J2第28節 京都サンガF.C.戦 プレビュー
首位京都をホームに迎えての一戦。
中断明け初勝利を収め、昇格争いを掻き乱したい。
1.前回対戦
追いかける立場で迎えたアウェイでの京都戦。
京都の勢いに圧される時間帯もありながら、終盤には決定機を作るが決められずスコアレスで終えた。
試合内容については以下のレビューをご覧ください。
2.対戦成績
2001年の初対戦以降、24試合の対戦を経てきた。
通算で7勝8分9敗と負け越してはいるものの、ほぼ互角の成績となっている。
ホームでは3勝3分5敗とアウェイでの成績よりは分が悪くなっている。
直近10試合で見ると3勝6分1敗と甲府優勢となっているが、今シーズン前半戦での対戦も含めて3試合連続で引き分けとなっている。
敗れた試合こそ甲府を指揮した経験を持つ大木武監督相手に0-3と差をつけられたが、残りの試合はいずれも1点を争う試合となっていて今節も僅差が予想される。
3.前節
甲府
中断明け共に勝利が無い甲府と町田の一戦。
町田が甲府を圧倒し、完勝を収めた。
試合内容については以下のレビューをご覧ください。
京都
前節からスタメンは出場停止の飯田と川崎に代えて白井と福岡を起用した。
立ち上がりから京都がハイプレスを掛けて行く。
2分にヴェルディがFKからチャンスを作るが、オフサイドとなる。
ボールを保持したいヴェルディだが、京都の切り替えの速さの前に思い通りにボールを回せない。
11分には敵陣でボールを奪うとウタカがカウンターを仕掛けるが、ヴェルディの戻りも早くシュートを打たせない。
直後には荻原がウタカとのワンツーでペナルティエリアに侵入し、シュートを放つがマテウスが防ぐ。
徐々にオープンな展開となり、撃ち合いの様相を呈していく。
すると先手を取ったのはヴェルディ。
ヴェルディ陣内のスローインに対し、京都がプレスを掛けにいくがンドカがサイドを変えるボールを送るとパライバが麻田を背負いながら反転し裏を取った梶川へパスを送る。
バイスに対し、梶川と端戸で数的優位を作ると梶川が冷静に端戸を使い、左足を振り抜き先制に成功する。
ハイプレスを裏返される形で京都は失点を許してしまう。
それでも京都はプレスの手を緩めず出ていくが、ヴェルディは徐々にプレスを剥がせるようになっていく。
だが、京都もウタカと荻原の関係性でチャンスを作る。
CKも多く獲得していき、シュートも放っていくが得点が取れず前半はリードを許す形で折り返す。
後半開始から京都は三沢に代えてイスマイラを投入する。
この交代により、武田と福岡がボランチで並びウタカがトップ下に入る。
後半の入りはヴェルディがシュートチャンスを作る。
だが、ヴェルディはイスマイラのスピードに手を焼く。
ビルドアップに対し、イスマイラがプレスを掛けにいきマテウスが慌ててタッチラインに逃げる場面が続く。
イスマイラがインパクトを与えたものの攻め手を作れない京都は55分に荻原と武富に代えて本多と荒木を投入する。
すると直後にウタカが個人技から同点ゴールを決める。
追いついた京都は勢いそのままに60分にCKから逆転ゴールを決める。
松田のキックはファーサイドに流れるとフリーで待ち構えていたバイスがゴールに叩き込む。
あっという間に京都が逆転に成功する。
64分にヴェルディは加藤とパライバに代えて山本と山下を投入する。
直後にはヴェルディのビルドアップのミスを誘い、イスマイラが強烈なシュートを放つがマテウスが防ぐ。
ウタカのゴールを境に京都が押し込み、ヴェルディが耐えるという構図となる。
67分にまたもビルドアップのミスを誘い、ウタカがボールを奪いドリブルで仕掛けラストパスをイスマイラに送るとゴールに流し込みリードを2点に広げる。
イスマイラのスピードがヴェルディを撹乱し、京都に勢いをもたらしていく。
リードを広げても京都の足は止まらず、ヴェルディに襲いかかる。
75分に京都は松田に代えて曽根田を投入する。
81分に端戸が背後へ抜け出しシュートを放つが、若原が立ちはだかる。
83分にはヴェルディが梶川、杉本、端戸に代えて石浦、阿野、佐藤を投入し得点を取りにいく。
ヴェルディはペナルティエリア内から山本がシュートを放つ場面を作るが、若原の牙城を崩せない。
