた際にはバス2台でやって来ていた。
一方の甲府は新潟までバス1台で片道5時間を掛けてアウェイの地に向かった。
新潟はバスだけでやって来たかは定かではないが、甲府よりも1台多く使えるだけで座席を広く使えることもあり移動の負担は減らせていただろう。
金銭的に無理ができないチーム体制ではあるだけに致し方ない部分もあるが、移動の負担を軽減できれば勝ち点は伸ばせていたかもしれない。
特に顕著に現れたのが得点数。
ホームに比べ、アウェイでは15も少なくなっていることにある。
甲府には一振りで試合を決められる選手はおらず、相手を見て可変を行うことで優位性を作り出すサッカーをしていたように全員が知恵を絞り得点を取りに行くチームであっただけに疲労がそのまま結果に現れてしまった。
佐久間社長がシーズン後ストライカー補強を宣言したのにはこのような背景も考えられるのではないか。

 2−2.順位推移

シーズン通しての順位の推移を見ていくと甲府が最後まで昇格を争ったチームの中で最も安定していたことがわかる。
まずは甲府から見ていく。

https://data.j-league.or.jp/SFRT02/?competitionYearId=2021&competitionId=493&currentCompetitionSectionId=4731&lastCompetitionSectionId=4731&teamId=28

波が少なく、安定して上位にはいるが、昇格圏には一度も入ることは出来なかった。
続いて、昇格した磐田と京都、4位の長崎を順に見てもらいたい。

https://data.j-league.or.jp/SFRT02/?competitionYearId=2021&competitionId=493&currentCompetitionSectionId=4731&lastCompetitionSectionId=4731&teamId=13
https://data.j-league.or.jp/SFRT02/?competitionYearId=2021&competitionId=493&currentCompetitionSectionId=4731&lastCompetitionSectionId=4731&teamId=24
https://data.j-league.or.jp/SFRT02/?competitionYearId=2021&competitionId=493&currentCompetitionSectionId=4731&lastCompetitionSectionId=4731&teamId=47

いずれも開幕ダッシュに失敗したが、磐田は6節からの4連勝で建て直し11節以降は12試合負け無し、中断明け以降は19試合負け無しと一気に勝ち点を稼ぎ優勝を決めた。
6節以降は2敗のみ、いずれも山形に敗戦と開幕5試合を除けば山形以外に負けていない圧倒的な力を見せた。
京都は6節から6連勝で3位まで浮上し、その後も9試合負け無しで昇格圏に突入。
長崎に21節で敗れたが、以降は甲府、長崎、磐田と昇格のライバルには負けたものの下位チームからは勝ち点を落とさず逃げ切った。
長崎は13節から松田監督が就任すると15位に低迷していたチームが一気に急浮上する。
その後、順位が伸び悩んだ時期もあったが30節以降に再び昇格争いに加わるが、34節に新潟と引き分け35節に甲府に負けたことで昇格争いからは脱落となった。

連勝は4が最大と一気に勝ち点を稼ぐ時期は作れなかったが、連敗はわずかに1度と負けないチームは作れていた。
痛かったのは3度の4戦勝ちなし。
5節〜8節、16節〜19節、24節〜27節。
1度目は当時低迷していたチームとの対戦で勝ち点を落とし、2度目は上位勢相手に勝ち点を奪えなかった。
3度目は中断明けであり、中断前の4連勝の勢いが失われ当時最下位であった相模原に敗れ、千葉にはアディショナルタイムに同点弾を決められ勝ち点を落としてしまった。

だが、甲府が最後まで昇格争いに加われたのは年間を通してチームが成長を重ね、伊藤監督の目指す形が積み上がってきたことにある。
事実、後半戦の勝ち点は磐田に次いで2位と勝ち点を伸ばすことに成功している。

