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J2第6節 V・ファーレン長崎戦 レビュー

前節、町田に対策され為す術なく敗れてから一週間。
今節迎える相手は昨シーズン3位の長崎。
開幕からわずか1勝と苦しんでいるが、タレント揃いの強敵。
共に勝負の一戦となる。

1.スタメン

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甲府
前節から4人の変更。
GKには河田が今シーズン初先発。
山本が第2節大宮戦以来の出場。
GK以外は大宮戦と同じメンバーとなった。
2試合ぶりに先発の野澤はJ2通算100試合目の出場となる。

長崎
前節から3人の変更。
第2節新潟戦以来の3バックを採用してきた。
元甲府の新里は2試合ぶりに先発復帰。
帝京第三高校出身の亀川は3試合ぶりの出場となる。
ベンチのメンバーを見ても豪華な顔ぶれが並んでいる。

2.繰り返し

キックオフを取った長崎が立ち上がりいきなりシュートを放つ。

左WBの亀川からのクロスに右WBの鍬先のヘディングシュート。
システム変更をしたことのメリットがいきなり出た。

甲府はボール保持の際に、山本がアンカーに上がる形へ可変する。

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一方の長崎は4バック時には秋野が最終ラインに降り、ビルドアップしていたが立ち位置は崩さずボールを保持する。
立ち上がりは甲府が前からプレスに行くことで、同数でハマる形となり長崎は鍬先へ浮き球のパスでプレス回避を試みるも荒木の出足の良さもあり、奪いどころと定めることができた。

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徐々に甲府がブロックを作り、構える形へと移行する中で、長崎は秋野とカイオが縦関係となり数的優位でビルドアップを行なっていく。

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秋野はDFラインまでは降りないものの、有田の脇や背後にポジションを取り数的優位を保つ。
また、中盤でも数的優位となっており、ボールの奪いどころが定まらなくなっていく。

また、サイドでWBを引き出すことでWB裏のスペースを作り、そこを突いていく。

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19分に長崎が右サイドを崩しチャンスを作る。

甲府としてはビルドアップで前進を図りたいところだが、長崎が構える守備ブロックの中にパスを入れていくことに終始しボールを前方へと進められない。

試合後の吉田孝行監督のコメントより。

『プレス、プレスということで今までやっていた部分はありました。ベースはブロックからのプレスというイメージだったんですが、今日はいつもよりは少し、穴を開けないという狙いはありました。』

試合後の新里亮選手のコメントより。

『相手がビルドアップのときにポジションチェンジをしながらやってくるというのはスカウティングでも話していて、ある程度、ブロックを作った中で全体でプレッシャーを掛けようと話していました。』

長崎はここまで、ハイプレスに行きたいチームであった。
選手の組み合わせにより、ハマらない試合もあったが基本は自らアクションを取っていく狙いを持っていた。
今節は今までよりも構える時間を多くし、個人の自由度を減らした。
それにより、カイオが持ち場を離れることが減り中央に防波堤として君臨したことで中央に鍵をかけることとなった。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『アグレッシブに試合に入ろうとしていたが前半の入りはあまりよくなかった。積極的にボールを運ぶ作業が足りなかった。』

堅めてくる長崎守備陣に対し、ボールを運ぶことで相手を引き出す作業をしたかったが、構えているところへボールをつけていくことに終始してしまう。

前節同様、上手くいかない試合展開の中、今節も先制を許すこととなってしまう。

FKの流れからペナルティエリア内を崩され、最後はフレイレに決められ長崎が先制する。
失点のきっかけは不用意なFKを与えたところから。
防げた失点であり、やってはいけないミス。
アラート感を高めて望んだ試合で隙を与えてしまった。
そして、その隙を逃さない質の高さが長崎には備わっていた。

今節も前節同様に前線の動き出しが少なく、効果的な攻撃を見せられない。
荒木や中村が背後を意識した動きを見せるが、前線の3人が足元で受ける動きが多く停滞感が漂う。

40分にやっと甲府にもチャンス。

長崎ディフェンスが出てこないところを野澤がボールを運び、関口から中村へと繋ぎ、ファーサイドへのクロス。
泉澤が合わせるも枠を外れてしまう。
決定的な場面を作るも決めきれなかった。
この場面で野澤が見せた運ぶ作業が後半にも繋がっていく。

