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日記:妊娠後期のしんどさを他の動物と比較してみる

妊娠後期になりました。横になると胸のあたりが焼けるような感覚がして眠るのが辛くなってきました。たまに吐いてしまいそうになりますが、つわり の時と異なり自分でも「胃が物理的に押されて胃液が出ている」感じがあります。
妊娠中は子宮で腹腔内臓器が圧迫されたりホルモンの変化により消化管運動が停滞することで様々な消化器症状が出るようですが、この胸のあたりのひりつきは逆流性食道炎でしょう、とかかりつけの産院で指摘されました。

ところで前回の健診で測定した子供は私の体重のおよそ3%程度になっているようでした。体感もっと大きいものがお腹に入っているような気がしていましたが、意外と小さい?かもしれません。この大きさの物体が腹腔を押し上げていてこれだけ辛いのだから、他の動物ではどうでしょうか。

分娩前繁殖牝馬の平均体重は640kgで娩出時の仔馬の体重は50-60kgです。
55kgの馬を産んだとすると体重の約8.6%程度となります。
彼らは植物の繊維を発酵するために人間よりも長い腸管(盲腸・結腸)を持っているので、お母さん馬の腸管は影響を受けそうです。それだけの大きさの胎児がお腹にいると吐いてしまいそうですが、馬は解剖学的に胃の入り口(噴門部)の筋肉(括約筋)がよく発達しているためゲップや嘔吐をしない性質を持っています(そのため他の動物より胃破裂を起こしやすくなっています。) 分娩前後のお母さん馬で胃破裂は多いのだろうかとも思いましたが、胃破裂が特に増えるなどの報告はありませんでした。人間の妊娠後期のように吐いてしまうことはなさそうですが、過去の報告よりお母さん馬では産後の大腸の可動域が大きくなるため大結腸変異は多くなるということなので、やはり出産は大変です。
なぜこんなに括約筋が発達しているかというと、走るときに内容物が出ないようにするためと考えられています。

逆に小さく子供を産む動物もいます。エゾヒグマの赤ちゃん(約420g)はお母さんクマ(約120kg)の300分の1の体重で生まれてきます。お母さんの体重の0.35%程度ですね。これは冬眠中に出産するため受精卵が着床してから分娩までの期間が短いことに起因しますが、ご飯が取れない時期に授乳でエネルギーを取られるのでお母さんは大変そうです。

参考
・兼子樹広, からだの仕組みを知る18(丈夫な馬を育てるために) =消化器の仕組みを知ろう②=, http://www.b-t-c.or.jp/btc_p300/btcn/btcn56/btcn056-04.pdf, 2022.07参照
・村田浩一, 坪田敏男『獣医学・応用動物科学系学生のための野生動物学』, 文永堂出版
・浜名克己, 中尾敏彦, 津曲茂久『獣医繁殖学 第3版』, 文永堂出版


犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。