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発達を導く「介入」に関する一考察    ダイナミック・アセスメント研究における議論を手掛かりに

平田知美(2015). 「発達を導く「介入」に関する一考察 ダイナミック・アセスメント研究における議論を手掛かりに」『 和歌山大学教育学部紀要. 教育科学』61巻,59-67.

 評価にはいろいろな考えがあるが、この論文ではダイナミック・アセスメントという評価方法を算数の授業に取り入れた実践について報告している。まず、ダイナミック・アセスメントとは何か触れておきます。ダイナミック・アセスメントは日本語にすると動的評価という訳語を付けられることが多いです。動的というので、評価者が積極的に評価される側にかかわっていくことになります。そうすると、評価の客観性が担保されるのかという問題が新たに浮上しますが、「君はA」、「君はC」という感じで基準に合わせて機械的に評価することに対する疑問もまた残ります。テストの日(評価する日)だけいいパフォーマンスを発揮すれば成績がよく、その日にパフォーマンスを発揮できなければ成績が下がるというのは、果たしてその評価された側の成績を十分に反映しているといえるのか。それでは、評価の回数を増やせばいいのかというと、その負担の大きさを考えると難しいです。

 さて、ダイナミック・アセスメントではそういった疑問について別の視点から考えるきっかけを与えてくれます。別の視点で考えるということを強調しておきます。決してこれがベストな評価方法というつもりはありません。

 それでは、ダイナミック・アセスメントの3つの特徴について整理します。

①評価する人が、評価される人がする応答に応じて、評価される人の変化   を促しながら評価する。

②学習者の思考の流れに目を向ける。→従来の知識・技能を評価する流れに一石投じる感じがしませんか?

③評価者に対する応答などから得られた情報を分析→結果ではなく、これからの可能性などを評価する。

 以上、3つの特徴があるとこの論文では述べられています。評価は評価する子どもを伸ばすことを目的とし、自分の授業を反省し授業改善を行うためにするものです。しかし、テストでいい点数が取れるか取れないかに終始し、本来の評価の意義を見失っているのではないしょうか。そのうえ、テストでいい点数を取れるようにテスト練習をさせるということもあるかもしれません。学力調査で漢字の成績が悪いから国語の時間の最初に5分漢字チェックをするなど。

 ダイナミック・アセスメントでは、この点についてもクリアできます。評価は結果ではなく、目標へのプロセスに積極的に関与し、評価時点では関与への応答の仕方や、将来への可能性を評価することになります。ただ、やはりぬぐい切れないのは、評価の妥当性です。そこについては非常に悩ましい問題が。今後も研究していきたいなと思います。


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