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リンデンの香り|インドの菩提樹

今日、リンデンの香りを嗅いだ。日帰り温泉で今日の香り、リンデン・エッセンシャルオイルの湯というのがあったのだ。それに肩までゆっくり浸かった。


リンデンとは、インドの菩提樹、アジアのハーブだとどこかで聞いてはいたけれど、どういう香りなのかは知らなかった。



ネットで調べても「深く濃い甘い香り」とかばかりだし、成分で言えばファルネソール(セスキテルペンアルコール類)としか出て来ない。これでは、へえ、ファルネソールの香りね!と、かなり絞られた専門分野の方にしか話が伝わらない。


考えてみれば、香りは言葉で表現するのはすごく難しい。そして、ナンセンスに思える。香水のプレスの方なんかは一体どうしているんだろう、それこそ辞書編集者のような、「舟を編む」並みの言語能力が問われる職業じゃないか。


リンデンの香りは、どこかで嗅いだことがあると思ったら、あれだ。よくあるインド雑貨のお店(イオンの中に入っているような )で焚かれているお香の香りなのだった。あのお香よりはもっとほのかで薬用っぽい香りがするが、それでもほとんどの人にとってはあの香りがはじめてのリンデンの香りだろう。説明するのはすごく難しいのに、嗅げば、ああ、これか、と簡単にわかる。


リンデンは(そのモールのお香を悪くいうわけではないけれど)本来は本当に良い香りである。うるさくなく、リラックスを促して沈静化し、トゲトゲした精神の針を柔らかいプニプニしたものに変える。リンデンのエッセンシャルオイルがたっぷり入った湯に浸かってそうなっていくのを感じた。


温泉に浸りながら、ふとチャーシューを食べたくなった。温泉に入ると肉料理が食べたくなるのは私だけか。多分私だけかもな。でも、出た時にある食堂のメニューを見てみたら、唐揚げ定食、カツ煮定食、生姜焼き定食と肉料理がずらり。ベジタリアンやビーガンの選択肢は一切なかった。


やはりみんなも肉料理が食べたくなるのかもしれない。人は体が温まり心がほぐれると、肉を想うのか。私が体に匂いを残したくて、最後に入ってきたリンデンの湯の香りは、まだ体の表面に薄くついていた。それを吹き飛ばすかのような厨房から流れる焼肉定食の香り。甘ジョッパいたれがジャーと熱されたフライパンをうるさくしているのだ。せっかくのリンデンが。


とはいえ、21時なので何も食べずに、文字通り日帰りすることにした。今日みたいな今年一番の寒さ、の日に、火照る体を夜風に晒すような真似はなんと贅沢なことか。もちろんしすぎるほどの防寒はしたが、サウナで芯まで熱に触った体は、このひんやりを好むのだった。


帰って私はシーセンタケダのレモンを、夫はオロナミンCを飲んで寝た。両方とも昨日コンビニで買っておいたものだった。今のタイミングで飲もうと買ったわけではなかったが、なんだか、その時のために用意しておいた気がした。

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