J2第25節 ヴァンフォーレ甲府vsアビスパ福岡

現在6戦勝ち無しと苦しい状態の甲府。
前節金沢に破れ、順位を7位へと落としてしまった。
昇格へ向けて苦しくなってきた中、上位3チームとの対戦から始まる5連戦第4ラウンド。
ホームに2位アビスパ福岡を迎える1戦から始まる。

福岡は現在9連勝中で2位に付けている。
現在J2で最も強く、勢いのあるチームである。

直接対戦の成績は17勝10分10敗と勝ち越している。
また、ホームでも8勝5分5敗で伊藤監督就任後も2勝1分と相性がいい相手。
前回対戦はアウェイで終了間近に追いつかれ、2対2の引き分けに終わった。

1.ピッチ

スタメンはこちら。

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甲府は前節から7人変更。
前回対戦からは4人の変更となった。
注目は山本英臣。
これまでの5連戦は、新井が週末で山本が水曜日というターンオーバーを敷いて来たが勝負の5連戦の初戦は開幕戦以来の併用となった。
前節金沢戦で甲府での500試合を達成したが、残念ながら敗戦を喫してしまった。
昇格に向けて絶対勝たなくてはいけない1戦で、甲府の象徴がチームを牽引する。

福岡は前節と同じメンバー。
前回対戦から6人変更となった。
注目は前寛之。
今シーズン長谷部監督と共に水戸から加入し、キャプテンを努めている。
9節大宮戦の直前に新型コロナウイルスの陽性疑いとなり、後に陽性判定が出た。
それにより16節まで欠場となったが、17節の山口戦から復帰しチームはそこから9連勝。
連勝中は7試合で先発し、残り2試合も途中から出場している。
連勝の立役者の活躍が10連勝のために必要となる。

台風14号の影響から雨を多く含んだピッチでの1戦。
カウンターやセットプレー、ロングボールが多くなることが予想される。

カウンターを効果的にするためにボールを奪う位置は重要となる。
甲府が勝ちきれない要因として前線からプレッシャーに行くが回避され、自陣まで押し下げられてしまうことにある。

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こちらはボールを奪った位置の平均と敵陣での奪った回数となるが、位置はリーグ最下位で敵陣での回数は下から2番目となっている。
プレッシャーには行けているが奪いきれないことが攻撃にエネルギーが残らず決めきれない1つの要因となっている。
また、セットプレーでのゴールはリーグ2位ながら、獲得数はリーグ最下位。
いかにセットプレーを増やすかも鍵となる。

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一方の福岡はコンパクトな3ラインを形成し、堅守を誇る福岡に対していかに崩しきれるかが鍵となる試合。

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自陣での空中戦勝率トップの上島を中心にリーグ最少失点を誇っている。

また、福岡の攻撃はカウンターに特徴がある。

ショートカウンターはリーグで5位、ロングカウンターは3位と高い数値を誇る。
前線のフアンマを起点としたカウンターには警戒したい。

福岡の特徴が出しやすいコンディションと予想される。

しかし、試合が始まってみると水溜まりは無く、ボールを動かしやすいコンディション。
小瀬のピッチは素晴らしい。

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甲府は433への可変から相手を見てビルドアップしていきたいが、福岡のハイプレスの前にボールを失う場面が多い立ち上がり。
相手のプレッシャーを回避するためにロングボールで逃げるが相手CBに阻まれる。

お互い球際激しくこの試合に懸けているのがわかる立ち上がり。

2.スタイル

甲府は相手の立ち位置を見ながらピッチを広く使い攻めていき、福岡は前線から規制を掛け、ショートカウンターへと繋げていく。
お互いバックスタンド側、甲府は左サイド、福岡は右サイドを起点に攻撃を組み立てていく。

最初のチャンスは甲府。

松田と上島の接触により得たFK。
山本のFKはクロスバー直撃。

続いてのチャンスは福岡。

サイドからのクロスのこぼれを拾ったフアンマが反転してのシュート。
少しでも時間と場所を与えると危険なシュートが飛んでくる。

続いては甲府。

CKから中塩のヘディング。
マンツーマンで守る福岡だが、中塩のマークはサロモンソン。
ストーン役のフアンマの前に入ろうとした中塩が腕で押さえつけられたことにより、マークが外れヘディングできる空間を確保できた。
しかし、村上に阻まれてしまう。

