就活と服装の話――"中身で勝負"のその前に、見た目デザインをしよう
10月、内定式。リクルートスーツをびしっと着て、黒髪に統一された学生たちが街に出そろいます。毎年この時期になると話題になるのは内定式のリクルートスーツ/黒髪問題。泣く泣く染めていた髪を黒に戻した人も多いようです。
昨今は、パンテーンが主導で始めた #令和の就活ヘアをもっと自由に プロジェクトによって、"必ずしも黒髪である必要なんてないんじゃない?"、という風潮は加速。茶髪で内定式に行く学生、そしてそれを容認する企業の姿も目立ってきました。そんな中でもまだまだ着用数が多いのはリクルートスーツ。”というか、もうこの先着ないだろうリクルートスーツって意味不明じゃない?”という議論も、数年前からかなり活発になっている印象はあります。
僕はリクルーターとして、1ヶ月に多くて50人ほどの求職者と顔を合わせます。その中で、やっぱり見た目から得られる情報ってすごく大切なんじゃないか、と常々感じています。
当たり前ですが、人は見た目では判断できません。特に就職活動、求職活動、転職活動の場では人は見た目ではなく、中身・能力・経歴で判断されるべきです。ただその一方で、初対面の人に中身を全て伝えきるのは困難です。そう考えたときに僕は、「見た目すら武器にしてアピールして行くこと」も仕事を探す上で大切なのでは、と考えます。
今回は、目標とするキャリアに合わせて”見た目をデザインすること”について考えてみたいとおもいます。
大企業の就職に向けて”デザイン”された学生たち
冒頭にも少し述べた通り、多くの学生たちは新卒一括採用に向けて「黒髪・白シャツ・黒スーツ」で統一された服装をします。これが今では結構当たり前に感じられていますが、黒スーツが学生間に定着しはじめたのは2002年ごろ。2004年ごろから批判が登場し、2007年には通例となっているようです。(参考文献)
このリクルートスーツに対する批判はかなり色々ありますし、個人的には決して「おしゃれでいいじゃん!」とは思えません。ではリクルートスーツのメリットってなんなのでしょうか。
<リクルートスーツのメリット>
・服装で悩む必要がないので、多くの企業を受ける”就活期”のスタイルとして向いている
・個性で判断されることがないので、「おしゃれな人に出し抜かれるかも」的不安から解放される
・基本を押さえておけば失礼にはならないので安心
リクルートスーツ、ダサい暑い没個性と散々な叩かれ具合ですが、こう見てみると新卒採用/就職活動の現場に非常にあっています。没個性であることはむしろ、見た目で不要な差がつくことがないということですし、日々受けて行く面接の中で服装を選ぶ必要がないということもメリットです。
就活生たちは、「大企業における新卒採用の現場に特化したデザインになっている」というのが僕の捉え方です。
ただ個人的には、就活ファッションがどんどん自由になって行くのには賛成です。個性を殺させることを強要するのような就活市場は発展性がないですよね。今回のパンテーンのキャンペーンなどを通じて、おそらくこれからは黒髪白シャツ黒スーツではなく個人のキャラクターも反映させられるような時代がやって来ます。
また、企業側が沢山の学生を見なくてはいけないとはいえ、その学生の”っぽさ”みたいなものが見えてくる方がマッチング率が高まるかなー……という気もしています。その話はまた後ほど。
見た目 ≒ キャラ。 就活・転職する上ですごく大切。
さて、新卒一括採用の現場ではリクルートスーツは最適にデザインされている、そしてきっとこれからは「個人の服装」がより尊重される時代が来るだろう……というお話をしました。それを踏まえて、次は新卒以外の採用、つまり積極的に自分のキャリアや仕事を選ぶようになる第二新卒や転職活動の現場での見た目デザインについて考えていきたいと思います。
冒頭で述べた通り、僕は職を探すときの見た目はある程度大切にすべきだと思っています。あらかじめお伝えしておきたいのは、僕は「顔採用」の話をするつもりはない、ということです。確かに見ていると企業によって「こういう顔が好きなんだな」みたいな傾向はないことはないです。ただあくまでも、今回お話するのは就活生が揃えているリクルートスタイルのポジションで言えば黒髪・白シャツ・黒スーツ、つまり”服装・髪型”です。
転職活動の時の服装は、リクルートスーツを着る、という人は多分少なく、紺、グレーのスーツ、オフィスカジュアルなどもう少しカジュアルダウンした服装が主流に。ここで難しいのが、転職活動の場では、「一般的に失礼がないはずだったリクルートスーツだと、なんかイケてない」という現象が発生することです。
つまり、転職活動の場では、現在の新卒一括採用とは異なる”見た目による主張”が発生します。
では、どのように”見た目による主張”をやっていけばいいのか? やはりそれは就職試験という関門を突破して行くには、入りたい企業がどのようなキャラクターを求めているのか研究するに限ります。
アバンギャルドなアパレルに転職するための面接での正解の”見た目”は、リクルートスーツではなく「そのブランドの洋服を中心としたキレイめでおしゃれな服装」。逆に、お堅い営業職を志望して面接を受けに行く場合の正解の”見た目”は、UNI◯LOのジャケパンではなく「ピシッとした暗い紺色のスーツに主張控えめのネクタイ」。
……こういう極端な例の場合は”見た目デザイン”しやすいのですが、いわゆるベンチャー企業や中小、社会通念的にこういう服装であることが望ましいという例がない場合はどうしたらいいのでしょうか。
コーポレートサイトの人はどんな風にデザインされているか
見た目デザインをする上で、僕はまず最初に「入りたい会社のHP(なければパンフレット)、可能であればコーポレートサイトを見て雰囲気を盗む」ことを考えます。
当たり前ですがコーポレートサイトというのは、人を募集するために書いています。コーポレートサイトには「こういう人に来て欲しい!!」が詰まっています。
