J2第25節 SC相模原戦 レビュー
中断明け2戦目の相手は最下位相模原。
最下位に位置するチームだが、補強も含め簡単に勝てる相手ではない。
油断せず自分たちのやるべきことを出しきり勝ち点3を掴み取りたい。
1.スタメン
甲府
前節と同じスタメンとなった。
バイヤに代えて宮崎が10節琉球戦以来のベンチ入りとなった。
相模原
前節から夛田に代えて石田をスタメンに起用した。
ベンチには東京Vから期限付き移籍で加入した松橋が初めてメンバー入りした。
2.待望の時
雨が降る中で始まった一戦。
共にボールを保持する姿勢を見せる立ち上がりとなるが、甲府のプレスバックが早く、甲府がボールを握る時間が多くなる。
今節は荒木がインサイドにポジションを取ることが多い形で可変を行いながらボールを保持していく。
野津田と鳥海はサイドに開き、ボールを受けることもある。
相模原は541で撤退し、ブロックの外で回させることを狙うが強度が低くブロックの中へも侵入を許してしまう。
一方の相模原がボール保持する際はボランチの選手がDFラインに下がる形でビルドアップを行なっていく。
主に成岡がボールを引き出しに下がり、川上がバランスを取る。
幅はWBが取り、右サイドでは藤原が攻撃参加を伺い厚みをもたらしていく。
立ち上がりこそ甲府のプレスやプレスバックの速さにボールを失っていた相模原だが、徐々にボールを失わず前進を図れるようになっていく。
すると13分にセットプレーから相模原が先制に成功する。
きっかけは甲府のプレスに対し、DFラインの背後へロングボールを入れたところから。
兒玉が裏に抜け出したところをメンデスと浦上で数的優位で対応していたのにも関わらず、ファールを犯しFKを与えてしまった。
そのFKのこぼれ球を川上がダイレクトで合わせると、荒木に当たってコースが変わったボールはゴールネットを揺らす。
前節の2失点目と似たような形での失点となってしまった。
試合後の川上竜選手のコメントより。
『相手のクリアしたボールのスピードがあったので、しっかり当てることと、枠に飛ばすことを意識しました。相手に当たっても良いコースに行かもしれないので、コースは狙わず、とにかくふかさないようにしようと。』
試合後の伊藤彰監督のコメントより。
『セカンドボールに対して雨の中、風がある中で正面からDFが出ていけなかった、ディフレクションになって入ってしまった。セカンドボールのこぼれるところ、お互いにセットプレーの狙いがあるがセカンドボールの出ていき方、はっきりクリアするところを見つめ直して、やり直さないといけない。』
試合後の河田晃兵選手のコメントより。
『一発でやられてないので……今日のところはアンラッキーなところもあったがそこをつぶすためにシュートブロックやもう少し大きくクリアすることを日頃のトレーニングから意識していかないといけない。セットプレーを完璧に守ろうとしても相手も頑張る。そこばかりにフォーカスしても仕方がないところはあると思う。』
クリアの中途半端さ、シュートブロックの角度と前節と同じ反省点が出てしまった。
一瞬の緩みは無くさなくてはいけないが、河田のコメントにある通り一発ではやられていない。
守り方を変える必要はないのではないか。
先制を許した甲府は前節同様に守備がまとまらなくなっていく。
ボールを取りに行くのか、構えてスペースを消すのかが曖昧となり相模原にボール保持を許す展開となる。
一方の相模原は守備の強度が高まり、甲府のビルドアップを妨げていきカウンターから追加点を狙っていく。
だが、甲府がワンチャンスをものにして同点に追いつく。
相模原のプレスを回避し、空いたスペースから的確に前進をし、関口へと繋ぐ。
関口からのシンプルなクロスであったが、リラのマークに付いていた藤原が被りクリアできず。
抜けてきたボールを落ち着いてコントロールし、ゴールネットを揺らした。
リラにとっては12節山形戦以来、加入後2点目となる待望の得点となった。
飲水タイムを経てまたもリラにビッグチャンス。
追いついたことで甲府のボール保持が安定しだし、甲府が押し込んでいく展開へと変わる。
押し込んではいくが引いて構える相模原を崩せない。