特に後半戦巻き返しは図るターニングポイントとなったのは28節の京都戦。
4戦勝ち無しの状況でのエース泉澤の離脱と最悪の状況で迎えた京都戦だが、快勝を収めチームが勢いに乗った。
結果的に泉澤の離脱がプラスに働いたこととなる。
泉澤がいなくなったから良かったではなく、チームの危機を一丸となって乗り切ろうとまとまり同じ方向を向いて戦えたことが良かった。
泉澤をチームから浮いていたという表現も見かけたが、間違っていない部分もある。
泉澤の「存在」がチームから浮いていたことは決してないが、泉澤の「能力」がチームから浮いて高かったことは事実である。
その圧倒的存在感を放っていたスーパーな選手の離脱で昇格が厳しくなったかに思われたが、代わって起用された選手の活躍もあり泉澤起用時よりも勝ち点を伸ばすこととなる。
圧倒的な個の能力を持つ泉澤だが、諸刃の剣であったことも事実である。
代わって起用された宮崎や中村、鳥海と比べ守備の強度は低く、コンディションが上がりきっていなかったリラと並べることで前からのプレスが緩くなってはいた。
だが、それをカバーできるだけの結果を残していたことも確かであり、泉澤の活躍無くして今シーズンの結果は無い。
泉澤の離脱によって起用された選手やリラのコンディションが上がったことで前からのプレスの強度が高まり、新井の良さが出やすい環境になったことが終盤の巻き返しの要因ではあるが、新井と泉澤の良さを共に出せる状況を作れていればより多くの勝ち点を手にしていたかもしれない。
誰かが悪いのではなく、噛み合わせやコンディションによって個性が最大限発揮出来なかったように感じるため来シーズンの編成に期待したい。
また、泉澤が来シーズン甲府のユニフォームを着てキレキレのドリブルを披露する姿を再び見たい。

 2−3.得点

ここからは得点数について見てみたい。

https://data.j-league.or.jp/SFRT01/?search=search&yearId=2021&yearIdLabel=2021%E5%B9%B4&competitionId=493&competitionIdLabel=%E6%98%8E%E6%B2%BB%E5%AE%89%E7%94%B0%E7%94%9F%E5%91%BD%EF%BC%AA%EF%BC%92%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0&competitionSectionId=0&competitionSectionIdLabel=%E6%9C%80%E6%96%B0%E7%AF%80&homeAwayFlg=3

甲府は磐田、長崎に次いでリーグ3位の65得点を挙げている。
上記でも触れたが、昨シーズンから15得点増やすことに成功した。
以下は得点ランキングトップ10となるが、甲府の選手は1人も入っていない。

https://www.jleague.jp/stats/goal.html?s=J2

磐田、京都、長崎と他の上位のチームには15得点以上決めている選手がいることもわかる。
2桁得点にまで広げてみると泉澤がランクインするものの磐田、京都、長崎いずれも新たに1人加わってくる。

https://www.jleague.jp/stats/goal.html?s=J2

このことからわかるように甲府は得点力のあるストライカーには依存せず、満遍なく得点を決めていることが伺える。
以下は甲府の得点者の一覧となる。

出場機会を多く得ていた選手は軒並み得点を決めていた。
17人もの選手が得点を決めていたことからもわかるようにチーム全員で戦っていたことがわかる。
昇格したチームに圧倒的なストライカーがいたことから得点を量産する選手が欲しいのもわかるが、得点を期待されて獲得した三平や有田の得点感覚が戻ることへの期待や内藤大和の成長に期待を掛けても良いのではないかと思う。
全員で戦い、どこからでも得点が取れることも大きな魅力である。

では、どのような形からの得点が多かったのか。
昨シーズンとの比較で見てみたい。

https://www.football-lab.jp/comparison/team/2020/150/2021/150/

左が2020シーズン、右が2021シーズンとなるが割合としては大きな変化は無い。

最大の得点源はセットプレーからとなっている。
割合で見てみると分かりやすい。

得点の約3割がセットプレーからとなっており、ショートパスとクロスが後に続いている。
この3つで7割を占めている。
以下で具体的に見てみたい。
 
 ①セットプレー
FK、CK、スローインからの得点となるが最も多かったのはCKからの得点となった。
得点源となったのはメンデス。
今シーズン6ゴールを挙げたが、CKからは4得点と190cmの圧倒的な高さを活かした。
キッカーを主に務めたのは野津田と長谷川。
CKから野津田が3アシスト長谷川が4アシストと左右に精度の高いキッカーを揃えていたことも大きかった。