もっと具体的には、コーポレートサイトに載っている写真は「理想の会社の写真」なわけです。多様性を重んじる会社であれば外国人の社員さん、男女などが笑いあっている写真。びしっとかっこいい社員を集めたいのであればスーツの社員が腕組みしているかもしれません。
ちょっとだけ実例を見ていきます。
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1. メルカリ( https://careers.mercari.com/jp )
画像はメルカリさんのコーポレートサイトのスクリーンショットです。お分りいただけますでしょうか、スーツが一人もいない。みなさん”シンプル・キレイめなカジュアルスタイル”で統一です。
眺めているとなんとなく分かって来ませんか? コーポレートに描かれている、「メルカリっぽい人材」のデザインはこんな感じなんです。男性は短髪ですっきり目、シンプルなTシャツにデニム。女性は茶髪でも問題なさそうです。ワンピース、カーディガンなどシンプルだけどおしゃれなもの。逆に、がっちりスーツで行ったら浮いてしまいそうな雰囲気です。
2. Salesforce ( https://www.salesforce.com/jp/company/careers/ )
次はSaleceforceさんのコーポレートサイトです。メルカリさんに比べると、男性はジャケット着用の人が多いですね。女性もワンピースの上にジャケットというスタイル。カジュアルな服装も多いですがこれは会社のお揃いのTシャツでしょうか。
男性陣はスーツですが、ネクタイはしていませんね。第一ボタンが空いていたり、カラーに関しても寛容です。なるほど、”かっちり”と”カジュアル”が7:3くらいが”Salesforceっぽい”ようです。
3. プルデンシャル生命保険 ( https://www.salesforce.com/jp/company/careers/ )
最後の例はプルデンシャル生命保険。見て一発でわかります。スーツ。そしてネクタイ。スーツのフラワーホールには拡張たかそうなバッチが付いています。清潔そうなチーフも入っています。ストライプの仕立ての良さそうなスーツ、小さくて硬めの襟のシャツ、そしてなんか非常に高そうなネクタイ。
プルデンシャルがイメージする”ライフプランナー”の職業はこういう服装をしている人です。Tシャツとデニムで行ったらよほどのことがない限り通過は難しそうな気がして来ませんか。
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ざっくりですが3社服装分析してみました。ここまでくると、僕は会社に面接に行くときに「服装指定はありますか」と聞く時点でややナンセンスな気すらして来ます。
ビジュアルがコーポレートサイトで公開されていない会社を志望する場合は、オフィスを見に行ったり会社で働いて行く人に会うことをお勧めします。それによって、”こういう服装で、こういう雰囲気の人が働いているんだな”とイメージがつきやすいと思います。
入りたい会社がどんなキャラクターの人材を欲しがっているのか、それを分析して自分の見た目(少なくとも髪型や服装)を考えることも、就職活動の一貫に含まれていいんじゃないかと僕は考えています。
もちろん自分の個性を主張することは大事です。なんなら、個性を主張することによって入りやすくなる会社もあると思います。ただ、何よりもまずその会社の空気感をよく読みに行くことが大切な理由は、次の項目でお伝えします。
キャリアと一緒に見た目もデザインしよう
新卒一括採用にはそれにある意味適した服装がリクルートスーツである、と冒頭でお話ししました。じゃあ、転職するとき、新しいキャリアを歩む時はどうしよう?となった時は、”その会社っぽい服装”をしてみるのも戦略の一つかも、というお話しです。
なぜこんなことを思ったのかというと、実は人事の人たちとお話をしていると、よくこんな話題が出るからです。
・内定出した人は第一印象でもう「あ、いけるな」って思った
・なんかわかんないけど、「オフィスにいて違和感なさそうな人」はトントン拍子で採用が決まる
・やっぱり「うちの社員ぽい雰囲気」ってある
言語化できないけれど、なんか”弊社っぽい”空気感というのは存在します。僕自身、たくさん人に会って来て、言語化できないけど「なんかうちのオフィスにいそう」という人に会ったことがあり、その人たちはかなりの割合で弊社に入社しました。
会社の雰囲気を作るのはオフィスの照明での家具でもなく「人」です。そして、人を集める時会社は、理想的な方向に向かって行きたいがために”こういう人が欲しい”をイメージしながら採用活動を行ないます。それはスキルだけではなく、その人が与える印象なども同じです。
転職やキャリアについて考える時、仕事内容やできること、ESの見せ方や面談での良い対応については考えるのに服装や見た目について考えないのはいささか取りこぼしがあるような気がしてなりません。
もちろん、無理して行きたい会社っぽい空気をメッキのように身につけて行くのもまたおかしい話です。あくまでも、ちょっと見てみて、考えてみて、自分にインストールしたときに違和感がないかどうかを確認する、という意味では”見た目デザイン”は効力を持ちます。
リクルートスーツの時代は遠くなく終わりが来ます。新卒一括採用でも、みんなが好きな服を着て仕事を探す時が来る兆しが見えて着ました。
じゃあ、キャリアを積み上げて行く世代の就職ファッションも注目されるべきです。自分のキャリアを自分で作って行くというタイミングになってからこそ。リクルートスーツを脱いだからこそ。”個性”、”っぽさ”、”見た目”のマッチングについても考えてほしいな、と思っています。
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