見出し画像

【サイドストーリー】memento

オリジナル曲は作詞をするにあたって、いろんなストーリーを膨らませています。


サイドストーリー

memento マティーニ


小さな映画館の前にあるレトロなカフェでは、夜になるとカクテルを出してくれた。

仕事終わりにこのカフェでよく待ち合わせをした。

いつも私が遅刻をしていたので、席に着くや「じゃ、行こうか」と促されて映画館に向かった。


あれから10年以上経った今日。

初めて一人でカフェに入り、もしかしたら初めてこのカフェでカクテルをオーダーした。

「マティーニを」と、口から出ているカクテルの名前に自分で驚いた。


しばらくして目の前に置かれたカクテルグラスに少し目が潤む。


そうそう、これ。


オリーブが沈むカクテルグラスは、あの頃の私には大人っぽすぎた。

このグラスを軽く持ち上げて、クッと最後の一口を飲んで「じゃ、行こうか」と言ったあの人を素敵だと思った。


あの頃私は、このカクテルがマティーニだと知っていたのだろうか?それとも、それからしばらくしてから知ることになっただろうか?

覚えてはいない。


しかしこのカクテルが、私の思い出の最初のページにあることには間違いがない。


初めて飲むわけではないけれど、今日このカフェのマティーニを口にして、あの人がどんな気持ちでこの席に座り、私を待っていたのか、初めてわかる気がする。


マティーニのベースとなるジンの香りは、深い森と土のようであり、苦味の遠くからほんのりと風が吹いてくるような味だった。口に含むたびに、その深みは重くなる。


あの人が、私に向き合うためにどれだけ自分を偽っていたのかがよくわかる。


何も言わずに私の前から消え、勝手に人生の幕を閉じたと思っていたあの人が、こんなにも私のための時間を作っていたこと。私を想ってくれていたこと。

マティーニの苦い味が教えてくれた。



memento 彩水(AYANA)


森の小径(こみち)に
雨が降って流れて tears
土がぬかるみ
川になって溢れて fears

風に任せて心躍らせて
Last danceは あなたと一緒 love


Carry on with me
Carry on loving me

最期にひとつ言わせてよ

置いてかないで



音が消えてく
色が褪せて落ちて tears
声を聞かせて
遠くなって忘れて fears


時間(とき)が流れて
思い出になる

ならば要らない

あなたの記憶 uh


Why did you say?
Why did you leave me alone?

優しい言葉ばかりが
居場所を探してさまよう


夢でもいいから会いたい

一人にしないで 

置いてかないで



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?