また、デザインされた形からの得点も見られた。

荒木にはロングスローもあり、メンデスの高さを活かすことも見せた。
得点は無かったものの、先程のCKのようにデザインされた形からの得点は見られた。

単純にメンデスの高さを活かすことも武器となるが、創意工夫を凝らし様々な手を打てるだけの柔軟性もセットプレーからの得点の多さに繋がった。

 ②ショートパス
Football LABさん(https://www.football-lab.jp/)のデータを参考にさせていただいているが、ショートパスの定義を
「セットプレー、クロス、スルーパスを除いた30m未満のパスからの得点」
としている。
即ち、横パスやワンツーのような形からの得点を指すことが多い。
相手守備を崩しての得点が多くなるが、決まったパターンでの崩しが多いチームでは無かっただけにいくつか良い得点をピックアップして見てみたいと思う。
まずは13節東京ヴェルディ戦の鳥海の得点。

鳥海が泉澤とのパス交換から背後へ抜け出し得点を挙げた。
前半戦はシャドーやボランチでの絡みからの得点は見られたが、トップのリラとの絡みはあまり見られなかった。
この試合でもスタメンで起用されたのはリラであったが、後半から三平を投入して前線に動きが出た。

続いては15節水戸戦の関口の得点。

ビルドアップから水戸のプレスを回避して前進すると長谷川からのパスを受けた関口がカットインからシュートを放った場面。
相手を引き付けてプレスを裏返す狙いが嵌まった場面となる。

次は20節の群馬戦から荒木の得点。

この場面は泉澤がサイドに張りボールを受けることで相手DFの意識がボールに向いており、野津田が近くにポジションを取ることで相手のSBをロックする形となっている。
泉澤を警戒しているため、相手としては数的優位を作り対応しているが、甲府側から見ると泉澤と野津田で相手DFを3人引き付け、空けたスペースに荒木が飛び込む形を作った。

最後は最終節での山田の得点。

前半戦はリラが周りと連携して崩す場面は少なかったが、後半戦に入りリラが前線で収められる確率も上がりリラ周辺に人を配置できるようになったことでこのようにリラに当てて相手のブロックの中に潜り込んでいける回数が増えた。
崩しの種類も豊富になり、その中で選手の個性も活かした形での得点を多く作れていた。

 ③クロス
クロスからの得点が13あったが、前半戦と後半戦では狙っていた形に違いが見られた。
左サイドからの得点が多かったことは変わらなかったが、前半戦は泉澤が右足に持ち変えてファーサイドで合わせるあるいは折り返す形を意図的に作っていた。

一方で後半戦は泉澤の離脱やリラのコンディションが上がってきたことも影響し、ニアサイドに速いボールを入れワンタッチでコースを変える形が増えた。

このように左サイドからのクロスが流れの中からの得点において多く見られたが、右サイドからは精度を欠き生まれたゴールの数は少なかった。
主に右WBには関口が起用され、タッチライン際でのアップダウンの激しさでサイドを活性化させていたがフリーで上げたクロスも味方に合わない場面は度々見られた。
右サイドからも形が作れていれば得点数はもっと多くなっていただろう。

 2−4.失点

続いて失点数を見ていきたい。

https://data.j-league.or.jp/SFRT01/?search=search&yearId=2021&yearIdLabel=2021%E5%B9%B4&competitionId=493&competitionIdLabel=%E6%98%8E%E6%B2%BB%E5%AE%89%E7%94%B0%E7%94%9F%E5%91%BD%EF%BC%AA%EF%BC%92%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0&competitionSectionId=0&competitionSectionIdLabel=%E6%9C%80%E6%96%B0%E7%AF%80&homeAwayFlg=3

