J2第28節 ザスパクサツ群馬vsヴァンフォーレ甲府

2連勝で勢いを取り戻した甲府は今節アウェイ群馬での一戦となる。

一方の群馬は現在20位ながら、10月は2勝1分1敗と調子は上向き。
いずれも1点差いないの試合で均衡しており20位という順位で見てはいけない相手となる。
4試合で失点はわずかに1と守備に手応えを得ているだけに難しい一戦となることが予想される。

対戦成績は甲府から見て10勝2分3敗と大きく勝ち越している。
アウェイでも5勝1分1敗と相性の良い相手だが油断は禁物となる。
前回対戦は甲府ホームで甲府が1対0と勝利した。
この試合から現在のスタイルが確立し始めた。
あれから1ヶ月半でどこまで成長したか確かめる一戦ともなる。

1.愚直に泥臭く

スタメンはこちら。

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甲府は前節から7人、前回対戦からも7人の変更となった。
注目は武田将平。
中村の負傷もありボランチが手薄であることも影響はしているが、これで4試合連続のスタメン出場。
これまでの3試合はフル出場を続けており、体力面は心配されるが泉澤と並び今や代えの効かない選手となった。

一方の群馬は前節から4人、前回対戦からも4人の変更となった。
注目は舩津徹也。
6試合ぶりの先発出場となる。
主にCBでの出場を続けてきたが今節は右のSBでの出場となる。
泉澤対策としての起用と思われるが泉澤を封じることができるか。

立ち上がりペースを掴んだのは群馬。
前からのプレッシャーと早めに前線にボールを送ることで甲府を押し込んでいく。

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甲府はDFラインを右にスライドし、433への可変でビルドアップしていく。

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一方の群馬はシンプルに前線に入れてくるが後方からビルドアップをしたい時には岩上が下がる形で繋いでいく。

最初のチャンスは群馬。

大前のCKから青木が合わせるも河田がセーブ。
大前のキックの精度の高さを感じさせた場面。
ゾーンで守る間にこれだけ質の高いボールを蹴られ、走り込まれては失点していても仕方がないが河田のビッグセーブに救われた。

試合後の奥野監督のコメントより。

『立ち上がりから選手たちが元気よくゲームに入って、集中力の高い試合を見せてくれました。前半はこう着したゲーム状態でしたが、その中でも自分たちでボールを動かす時間も作れて、やるべきことを徹底することで、リズムを整えてくれていました。』

立ち上がりから群馬の甲府対策が功を奏し群馬ペースで試合が進む。
群馬の守備の狙いとしては泉澤には絶対にやらせないこと。
舩津を泉澤対策として右のSBとして起用してきたが、1列前の田中がプレスバックし1対1の局面を作らせない。
さらに時間が掛かれば青木も加わり3人で囲い込む徹底ぶり。
甲府としては荒木がフリーとなるだけにここからのクロスに活路を見出だしたかったがキックが安定せず。

20分過ぎから徐々に群馬の前線からの規制が効かなくなり甲府に流れが来る。
サイドの高い位置にボールを運び、泉澤のところから崩したが上述のように徹底的にケアされている。
その中、左サイドで攻めきれず右へ展開した流れからチャンスを作る。

右サイドで宮崎、太田、小柳が絡み右サイドを崩しペナルティエリア内のラファエルと繋いで崩した。
小気味良いテンポでのパスワークからのフィニッシュと良い形を作った。
泉澤を防がれた時の第2の攻め手が必要となる。
その第2の攻め手を前半は宮崎が担っていたが前半のみでの交代となってしまった。
前半終了間際にふくらはぎを気にする仕草を見せていたため心配である。

後半宮崎が不在となり泉澤の個人での打開しか攻め手が無くなるとより苦しい展開に。
すると53分にセットプレーの流れから先制を許してしまう。

奪いきるアグレッシブさは必要であるが状況判断は必要。
この場面は奪いにいくことは安易な判断だったと言わざるを得ないし、河田は出れたのではないか?
しかし、青木のラストパスも大前のシュートも見事であった。