88分には左サイドからのクロスに阿野が合わせるとDFに当たり、ゴール方向へと向かうがバイスがゴールライン上で防ぐ。
直後に京都はウタカに代えて長井を投入し、守備固めに入る。
そのまま2点差を守りきった京都が勝ち点3を掴んだ。
先制を許す苦しい試合となり、終盤にもヴェルディの勢いを乗り切り中断明け3連勝となった。
4.今季成績
両チーム成績
12勝9分6敗の勝ち点45で暫定7位の甲府と17勝6分3敗の勝ち点57で暫定首位の京都による一戦となる。
ホームで一度しか負けていない甲府に対し、京都もアウェイでは一度しか負けていない。
ホームで1試合平均1.8得点を誇る甲府の攻撃陣がアウェイで1試合平均0.3失点と堅守を誇る京都守備陣から得点を挙げられるか注目となる。
甲府
直近5試合成績
1勝2分2敗と黒星が先行している。
中断明け4試合は勝ち星が無く、失点も8と嵩んでいる。
中断明けの甲府は泉澤が封じられることで攻め手が失われることが多くなっている。
泉澤を中心とした左サイドが甲府の武器ではあるが、データ上どうなっているか見ていきたい。
こちらはプレーエリアのヒートマップとなっている。
左がチームの中でのプレー割合、右がリーグ平均との比較となる。
左サイドが濃くなっているのがわかる。
特に右のヒートマップを見ていただけると左のボランチから左の高い位置が赤くなっている。
主に起用されているのが野津田と泉澤となるが、このエリアは荒木を含めた3人が主戦上としている。
以下の表はシーズン通算のパス交換数となる。
泉澤、荒木、野津田の名前が上位に多く出て来ているのがわかる。
メンデスも左のCBであり、トップ10全てに左サイドで起用されている選手が連なっている。
こちらは攻撃に関わる主要な成績となる。
ゴール、アシスト、シュート数で泉澤がトップとなりラストパスも2位となっている。
野津田はアシスト、ラストパスでトップでありシュート数は2位、荒木はアシストでトップとラストパスで3位と左サイドからの攻撃が甲府の強みであることがわかる。
左サイドを封じられ、相模原と町田に敗れただけに左サイドの出来が勝ち点3に繋がる。
京都
直近5試合成績
4勝1分と負け無しとなっている。
首位にいるチームの強さが伺え、中断明けは3連勝と好調を維持している。
首位にはいるが、データ上飛び抜けたチームであるわけではない。
攻撃面でシュート数やペナルティエリア近辺に侵入する回数が多くなっている。
パス数や支配率を見ても積極的にゴール前にボールを入れていくチームであることがわかる。
一方で、ゴールに関わるデータを見ていくと昇格圏にいるのが良くわかる。
シュート数、チャンス構築率、ゴール数はリーグ2位となっておりリーグトップクラスの攻撃力を誇っている。
失点数はリーグ最小の18、被チャンス構築率と被シュート成功率は2位と堅守を誇っている。
甲府は泉澤が全ての項目でランクインしていたが、京都はウタカが全てでトップとなっている。
泉澤への依存度が高い甲府だが、京都は甲府以上にウタカへの依存度が高いことがわかる。
5.予想スタメン
甲府
前節から4人の変更を予想した。
GKに岡西、ボランチには野津田と山田、シャドーに宮崎を起用すると予想。
失点が嵩み、勝てていない現状を打破する意味でGKを変更し、京都の高い強度に対応できる選手をボランチに並べ、宮崎のスピードを活かし背後を突いていくのではないか。
京都
前節から2人の変更を予想した。
白井と福岡に代えて出場停止明けの飯田と川崎を起用すると予想。
前々節のスタメンに戻すのではないか。
元甲府のウタカ、武田のスタメンは堅く、曽根田もベンチには入るのではないか
6.注目選手
甲府
須貝英大
中学卒業を機に山梨を離れたが、大学を卒業し山梨へと帰ってきた。
対面の荻原は昨シーズン在籍していた新潟との一戦でクロスから失点を許しているだけに今シーズンは封じ込めたい。
昨シーズンは特別指定選手として2試合、今シーズンプロとして3試合の出場しているがまだ勝ちに恵まれていない。
名門明治大学でキャプテンを務め、勝ち方を知る男が中断明け初勝利を地元山梨の地で成し遂げたい。
京都
川崎颯太
中学生まで過ごした山梨への帰還となる試合。
曹貴裁監督の元、アンカーとして攻守の繋ぎ役として活躍している。