京都、千葉、岡山に次いでリーグ4位の38失点と1試合平均1失点以下の失点に抑えた。
上記でも触れたが、失点数は昨シーズンから3つ減らした。
昨シーズンとの比較で失点パターンを見てみたい。

https://www.football-lab.jp/comparison/team/2020/150/2021/150/

ご覧のように圧倒的にセットプレーからの失点が増えていることがわかる。
割合にして見てみると失点の半数がセットプレーからとなっている。

ここではセットプレーだけを見てみたい。
セットプレーからの失点を半数でも減らせていれば結果は異なっていたかもしれない。
セットプレーからの失点で最も多かったのはCKからとなった。
こぼれ球からの失点を含め、CKからが最多であった。
甲府はCKの守備はゾーンディフェンスで守っていたが、失点のパターンとして見られたのがニアサイドで合わされる形とゾーンの外からミドルシュートを決められるパターン。
以下はニアサイドで触られ、ファーサイドで詰められた形。

続いてはニアサイドでそらしたボールには対応できたもののクリアが短く、セカンドボールを拾われボレーを叩き込まれた場面。

磐田戦では前半戦にも大津に似たような形からの失点を喫しており、この動画の次の試合相模原戦ではFKのこぼれ球からミドルシュートを決められておりセカンドボールは狙われていた。

続いてはニアサイドで合わされて失点を喫した場面。

このようにニアサイドで先に触られて失点に繋がってしまうことが多くなっていた。
だが、終盤になりCKからの失点は減ったが、リラがニアサイドで弾く場面が多くなったことが大きかった。
ストーンと呼ばれるニアサイドで壁となる選手が跳ね返せるかは大きく、リラのコンディションが高まった後半戦は機能できていた。

失点数を時間帯別の見ていくと多く見られたのが、終盤の失点。

https://data.j-league.or.jp/SFTD06/search?selectFlag=0&competitionFrameId=2&startYear=2021&endYear=2021&teamId=28&point=0#

ご覧のように最も多い時間帯は残り15分の時間帯となっている。
総失点数の1/3がこの時間の失点となっており、終盤の失点で勝ち点を落としてしまった試合は7試合あった。
また、後半のアディショナルタイムに喫した失点は4つ。
内、セットプレーからの失点は12節の山形戦、26節の千葉戦。
共にあと一歩のところで勝ち点3を手に入れられた試合であった。
結果的にここで落とした勝ち点4がそのまま昇格した京都との差になって現れた。
以下は京都の時間帯別失点数となる。

https://data.j-league.or.jp/SFTD06/search?selectFlag=0&competitionFrameId=2&startYear=2021&endYear=2021&teamId=24&point=0

ご覧のように京都は後半アディショナルタイムの失点は一つも無い。
選手交代枠が増えたことも一因となるが、試合の締め方は特に前半戦は課題となっていた。
後半戦は経験値が増し、試合の締め方も安定してきたが前半戦で失った差を埋めることが出来なかった。

3.個人データ

続いて個人成績を見ていきたい。
まずは出場試合数から。

https://www.football-lab.jp/kofu/ranking/

荒木が全試合出場、34節金沢戦を除いた41試合でスタメン出場とシーズン通して出場を重ねた。
次いで野津田が39節松本戦以外41試合出場とチームを支えた。
3位にはキャプテンの新井が入った。
次にチーム全体の出場数を見てみたい。

https://www.football-lab.jp/kofu/?year=2021

シーズン途中に移籍した金井と中山も含めて28人もの選手が出場機会を掴んだ。
特別指定選手や二種登録選手を除くと小泉と小林以外の選手が試合に出場し、チーム全員で戦っていたことがわかる。