試合後の新井選手のコメントより。

『失点シーンに絡んだことは悔いが残る。チームとして前から行くところの意識がある中で、その局面で軽いプレーになったけれど行き切ってしまうのではなく、取り切るよりも遅らせて帰陣を待つことを瞬間に考えないといけなかった。』

試合後の大前選手のコメントより。

『翔大から良いボールがディフェンスラインの背後に出てきて、うまく合わせることができました。ケガで4試合出場できなかった中で、自分が出ていない間に守備のところで頑張ってくれていてチームの成長を感じていました。今日は先発出場のチャンスをもらったので、FWとして結果が求められていました。大事な試合でゴールを決めることができて良かったと思います。』

試合後の青木選手のコメントより。

『今日は久しぶりの先発出場だったので、なんとしてもチームの勝利に貢献したいという強い気持ちでプレーしました。攻守にハードワークをして、自分が得点を取れなくても、チームとして得点が奪えて、勝てればいいと思っていた。前半が我慢のゲームだったのですが、みんなでしっかりと守ることができて、(失点)ゼロで折り返すことができました。アシストのパスは、大前(元紀)選手にイメージどおり送ることができました。』

失点後すぐに甲府が動く。
泉澤の個人技に頼らざるを得ない状況をドゥドゥ、金園を投入し打破しにかかる。

さらに70分には松田、山本を投入しシステムも変更。

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しかし、この交代も効果は無く後半はチャンスらしいチャンスもこの場面のみ。

泉澤がやっといい形で仕掛けられるようになるも得点には繋がらず。

試合後の奥野監督のコメントより。

『後半も立ち上がりからしっかりとゲームに入ってくれて、カウンターから良い形でゴールが生まれました。リードしたあともチャンスを作ることができていて、決めることができなかったのですが、最後まで粘り強く戦ってくれました。』

後半は完全に群馬のペースで試合は進み、コントロールされてしまった。
試合巧者ぶりを発揮した群馬が逃げ切った。

2.アグレッシブとは?

試合後の伊藤監督のコメントより。

『選手はこのゲームの大切さは分かっていたし、気持ちのところを感じていた。』

気持ちが空回りした試合だったように思う。
だが、アグレッシブとは相手に暴力をふるうことではないはず。
後半から見えないところで押したり、アフターで相手に当たりに行く場面が増えた。
相手を振り払うような行為もボールを顔面にぶつける必要もない。
最近の試合では執拗なまでの抗議も多々みられる。
勝つために必死になることは必要である。
群馬は正しい必死さを見せたが甲府はどうだったのか?
アグレッシブなサッカーとは積極的にドリブルで仕掛けたり、背後へ飛び出したりと自分達からプレー面でアクションを起こして相手の守備を攻略すること。
前線からガムシャラにプレッシャーをかけ、高いラインを敷いてボールを奪いにいくこと。
これがアグレッシブなサッカーであり、こういうサッカーを目指していたはず。
今節これを実践していたのは群馬の方であった。
後がない中でリードを許し、焦っていることも伝わってきたがエネルギーを使うところを見誤ってしまったように思う。

昨シーズンの昇格プレーオフで先発で出た11人の内8人もの選手が去った。
開幕前には佐久間GMは残留争いも覚悟しなくてはいけないシーズンとなるかもしれないと語っていた。
現実はどうか?
去年とほぼ同じ順位にいる。
昇格はもちろんしたいが、この成績も十分胸を張れる成績である。
昇格に向けては後が無くなり、プレッシャーで苦しんでいるように見える。
サッカーを楽しむ。
単純なことだが原点に戻ることが殻を破るのに必要なのかもしれない。
もう一度サッカーの質で勝負できるところを見せて欲しい。