試合後のフレイレ選手のコメントより。

『前半はすごく良かった。インテンシティーが高くて、自分たちが支配できたと思います。』

前節同様、相手に研究され対策を取られた中で繰り返しとなるような展開となってしまった。

3.決定力不足

後半開始から甲府が2人交代する。
小柳、有田に代えてメンデス、長谷川を投入。
これによりシステムも変更する。

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後半も最初のチャンスは長崎。
カイオのシュートを河田が右手一本で止めた。
前節までコンディションが上がっていないように見えたカイオだが、今節は完全復活とも言える出来を見せている。

メンデス、長谷川を投入したことで、甲府にリズムが出てくる。
前半は上記の伊藤監督のコメントにもあったようにCBが運ぶ作業が欠けていた。
小柳に代えてメンデスを起用したことで、新井も利き足側のサイドということもあるのか運ぶ作業を行うようになり、メンデスも不器用ながらにこなしていた。
これにより、長崎を押し込んでいけると共に引き出すことにも成功する。

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また、ビルドアップで長崎を押し込んでいけることで前線の選手が後方に下がってボールを受けることが減っていく。
特に、長谷川の存在が効いており「ホール」でターンができることで中央からの攻めが増した。
三平はライン間でポジションを取る上手さはあるが、ターンして前を向くことはあまり得意とはしていないため泉澤とシャドーでコンビを組むと「ホール」を上手く活用できないことが多い。
相手を押し込み、中央からの攻め手が増したことで長崎としては泉澤だけを警戒すれば良い状況ではなくなった。
また、CBが運ぶことで相手のシャドーを引き出し、泉澤に左サイドで一対一の状況を与えることが増え、左サイドから逆サイドへのクロスからチャンスを作っていく。
59分にその形から甲府が同点に追いつく。

三平にとっては移籍後初ゴール。
欲しかったFWの得点、流れの中からの得点、新加入選手の得点が一度にやってきた。
泉澤が復帰した大宮戦でも得点にはならなかったが見られた形。
そこから何度も見せている形だが、やっと得点に繋がった。
再現性のある形であり、今後もこの形からの得点も増えていくだろう。
また、山本の凄みが出た得点でもある。
相手を見て、空いている泉澤を見つけ正確に配球。
普通にやっているが、認知、判断、キックの精度が伴っているからこそできるプレーである。

62分には甲府に決定機。

左サイドで泉澤、野津田と繋ぎ、中央の三平を経由し長谷川が裏へ飛び出し、GKと一対一の場面を作るも徳重に防がれる。
逆サイドには関口も詰めており、決め切りたかった決定機。
この場面で泉澤、野津田で繋いでいる時の長谷川の立ち位置が重要である。
動き過ぎないことで一番危険な場所でボールを受けることができた。
ここ2試合の前線の選手は動き過ぎてしまい、必要なポジションにいない場面が多くなっている。

64分にはまたも甲府に決定機。

後半からはこの場面のように、泉澤と鍬先の一対一での場面が増え、圧倒していた。
その中で、この場面も「ホール」を活用できたところから生まれた決定機である。
相手を押し込んだ中で、荒木が飛び込んでくることで相手は捕まえきれずエリア内からシュートに持ち込むことができた。
泉澤の仕掛けが攻撃における最大の武器であることは間違いないが、「ホール」を使えている時が最も相手に脅威を与えられている。
泉澤が単独で仕掛ける場面しか作れていない場合は、チームとして上手く行けていない時間と言える。
この荒木のシュートは決まらず、跳ね返りに関口が反応し決まったかに思われたシュートは徳重の脅威的な反応で防がれてしまう。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『後半ホールで相手のライン間に入って前向きを作れている選手が何人かいた。1-1になったときに畳み掛けるところで取りたかった。』

「ホール」で前向き
次節以降のキーワードとして観戦して見ると面白いかと思う。

66分に流れを変えたい長崎が2人交代。
大竹、澤田に代えて名倉、ルアンを投入する。

飲水タイム明けに甲府は野澤に代えて山田を投入。

後半に入り、切り替えの速さも高まり敵陣でボールを持ち押し込んでいく甲府。
だが、飲水タイムで勢いが削がれてしまう。

試合後の泉澤選手のコメントより。

『後半追いついたあと、中へ中へと入っていき過ぎたところがある。それが僕らの悪いところでシンプルにやれたら良かったと思います。』

「シンプルさ」
これも今後のキーワードにもなるかと思う。
シンプルに背後を突く、手数を掛けずにクロスを入れていく。
全てがシンプルであっては単調となってしまうが、時には単純に前線に入れていくことも必要となる。
現状は「綺麗さ」に囚われてしまっており、相手に恐さを与えることができていないように思う。