次に出場時間を見てみたい。

https://www.football-lab.jp/kofu/ranking/

出場試合数から見てもわかるようにトップは荒木となる。
フル出場すると3780分出場することとなるが、荒木がピッチに立っていなかった時間はわずかに140分。
ほぼシーズン通してピッチに立ち続けていたことがわかる。
磐田と京都は3000分以上出場した選手が7人ずつおり、メンバーを固定して戦っていた点は昇格したチームとの違いであった。

続いて、得点数は先程見ていただいたのでアシスト数を見てみたい。

https://www.football-lab.jp/kofu/ranking/

ここでもトップは荒木となっている。
9アシストはリーグ4位の好成績となる。
セットプレーのキッカーを務めることもあったが、主に野津田と長谷川が務めており流れの中から得点を演出することが多かった。
次いで、野津田と長谷川が続いておりリラも3アシストとゴール以外で味方を活かすこともできていたことがわかる。

次はラストパスを見てみたい。

https://www.football-lab.jp/kofu/ranking/

ここでトップに立ったのは野津田となる。
前線で起用された選手が上位に多く名を連ねている中でリーグ8位となる61のラストパスを出している。
ボランチで起用された時間が長かった選手の中では磐田の遠藤保仁に次ぐ数字となっており、ゴールに向かうプレーを演出することに関してはリーグトップレベルの選手であった。
2位にはまたも荒木が入っている。
WB、SBで起用された選手の中では山形の半田、長崎の毎熊に次いで多くのラストパスを出しており左サイドの選手としてはリーグトップの数字となった。

4.表彰

MVP

https://soccer.yahoo.co.jp/jleague/category/j2/teams/150/players/1611259

荒木翔
今シーズンのMVPには荒木を選んだ。
全試合に出場し、チーム最多の9アシスト。
数字の上でもチームトップの成績をいくつも出しているが、戦術的な面でも伊藤監督の可変システムは荒木がいなければ機能しなかっただろう。
副キャプテンとしてもチームを支え、キャプテンマークを巻く試合もあった。
名実共にチームの顔となった荒木を年間MVPとした。

年間を通した活躍で見たら荒木を選んだが前半戦は泉澤、後半戦は新井の活躍が光った。

MIP

https://soccer.yahoo.co.jp/jleague/category/j2/teams/150/players/1606084

山田陸
昨シーズンから最も成長した選手として山田を選出した。
伊藤監督の教え子として昨シーズン加入したが、当初はボランチとしての序列は最も低かった。
過密日程もあり、出場機会を伸ばしながら成長を重ねた結果が今シーズンの飛躍に繋がった。
今シーズンはボランチの一番手と言っても良い存在感を示し、攻守ともに中心となりチームを牽引した。
もっとも引き抜きにあう可能性が高い選手かもしれない。

最優秀ベテラン

https://soccer.yahoo.co.jp/jleague/category/j2/teams/150/players/700958

河田晃兵
1980年代生まれの選手から選出した。
前半戦は岡西にポジションを譲り、ポジションを奪い返した後もコンディションが上がりきらない試合も見られた。
だが、終盤になり昇格に向けて負けられない試合が続く中で守護神と呼べる活躍を見せ、終盤の巻き返しに大きく貢献した。
終盤のコンディションの良さを開幕から続けられていれば昇格できていたのではないかと思えるだけの復活を遂げた。

最優秀若手

https://soccer.yahoo.co.jp/jleague/category/j2/teams/150/players/1606084

山田陸
大卒1年目以下の選手で選出した。
関口、長谷川の法政大学コンビの活躍は大きく、後半戦に限れば宮崎や須貝の活躍も目立ったがここでも山田を選びたい。
中盤の守備的な役割をこなせる選手は他におらず、負担も大きかったと思うがシーズン通して身体を張り続け甲府のために闘い続けてくれた。

