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サッカーの見方4:アンジェ・ポステコグルー論


 先日ようやく、先月、邦訳、出版されたアンジェ・ポステコグルーの本を読み終わりました。ただどうやらXなんかを見ると、あまり話題にされている方が少ない印象があるので、取り上げてみます。後、自分自身も間違いがちなのですがいうと、ポステ「ゴ」ではなく「コ」です。

 内容としては、マリノス時代、セルティック時代、オーストラリア時代と書かれています。正直、オーストラリア時代は、チームを知らないので、読みにくいのですが、かなり苦労してきて、そのうえで、今のプレミアリーグまで登りついた方なのがよくわかります。どうやら未邦訳の自伝があるようなのでいつか読んでみたいです。

 序盤の方に書かれているので、軽くネタバレすると、選手時代のポステコグルー(攻撃的SBだったようです)は、フェレンツ・プスカッシュに指導を受けているんですよね。といっても、ほとんどの人と同じように、私もプスカッシュ賞(FIFAが選ぶ世界の最優秀ゴール賞)を通してしか知らないのですが、ポステコグルーの見るものを魅了するサッカーに影響を与えたのは間違いないでしょう。
 
 私がポステコグルーのことを知ったのは、おそらくオーストラリア代表監督時代です。当時は、ケーヒルやらキューウェル、ケネディなどといったベテラン選手から脱却を果たそうとするなかで、あまりうまくいっていないな、という印象です。今調べると、ポステコグルー時代のオーストラリア代表は、日本と3度対戦しているのですが、2勝1分けで、日本が勝ち越している。印象に残っていないのも納得がいきます。ですから、マリノスに就任するときいて、当初「なんで?」と思った記憶があります。

 今更になるのですが、ポステコグルーの戦術を素人なりに、簡単に、説明してみたいと思います。
 まず守備面なのですが、これは言うまでもないのですが、、ハイライン、ハイプレス、前の攻撃的な選手も切り替え速く即時奪回、そこからのショートカウンターを目指します。

 マリノスで2019年最終的な形はこのような感じだったと思いますし、昨季のスパーズを見ると、基本的な発想はあまり変わっていません。ダブルボランチが、アンカーの1枚に代わったことぐらいだと思います。

 次にビルドアップ時です。特徴的なのは、サイドバックが左右とも偽SB化、中の位置をとることです。
 偽SBの基本的なメリット、ビルドアップの際、GK、CBからのビルドアップ先として、安定的な選択肢を増やすことにあります。昨季のアーセナルだったり、マンチェスターシティは、どちらか片側だけ、ボランチ化していますが、両サイドなので、よりリスキー。
 両サイドがSB化することによって、当然大きなデメリットになるのは、その両サイドの裏のケアがおろそかになること、これに対して、ポステコグルーは、爆速のCB、守備範囲の広いCBと、中盤並み足元が高くカバー範囲の広いGKに任せます。マリノスなら朴、スパーズなら、ヴィカーリオ。CBは、チアゴ・マルチンス、スパーズならミッキーがそうです。
 共通点として、さらに上げるなら、どちらもポステコグルーが就任した後に獲得された選手ということです、それだけこの戦術をやるうえで、重要なのがうかがえます。
 ここまでして、中央に人を集結させた意味は、大外のレーンで張っていた両WGにボールを受け渡すことにあります。このWGは当然、縦突破を試みて、スムーズにCFに渡せたり、剝がせればいいのですが、そうでない場合は、サイドの最奥の位置をとってマイナス気味のクロス、跳ね返ってコーナー、ずっと俺のターンなんてのも多いです。
 
 ここまで来てなんですが、ポステコグルーはなんというか批判されがちです。
 マリノスでも、1年目苦戦、2年目で優勝、3年目は失速。スパーズでも、序盤戦好調、後半失速CL権を逃す。
 なんというか、それが彼が率いるチームのバイオリズムのようなところがあります。好調時は絶好調。不調時は絶不調。
 あまりにリスキーな戦術故、ロマンとリアリズムで言ったら、ロマン派。ですが、彼はそうは口にしない、というのが、ポステコグルーのフィロソフィー。可能性が高いからやっている、あくまで合理的な選択の上に、ロマンがあって、それを選んでるといった感じでしょうか。彼の言葉で印象的だったのは、みんなボールを持つのが子供のときは好きだったはずだ、なぜ大人になったらボールを持とうとしないのか、出典元が分からないので、正しくないのですが、確かこういう言葉を残していたはずです。
 また、厳密なポゼショナルプレーというわけではないので、選手任せ、そういう批判も多いのです。それはそのとおりかもしれませんが、サッカーは時に合理的なものではありません。
 選手経験があり、選手任せにする信頼のようなものを個人的に感じますし、それゆえ、ピッチ上でカオスが生み出される。
 昨シーズンでいえば、ネタ的ですが、ロメロが何度も、高い位置をとったのは印象的です。個人的には闘莉王以来。ただ、スパーズの場合、SBも偽の位置をとるので、ミッキーの実質的1バック。
 https://www.youtube.com/watch?v=oG1V2ZtvfCY

 ロメロなんで攻め残りしてんだ!とアーセナル側を応援していた私でも、笑ってしまいましたが、結果的にゴールは入り、絶望的な点差から、際どいゲームまで持ってった試合です。

 ポステコグルーはあまり戦術的にも相手に合わせたりはしません。戦術的なデメリットはもう承知の上ですから。
 常に基準は自分たちがどうだったのか、モチベーターとしても、戦術家としても、チームにアイデンティティーとしてそれが植えつけられ、貫かれているように思います。私はそこに惹かれてしまうのです。

 https://www.youtube.com/watch?v=6zhRS8E6a0s

 
 
 
 




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