77分に長崎はエジガルに代えて富樫を投入する。
直後に甲府も荒木に代えて宮崎を投入。
関口が左に移り、宮崎は右サイドに入った。

決めきれないことで長崎が息を吹き返し始めると84分に勝ち越しを許してしまう。

CKから新里に決められてしまう。
古巣相手に移籍後初得点となった。
甲府はゾーンでセットプレーに対応するが、質の高いボールが入ってくるとこのように失点に繋がってしまう。
昨シーズン、マンツーマンで失点が続いていたことからゾーンに変えているためマンツーマンに戻せば解決するものではない。
今シーズンは栃木戦に続いて2失点目だが、どちらもキックの質が高かった。
ゾーンにおける立ち位置の修正等は必要となってくるとは思うが、今節と栃木戦の失点は相手を褒めるべきかと思う。

徐々に審判の判定に一喜一憂する展開となってしまう。
昨シーズンも度々見られたが、審判と戦って結果が出た試合は無かった。
仮にPKを貰えていても、決まる保証はない。
また、終盤にカイオを倒した場面でも取られていた可能性も考えると判定が試合の結果を直接左右したものではないと思う。

アディショナルタイムに入り、長崎は亀川に代わって磯村を投入する。
そのまま試合は終わり、長崎が勝ちきった。

攻勢を強め、あと一歩までゴールには迫った。
チャンスも甲府の方が多かった。
長崎に許した決定機は多くは無かった。
だが、より多くの得点を取ったのは長崎。
決定力はお金でしか買えないのか。
甲府としてできることは再現性のある形を増やしていくこと。
現状の泉澤からしかチャンスを作れない状況の改善が必要と感じる。
だが、長谷川を中心に「ホール」で前向きを作りチャンスも増え出してきていた。
また、これまではビルドアップに苦労し、そこに重点を置いていた。
だが、今節は後半から新井、メンデスがボールを運ぶ姿勢を見せ、長崎を押し込む時間を作れていた。
栃木戦以降、小柳が苦しんでいるように見えるがパフォーマンスを取り戻すことを期待したい。
今シーズン新たに加わったDFラインの選手たちもビルドアップに特徴のある選手である。
彼らの起用も含め、ビルドアップの部分に目処は立ってきただけに、決めきるところにフォーカスするフェーズに突入している。

4.MOM

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徳重健太
チャンスは甲府の方が多かった。
シュート数も甲府の方が多かった。
だが、勝ったのは長崎。
ゴール前に立ちはだかった徳重の存在が大きかった。
長谷川との一対一、関口のシュートと決まっていたはずの場面を防いだことが勝ち越しに繋がった。

5.あとがき

連敗は気持ち的に厳しい。
だが、シーズン通してみると苦しい時期はやってくるもの。
それが、良いシーズンの入りをした直後にやってきた。
勝ち点を積めていたことで、露呈しなかった課題が2試合に現れてしまった。
目標は昇格に変わらないわけで、次節からまた勝ち点を積み上げていくしかない。
試合内容としては最低でも勝ち点1は持って帰ってこなくてはいけなかった。
ポジティブに考えれば、チャンスを多く作れており、あとは決めきるだけである。
その決めるところが伊藤監督体制での課題は3年目にして未だ解消できていないため、ポジティブに考えて良いのか疑問は残る。
ポジティブに語るとするなら長谷川の存在とCB陣がボールを運ぶ作業ができたこと。
昨シーズンから伊藤ヴァンフォーレはきっかけ一つで飛躍できると思い続けているが、そのきっかけがやって来ない。
その起爆剤となる存在として教え子長谷川の活躍を期待したい。

長崎は前節まで苦しんでいた姿とは一変していた。
3/31にサポーターに向け、公開練習を行ったことが一つのきっかけとなったのかもしれない。
やはり選手の質は高かった。
試合後、秋野が倒れ込み喜んでいた姿は昨シーズンの悔しさ含め、この試合に懸けていたことが伝わってきた。
苦しみから解放されたのであれば、ここから巻き返してくるだろう。

次は勝つ!!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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