ベストルーキー

https://soccer.yahoo.co.jp/jleague/category/j2/teams/150/players/1630134

長谷川元希
シーズン通しての活躍で見れば関口との一騎打ちとなるが、7ゴール6アシストと結果を残した長谷川を選出した。
11・12月の月間MVPにも選出され、終盤勝ち点を稼いだ中で大きな存在感を発揮した。
序盤戦では運動量の面で伊藤監督から指摘も受けていたが、終盤戦では攻守共にハードワークしボールの無いところでの貢献度も高まった。
また、オシャレなプレーも多く見るものを魅了するエレガントさも評価した。

ベストゲーム

第35節V・ファーレン長崎戦

昇格レース生き残りを賭けた長崎との一戦。
昨シーズン、今シーズンと一度も無かった逆転勝ちを大一番で達成した。
会場の雰囲気も良く、クラブ期待の逸材内藤大和のデビューと諦めなければ何かを起こせる期待感を抱かせる一戦であった。
来シーズンもあの雰囲気の中を毎試合作り上げたい。

ベストゴール

第19節レノファ山口戦 オウンゴール

このゴールはオウンゴールであったが、DFが触っていなくても後方に走り込んでいる選手がおり決めていた可能性は高いだろう。
決める上で全ゴール見返してみたが良いゴールがたくさんあり、悩んだ。
選出する中で重視したポイントはチームで決めた得点かどうか。
多くの人は山形戦の鳥海の超ロングシュートや北九州戦の長谷川のオシャレなターンからのゴールを挙げるかと思う。
また、京都戦や琉球戦の宮崎のミドルシュートも人気であるかと思う。
ただ、いずれも決めた選手が凄いものであり個人的な趣向としてはチームで崩して決めた得点が好みである。
悩んだのはホーム松本戦のリラ、アウェイ群馬戦のリラ、アウェイ金沢戦の須貝のゴール。
だが、この得点は引いた相手をビルドアップから崩しての得点とチーム全体の狙いも嵌り、多くの選手が絡んだ得点であり好きな得点であった。

流行語大賞

https://soccer.yahoo.co.jp/jleague/category/j2/teams/150/players/1624351

宮崎純真 「ヴァンフォーレ甲府はまだ死んでない」 
宮崎が28節京都戦のヒーローインタビューで発言した「ヴァンフォーレ甲府はまだ死んでない」を選出した。
エース泉澤離脱後初戦で代わって起用された宮崎の活躍もあり、昇格圏京都に快勝した試合後の発言。
この言葉に力を貰った人は多かったのではないか。
事実宮崎の活躍もあり、あと一歩届かなかったが急激な追い上げを見せることもできた。

5.あとがき

長くなりましたが、今シーズンの振り返りをしてみました。
良いことも良くないこともたくさんの出来事があったシーズンかと思う。
2017年に吉田達磨監督を迎え、新たな道を歩み始め5シーズンを掛けて軌道に乗りはじめてきた。
もう1年伊藤監督と共に戦えれば昇格も現実的な目標ではないかと思う中での退任は残念ではある。
だが、伊藤監督にとっては新たなチャレンジであり応援したいと思う。
ヴァンフォーレにとっては新たなフェーズに入って6年目のシーズンとなる。
U18しか映像を見られていないが、アカデミーでも同じスタイルでボール保持にこだわる方向で戦っていた。
チーム全体として同じ方向を向いており、以前までのような目先の結果だけに囚われた状況では無くなっている。
今シーズンの結果を踏まえれば、来シーズンは昇格以外は失敗と言われても仕方がないかもしれない。
それでもより先の未来を見据えて長い目で見ていくことも必要である。
来シーズンは今シーズンのような結果は得られないかもしれない。
だが、変わらないことは1つある。
ヴァンフォーレはヴァンフォーレであり続けることは変わらない。
どんな未来が待っているかはわからないが、来シーズンも共に戦いましょう!

1年間お付き合いいただき、ありがとうございました。
あっという間の1年でした。
オフシーズンも新戦力の紹介や書いてみたいことが見つかれば継続的に書いていきたいと思います。
今後もよろしくお願いしました!
お読みいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?