引いている相手にはパスを回すだけでは崩すことは難しく、ドリブルで相手を剥がすことも必要となってくるが頼みの泉澤が封じられてしまう。
対面の石田の粘り強い守りと藤原のカバーリングの速さを前に左サイドで優位性を作れない。
試合後の高木琢也監督のコメントより。
『もちろん、ウイングバックに求めるのは、攻守においてありますが、一番の理由はトレーニングで彼が非常に調子がよかったことです。他チームにいたときはかなりアグレッシブにサイドを駆け上がるシーンが脳裏には焼き付いていたのですが、私が来た時にはそういうプレーが少なくなっていました。ただ、今はかなり良い状態をキープしてくれていて、チャンスが来たということです。』
試合後の泉澤仁選手のコメントより。
『パスは大事だけど、運ぶドリブルを一人ひとりできてくると自然と崩せたと思います。パスを第一優先よりもドリブルをして運ぶことが大事だと思う。』
泉澤のコメントにある通り、パスを繋ぐことに意識が向き過ぎており相手を剥がすことができずブロックの前でボールを回すだけとなってしまった。
ビルドアップはパスを回すことだけでなく、相手を剥がし前進していくことも必要となる。
徐々に雨が強まっていく中、相模原がチャンスを作る。
澤上のポストプレーを起点にサイドを駆け上がった兒玉へ。
カットインからシュートを放つが河田が防ぐ。
ボールは持つが、攻めきれないことで相模原にカウンターを許してしまう。
セットプレーから先手を許すこととなったが、待ち焦がれたリラの得点で追いついた。
ピッチ状態が悪くなっていく中で、共にボールを繋いでいく姿勢は崩さず攻め手を探ったが同点で前半を終えた。
3.火力不足
後半開始から甲府は鳥海に代えて長谷川を投入する。
試合後の川上竜選手のコメントより。
『「追いつかれはしたけど、負けているわけじゃないから」と(藤本)淳吾さんが言っていて。若い選手が多い分、失点してしまうとチームとして雰囲気がちょっと落ちてしまうところがあったので、後半の入りを大事にしようというのは淳吾さんを中心に雰囲気を作れていたと思います。』
後半開始からギアを入れ直した相模原に対し、甲府は前半とは違い、ビルドアップ時に新井が中盤に上がらず浦上とメンデスが澤上の左右からボールを運んでいく。
CBがボールを運んでいくことで、相模原のシャドーを引き出しスペースを作り出すことを狙う。
ボール保持の形を変えた甲府だが、前半以上に切り替えの速さを高めていきボールを持つ時間を増やしていく。
54分に相模原はまたも川上のミドルからゴールに迫る。
CKからデザインされた形で川上のミドルへと繋げたが、甲府のセットプレーではウィークポイントとなるゾーンの外を狙われる。
試合後の川上竜選手のコメントより。
『あれは昨日の練習でやっていた形で、前半と一緒で風と雨があって、変な引っ掛かり方をするとカウンターになってしまう可能性もあったので、とにかく抑えて打つようにしました。』
このプレーで得たCKの流れから相模原にPKを与えてしまう。
このPKを藤本が冷静に沈め、相模原が勝ち越しに成功する。
試合後の藤本淳吾選手のコメントより。
『GKが逆に倒れるのが見えたので、GKがいないほうに蹴りました。ギリギリまでGKの動きを見ていました。』
PKを与えたところも不用意ではあったが、その直前の繋ぎの局面も不用意であった。
野澤は泉澤へのパスを選択したが、泉澤は背後に2人の選手を背負っておりボールを受けようとはしていない。
また、失ったボールに対しても荒木が外を消しながらプレスに行っているが内にいる選手へのパスコースは空いておりゴールに向かうパスを許してしまった。
また、PKを与えた場面でも人は揃っていただけに、個人での対応ではなくグループで対応すべきであったのではないか。
先制点に繋がったメンデスのファールもだが、人が揃っている状況なだけに冷静に対応していれば防げた可能性があるだけに修正しなくてはいけない。
得点後に相模原が選手交代を行う。
安藤に代えて松橋を投入する。
松橋は移籍後初出場となった。
試合後の高木琢也監督のコメントより。
『1点をリードしていたので、彼の持ち味であるドリブルを発揮しやすい状況にあったと思います。カウンターを仕掛けるだけでなく、ボールをキープする力があるので、相手の敵陣に入っていく時間帯を作ってくれることを期待していました。』