3.ハードワーク対策

では何故焦ってエネルギーの矛先を見誤ってしまったのか。
後がない状況で自分達がやりたいことを封じ込まれてしまったことは関係しているだろう。

試合後の泉澤選手のコメントより。

『前からのプレスというよりも、後ろからのビルドアップがうまくいかなかった。ボールを持ったときにうまく押し込めなかった。僕のところで押し込んで押し上げることが前半はできなかった。』

試合後の新井選手のコメントより。

『前半思うようにプレスが掛からず、連戦の4試合目で疲労感がある中で、同じ強度、同じクオリティーでプレーしないと勝点3は近づいてこない。』

ピッチ内での認識が前線の選手とDFラインの選手で異なっていることは不安もあるが擦り合わせはできるだろう。
お互いの認識はどちらも間違っていなかったように思う。
前線からのプレッシャーも後方からのビルドアップもやりたいことはさせてもらえなかった。
プレッシャーに行けばロングボールを蹴られ、連動してないとみるや繋がれ押し下げられてしまう。
ビルドアップに対しては2トップが規制をかけ、縦方向のパスをケア。
特に青木の献身性は見事で、アンカーの山田をケアしながら強度の高いプレッシャーをかけ、時には後方まで下がりDFラインを助けた。
縦につけられないのでボールは外回りになるが、そこには田中と加藤の両サイドの選手がプレッシャーへ。
田中は泉澤にボールが入ればプレスバックし、舩津と共に右サイドに鍵をかけた。

甲府は2トップで規制をかけ、ブロックを敷く相手を苦手としているように思う。
福岡、山形、栃木、金沢、岡山、千葉、群馬。
これらのチームがハードワーク+プレッシャー回避のためにロングボールを蹴ってくるチームかと思う。
今節終了時点で3勝2分5敗。
ここまで6敗しているがヴェルディ以外はここに該当するチームとなっている。
いずれもオーソドックスな442で構え、2トップから規制をかけビルドアップを阻害し、セカンドボールを回収し早めに前線に蹴り込みプレッシャーを回避してくる。
明確に苦手な相手を抱えていることが連勝ができず5位、6位から上に上がれない理由となっている。

試合後の伊藤監督のコメントより。

『我々のブロックの前からボールを入れられてセカンドボールを拾われた。我々のプレッシャーを逆手に取ったプレーを上手くやられた。戻りが速い草津にイニシアチブを取りながら最後突破するところが足りなかった。DFラインの裏を走る回数を増やせないと崩せない。』

伊藤監督のコメントにもあるように背後を突くプレーは少なかったように思う。
相手DFラインの前でプレーする時間も長くブロックを破れなかった。
シーズン途中からスタイルの転換をはかり、過密日程の中練習もきちんとできない状況でまだまだ完成度も低いのが現状。
相手が同じ土俵に立ってくれれば上位相手にも勝ちきれる力があることも事実。
対策を立てられやりたいことを消された時でも打ち破るだけの力をつけていくしかない。

4.あとがき

負けて当然といえる。
審判が笛を吹かなければ何をやってもいいのか?
相手を振り払うような行為もボールを顔面にぶつける必要もない。
後半は見ていて気分のいい試合では無かった。
ヴァンフォーレが好きだからこそ余計なことはしないでサッカーで勝負をして欲しい。
群馬は愚直に走り、判定にも屈しず戦っていた。
勝者に値するのは間違いなく群馬の方であった。
甲府はそういうチームだったのではないのか?
負けたこと以上に戦い方に残念で悔しさも込み上げてくる一戦となってしまった。
群馬の戦い方は見習うところも多かった。
完成度を高めサッカーの質で勝負する姿を町田戦では見せて欲しい。

MOM 青木翔太
決勝点をアシストした。
アシスト以上に前線からプレッシャーを掛け続け、ロングボールを必死に収めた。
泥臭く群馬を前線から引っ張り続けた。

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