武田からのロングボールに抜け出した太田のクロスを輪湖が防いで得たCKからだったが、左で作り右へ展開する形は狙いの1つであった。

試合後の伊藤監督のコメントより。

『前半から我々がやろうとしているサッカーと福岡さんのパワーの凌ぎあいだったと思いますが、その中でお互いにチャンスがありながらも決め切れない前半でした。』

前半はお互いに自分たちのやりたいことを出しあい引き締まった試合となった。

3.明確な差

後半開始直後に甲府にビッグチャンスが訪れる。
藤田のクロスが相手に防がれるがペナルティエリア内で拾った太田がシュートを放つが枠の外へ。
決定的な場面であったが決めきれなかった。

試合後の太田選手のコメントより。

『シンプルに僕が決めていたら1-0でゲームが進んでいた。そういう勝負の分かれ目を逃してしまったことは大きい。』

このツケを払うことになる。

53分に内田のクロスに中村が飛び込んだプレーで試合の流れが変わる。
立ち上がりから甲府のペースで試合は進んでいたが、1人少ない状態となり福岡の流れとなる。

クロスを何本も入れられ、CKも2本凌ぐも我慢し切れず。
セカンドボールを拾えなかったこと、プレーが切れなかったことが悔やまれる。

試合後の伊藤監督のコメントより。

『我々はロングボールのセカンドボールを拾えているときは良い状態でしたけど、セカンドボールを拾えなかった時、そこから押し返す時間帯が難しかったと思います。体のぶつかり合いや個人のパワー、球際の厳しさというところ、例えばファールで倒れた時の攻守の切り替え、そこを激しく行こう、そういうプレーを増やしていかないと最後の最後に福岡さんのスピードとパワーにやられるぞという中で、1人少なくなったところ、流れを持っていかれた状態でフアンマ選手にやられました。あの失点が一番痛かったと思いますし、あの時間をしっかり凌いだ後にチャンスを作っていきたかったです。』
『あの時間帯は流れが悪い時間帯で、10人になって5-4のブロックを作りながら、しっかり凌ぐ時間帯であったと思います。そこからセカンドボールを拾えなかったこと、例えばクロスが何回も上がっていましたし、コーナーキックも何回もありましたけど、そのセカンドボールをことごとく相手に拾われていたところ、ここが波状攻撃を受けた原因でしたし、しっかり弾き返せなかったということも原因であります。何回も連続してそういうことがあると、少しずつバランスが崩れてしまうことがあり、それでもやはりしっかりと弾き返さなければいけないところだったと思います。1点目のところの波状攻撃を受けた場面、そこはやはり痛かったと思います。』

63分に太田に代えて宮崎を投入する。
宮崎は積極的に仕掛け、苦しい状況を打破しにかかる。

一方の福岡は64分にフアンマに代えて山岸を投入する。
10月6日に山形から加入が発表されたばかりの選手を早速使う。
その山岸は投入されてから1分も経たない内に決定機を迎える。
石津のパスに抜け出しGKと1対1の場面を迎えるも決め切れず。

試合を決定付ける得点が71分に決まる。

福岡の得意とするカウンターから決定的な2点目を奪われてしまった。
狭いところでパスを繋ごうとして奪われ、カウンターを浴びる。
武田が内田を呼ぶ声が聞こえ、後ろには中塩もいたことからそちらを使い逆サイドで張っている宮崎やインサイドに立ち位置を取っていた藤田へ展開し広げたかった。

試合後の伊藤監督のコメントより。

『2点目を取られた時間帯も、悪い時間帯にやられました』
『受け身になってしまったところと、体力的な部分であったりとか相手のスピードといった部分で、体をぶつけられれなかったところ、我々がアタックしようとした中、オーガナイズを変えて点を取りに行こうとした中でやられたので、ある意味チャレンジした中で点を取られてしまったところ、そこはなんとか弾き返したかったですし、ここに尽きると思います。』