勝ち越しを許した甲府だが、ゴール前を固める相模原の前に精度を欠きチャンスが作れない。
68分に甲府は野澤に代えて宮崎を投入する。
長谷川がボランチに下がり、宮崎はシャドーに入った。
直後に宮崎がチャンスを作る。
関口からのパスで背後に抜け出すと木村のファールを誘い、FKを獲得する。
FKが抜けたところを泉澤、宮崎と続けてシュートを放つが、泉澤のシュートは竹重に宮崎のシュートは枠を捉えられず。
宮崎の推進力を活かし、甲府は攻め手を探っていく。
77分に両チーム選手交代を行う。
相模原は澤上に代えて平松、甲府は浦上と野津田に代えて山田と有田を投入する。
平松は澤上のいたポジションに入ったが、甲府は交代でシステム変更を行う。
リラと有田を並べ、4132の形に変更する。
84分にはリラに代えて小柳を投入する。
これによりメンデスを前線に上げてパワープレーに出る。
87分に相模原は成岡と藤本に代えて梅鉢と川崎を投入し、守りを固める。
90分には甲府に決定機が訪れる。
関口からのクロスに同点ゴールの場面と同じく藤原が被り、抜けたところで泉澤がシュートを放つが力無く竹重の正面へ。
再三右サイドから藤原を越えるクロスを狙っていたが、この場面では決めきれず。
試合後の川上竜選手のコメントより。
『最後はクロスや低い位置からでも放り込んできたりしたので、なるべくボールを持っている選手にプレッシャーに行こうとしました。FWが頑張ってくれて、後ろの選手が弾いてくれて、中盤の選手はセカンドボールを拾う。細かいところの集中力が勝利につながったと思います。』
時間を上手く進めながら戦った相模原が守りきり、勝利を収めた。
相模原の堅守を壊すだけの迫力が甲府には足りなかった。
試合後の伊藤彰監督のコメントより。
『いろいろな要素がある中で、調整不足やケガ人等の条件があるがここで結果が出なかったことは僕の責任でもあると負います。ちょっとしたプレーの甘さ、これくらいで大丈夫かなぁというプレーがチームとしての成熟度、メンタリティ…チームは一つにまとまって戦っていかないといけない。戦う姿勢、全員が走り切る、球際の強さが足りないと思う。もっとパワーを出さないといけない。』
試合後の泉澤仁選手のコメントより。
『チームとして、個人としてもすごく残念。もったいない試合をしてしまったと思っています。』
試合後の高木琢也監督のコメントより。
『42試合が終わった時点でボトム4以上であればハッピーですが、そういうものではないので。勝ったことはとにかく選手たちには自信になる。それ以上でもそれ以下でもありません。とにかく次につなげられたゲームだと思います。』
高木監督のコメントにあるように相模原は勝って次に繋がる試合となった。
一方の甲府は改善すべき点は明確であり、次節に繋げていかなくてはいけない。
引いた相手への崩し、クリアやボールへのアプローチ、グループで守る意識の共有。
課題は多くあるが、明確であるだけに改善はできるはずである。
昇格戦線では一歩後退となったが、コツコツ勝ち点を積み上げ食らいついていくしかない。
4.MOM
川上竜
ミドルシュートでチームに先制点をもたらした。
得点以外でも攻守で豊富な運動量を誇り、中盤の番人として勝ち点3に貢献した。
5.あとがき
悔しい敗戦となった。
これで昇格圏との差は開いてしまった。
前節と似たような失点を繰り返していることは反省点となる。
一方で反省すべき点があることはチームの伸び代でもある。
まだまだチーム力は高めていける。
中断明け2試合勝てておらず、上位についていくためには次節からやり直していくしかない。
試合前には最下位に位置していた相模原だが、今後勝ち点を伸ばしていくチームとなるだろう。
堅い守備をこじ開けるのは容易ではなかった。
新戦力もチームにフィットしており、後半戦の躍進が期待される。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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