前節は出場停止で休んだだけに休養充分での試合となる。
U15まで過ごした古巣相手に京都に活躍の場を移したことが間違っていなかったと証明する試合としたい。
7.展望
曹貴裁監督が今シーズン就任し、2010年以来のJ1の舞台が現実的なものとなってきている。
球際の強度や切り替えの速さ、運動量で勝負する曹貴裁監督のサッカーは京都でも健在でJ2の中では抜き出たインテンシティを持つ。
狙いとするのは前線からハイプレスを掛け、高い位置で奪いショートカウンターで仕留めること。
特にボールを失った瞬間の切り替えは速く、相手に自由を与えない。
甲府は可変を行い、ボールを保持して試合を進めたいチームだがどちらも容易にはいかないだろう。
最初のプレスを回避するにはプレスの掛からないスペースにボールを運ばなくてはいけないが、大まかに2パターン考えられる。
GKへのバックパスと相手の最終ラインの背後となるが、ハイプレスを掛けボールを奪いに出てくる京都相手に有効なのは後者である。
特に京都はボール保持の際、SBを高い位置に押し上げて押し込んでいくためSBの背後には広大なスペースができている。
また、全体で人数を掛けて攻め込むため失った直後のボール周辺には多くの選手がいる一方で後方はバイスと麻田しか残っていない局面が多くある。
前節の東京ヴェルディもボール保持に拘るチームであるが、早めにDFラインの背後へ流し込む形を多く見せていた。
ボールを奪った瞬間にSBの背後へ流し込み、起点を作ることで京都の切り替えによるハイプレスを回避したい。
甲府としてはGKに下げ、京都にプレスを掛けさせることで空いたスペースを突いていきたいところだが、京都のプレスのスイッチを入れることにもなり引っ掛けてカウンターを浴びるリスクの方が高く、リスク回避の意味でもSB裏にシンプルに流し込む形が増やしたい。
前節東京ヴェルディ戦でプレスを裏返される形で京都は失点を喫している。
この場面を見てもわかるが、前線に多くの人がいる一方で後方にはバイスと麻田しか残っておらず広大なスペースもある。
麻田がボールを奪いに行ったが、取れずに反転を許したことが失点に繋がったが判断一つ間違えば失点に繋がるリスクも孕んでいる。
ハイプレスをベースとしているチームではあるが、90分スプリントし続けられるわけではなくブロックを組む時間もでてくる。
その際には可変を行いながらボールを保持する本来の目指す戦い方で京都ゴールに迫りたい。
チーム全体の強度が高い京都だがウタカだけは強度が落ちる瞬間がある。
パスコースを消しながらプレスを掛けるのが得意な選手ではあるが、京都の中では連続性に欠ける選手でもある。
その緩みを利用し、可変を行い山本が中盤に上がる形を作りボールを繋いでいきたいが、そこへのパスコースを消すことをウタカは得意としている。
ウタカが中盤を消しながらプレスを掛け、状況に合わせWGの選手あるいは中盤の選手が同数で嵌め込む形で人を捕まえる守備を京都は行っていく。
甲府は同数で嵌めに来る相手を苦手としているが、可変を行うことでズレを生み嵌め込めない状況を作りたい。
そこでポイントとなるのが荒木の存在となる。
荒木はサイドに張るだけでなく、インサイドに入る動きも多く捕まえにくいポジションを取ることがある。
状況に合わせ、立ち位置を変え京都を惑わしていきたい。
また、飯田は前節の奥山のように守備に特徴のある選手ではないが、泉澤が嫌がる激しい守備を得意としている。
泉澤の個人での打開は今節も期待するのは難しいかもしれない。
そのため、荒木のポジション取りやランニングで左サイドを崩したい。
失った直後にプレスを掛けに出てくる際は、SBが高い位置を取っていることから裏が空いていると先程も触れたがセットして守る際でも荻原にしても飯田にしても意識が前方にあり、背後への飛び出しに意識が疎かになる場面が見られる。
それを承知の上で起用しているが、中断明けは荻原を早い段階で本多と交代することが続いている。
3試合ともリードした展開であったこともあり、本多を投入し穴を塞いでいる。
甲府としては前半から勝負を掛け、リードを奪っておきたい。
背後を取り、ゴールに直接迫ることが理想ではあるが出来なければバイスをゴール前から遠ざけたい。