クロスに対してゾーンで守っているため、素早いスライドや場所をきちんと消す必要がある。
しかし、2点共ボールへの寄せも甘く相手に時間も場所も与えてしまっていた。

試合後の新井選手のコメントより。

『ゴール前での迫力。特に守備でそこを感じさせてしまった。セカンドボールを福岡は激しく奪いにくる。前を向かせないとか守備の迫力の差を感じさせてしまった。』

試合後の石津選手のコメントより。

『連勝で一人ひとりが確実に自信を持ってやれていると思う。』

石津のコメントが両チームの差なのかもしれない。
福岡の選手は1プレー、1プレー明確な目的を持ちチームとして連動してプレーできている。
一方の甲府はチームとしてのプレーモデルはありながら、勝てていないからか意思が合わない場面が多くある。
パスのズレやシュートチャンスで味方と被ってしまったり、クロスの先に誰もいない場面がある。
少しの歪みが積み重なりゴール前で大きなものとなり得点に繋がらない。

簡単に言えば決めたか決められなかっただけの差なのかもしれない。
しかし、小さな差なのかもしれないが簡単に埋まる差ではない。

4.昇格

77分に泉澤と山本に代えて、ラファエルと山田を投入する。
これにより攻守両面で433へ変更。

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飲水タイム明けから武田と野澤を入れ替えていたが、この関係はそのままにアンカーに山田を起用。

パワーを持ってボールを奪いに行きたい甲府だが、プレッシャーをいなす上手さも持つ福岡。
安易に蹴り出すことはなくプレッシャーに来た甲府の選手を引きつけ試合をコントロールされてしまう。

終盤甲府にもチャンスが訪れるも村上が立ちはだかる。

甲府は得意とするセットプレーをいかに増やすかが課題であったが、今節は多く取れていた。
CKは7本と福岡の4本を上回り、FKも直接狙える位置から2本あった。
実際にセットプレーから多くのチャンスを作れていたが村上に阻まれてしまった。

試合後の太田選手のコメントより。

『今季の中で数本に入るビッグゲームだと思っていたし、勝たないといけなかった。勝ってこそ内容が良いということになる。結果がものを言うスポーツ。勝てなかったことがすべて。勝てるようにしないといけない。』

試合後の伊藤監督のコメントより。

『最後の最後のゴールネットを揺らすところ、個人のクオリティをチームとして上げていかなければならない思います。悔しい敗戦ですけど次に向けてもう負けられない、勝ち続けていくしかないと思いますので、パワーを持って次のゲームに行きたいと思います。 』
『13という数字が目の前にあることは確かなので、もうやっていくしかないと思いますし、1試合ずつ勝ち点3を積み上げていくしかないと思います。諦めたつもりはありませんし、まだ17試合あって勝ち点差13、これは(昇格を狙うのに)可能な数字だと思いますので、悲観するものではなくて、前を向いて進んでいくしかないと思います。』
・今シーズン2度目の連敗をして、監督の中でチームとして戦い方を含めて、何かを変える必要があると考えていますか?
『それはありません。』

試合後の新井選手のコメントより。

『「まだまだ」と言える時期ではなくなってきていますけど、昇格をあきらめるとか結果をあきらめて試合内容に特化する時期ではない。』

今季の残りを占うようなビッグゲーム。
その試合を落としてしまったことにより残念ながら昇格は現実的な目標では無くなったように思う。
しかし、選手やスタッフは諦めていない。
それなら私たちサポーターは信じるしかない。
伊藤監督のコメントにあるように何か変える必要はない。
決して弱いチームでは無く、毎節積み上げもできている。
しかし、サッカーは相手があるスポーツ。
簡単に勝たせてはくれない。
必要なのはきっかけであり、救世主。
昨年の河田や金園のようにチームを勝たせられる存在。

5.あとがき

昇格が絶望的となる敗戦。
勝たないといけない試合であったが敗れてしまった。
これで2位福岡との勝ち点差は13。
昇格するチームとできないチームの差を思い知らされたような1戦となってしまった。
しかし、試合中降り続けた雨も試合後には上がり光が見えていた小瀬。
この試合までが雨であり、次の北九州戦から光が射す。
それを暗示する景色が小瀬周辺には広がっていた。

MOM 村上昌謙
決定的なシュートをいくつも防いだ。
得点を決めたフアンマや石津に目が行きがちだが、村上の好セーブが無ければ甲府にも勝ち点を積むチャンスはあった。
特に終盤の続けてのシュートセーブは見事であった。
セランテスの欠場も感じさせず、ポジションを明け渡さない活躍を見せた。

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