バイスは対人能力が高く、ゴール前に構えて守ることに関してはJ1でも高いレベルでプレーできる選手でありサイドを破ってクロスを上げてもバイスがいる状況では得点を挙げることは容易ではない。
バイスをどれだけゴール前から引き剥がせるかも得点を取る上では必要となる。
京都の特徴は攻守における切り替えの速さや強度の高さとなるが、攻撃は切り替え局面からのカウンターだけのチームではない。
ボールを保持し、前線に人数を掛けた攻撃には迫力がある。
ボール保持の際にはSBに高い位置で幅を取らせ、ウタカが自由に動き回ることで起点を作る。
高い位置を取った両SBは積極的な仕掛けでサイドを打開していく。
特に荻原はクロス数はリーグトップ、ドリブル数はリーグ3位と左サイドからの攻撃は京都の大きな武器となっている。
SBが高い位置を取ることでWBの選手がインサイドにポジションを取るため、クロスに対して人数をゴール前に割けることもあり迫力のある攻めを見せる。
前線に人数を掛けることはゴール前に迫力をもたらす意味だけでなく、ボールを失った直後にハイプレスを掛けやすくもなっている。
ボール近辺に意図的に密集を作ることで失った直後には京都の選手が近くに多くいることとなり、そのエリア内でボールを奪いきりカウンターを狙う目的もある。
また、後方からはバイスの高精度のロングフィードが供給される。
こちらは町田戦のウタカのゴールとなるが、起点はバイスからのロングフィード。
このように直接ゴールに向かう形もあれば、サイドを大きく変えるボールもバイスからは出てくる。
バイスに自由を与えると大きな展開から揺さぶられる危険もあるだけに自由を与えないようにプレッシャーを掛けていきたい。
前半戦の京都はウタカに依存する場面が少なくなかったが、後半戦は新たなタレントを加え攻撃のバリエーションを増やしてきた。
福島から加入したイスマイラは高さとスピードを京都にもたらしている。
ウタカと同じくナイジェリア出場の選手となるが、ウタカ同様に柔らかさも兼ね備えた選手ではあるが日本人には無いバネが持ち味となっている。
攻撃においても高さとスピードがアクセントとなるが、前線からのプレスにおいてもイスマイラの存在は京都のハイプレスを強化した。
こちらは前節の3点目。
後半から起用されるとプレスから相手のミスを誘う形を幾度も見せた。
スタメン起用の可能性は少ないと予想するが、途中出場からイスマイラが出てくる展開は気をつけなくてはいけない。
諸刃の剣ともなる荻原の存在を上手く利用し、 先手を取り前半からリードを保つ展開を甲府としては作りたい。
前節は試合の入りで押し込まれてしまい、先制を許しただけに今節はフルスロットルで試合に入らなくては京都の勢いに圧され前節と同じ展開となりかねない。
前節とは違う姿を期待したい。
8.あとがき
いろいろと思うことが各々あったのではないかと思う前節。
勝てなかった原因は様々あるかと思う。
勝ち負け以前に大事なこともある。
相手がある競技であるため、全力を出しきっても勝てないことはある。
なので負けることは致し方ないこともある。
だが、負けた中にも熱量や100%やりきったというものが伝わって来なかったことは残念であった。
ワクチン摂取の影響はあったかと思うが、1週間経ってどのような試合を行うか注目となる。
私はどんな試合をしてもヴァンフォーレを愛する気持ちは変わらない。
ワクチン摂取したから負けてもしょうがないという試合ではなく、負けて本気で悔しいと思える試合が見たい。
全力で首位相手に立ち向かい、勝ちきる試合を期待したい。
京都は首位にふさわしいチームである。
攻守共にJ2トップクラスの強度を誇り、タレント力も兼ね備えている。
曹貴裁監督の元、12シーズンぶりのJ1昇格は現実的となってきた。
甲府に縁がある選手も多く、元気な姿が見られるのも楽しみである。
制限がある中での試合が続き、京都サポーターの方の来場が叶わない一戦となることは残念である。
また京都サポーターが来場した中で試合ができることを願っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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