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「人が好きだから人事がやりたい」だけでは人事になれない理由

 最近ぽつんと呟いた本音が多くの反響をもらったのでもう少し深く考えてみます。一言で言えば、「私は”人が好きな人”は人事に向いてないと思うよ」というツイートです。

 もちろん、「人が好き=人事は向かない」というのは極論です。人が好きで人事に向いている人もいますし、逆に人に対する視点は至極冷静でも人事に向かない人もいます。ただ、一般的にいう「人が好き」というパーソナリティだけでは人事の仕事は難しいのではないか、というのがこのnoteの本旨です。

 なぜ人が好きなだけではダメなのか? 逆に、どのような人であれば向いているのか? 考えてみたいと思います。

人事が好きでいるべきは「会社」

 私は会社に興味を持ってくれる人を自分の手で探すべく、リファラル採用活動を一年以上やってきました。デザイナーさん、人事、総務、マーケター、インターン生など多くの人と面接・面談をした中で見えてきたのは各職種の適性です。一般的に言われていることと、ベンチャーの現場ではその適性の温度感がやや違うことも見受けられました。

 中でも「一般的なイメージ」と「実際の仕事」に乖離が大きいと感じたのが人事職です。多くの人とお話しする中で、こういう人が人事に向いているなー、と感じました。

▼こういう人は人事向いてます
社長が好き
会社が好き
・コミュニティ作りが好き
・制度作りが好き
・喋ることや書くことが苦痛にならない
・口が固くセキュリティ意識が高い
・地味なこと、地道なことができる

 よく学生さんや求職者(人事未経験の方)とお話ししている時に、「人が好きなので人事に携わってみたいな、と思うようになりました!」という考えを耳にします。確かに一般的なイメージってそういう感じですよね。求職者との関わり、社員との関わり、社外の人との関わり、発信……確かに人事は必然的に人と関わることは多いです。

 ただ、忘れてはいけないことがあります。人事の仕事は会社の利益を最大化するために、人員の採用・最適配置・適切な評価を行うことです。人事のゴールは「人」ではなく、あくまでも会社の利益であることは、あまりイメージされないかと思います。

 確かに会社とは人ありき、です。入ってきてくれた人たちを適切に配置して適切に評価することも大切です。しかしながら人事が見据えるべきはあくまでも「会社の利益」。人が好き、なだけで人事が務まらないのはこのためです。

カルチャーマッチしない「いいヤツ」を落とせるか

 「人が好き」ってどういうことなのでしょうか? 私の知る「我こそは人が好き!」という人たちは、こういう人たちです。

・人のいいところを見つけるのが得意
・意見の違いや考えの違いを尊重して活かせる
・人とすぐに仲良くなれる
・相手の「言って欲しいことしてほしいこと」を察知する能力が高い
・人と人の違いを楽しめる
・他者の意見に耳を傾けるのが楽しい
・人の悪いところを個性として許容できる
・自分がとても人に親切にされてきた、あるいは人間関係で苦労したからこそ自分は人に対して優しく正しくあろうと努力できる。

 私の知る限り、「人が好き!」と言える人たちはものすごくいい人が多いです。友達も多く、礼儀もわきまえていて、コミュ力も高い。確かに一見、会社の内外の人と深く関わる人事職に向いていそうな気はします(私もそう思っていました)。

 しかしながら人事は、「好きになった人を会社に入れる」仕事ではないのです。そして、「好きな人を、本人が望む箇所に配置して、本人が喜ぶように評価する」仕事でもありません。先ほどいったように、目的は会社の利益の最大化です。

 想像してみてください。目の前に求職者がいます。その求職者は、すごく”いいヤツ”です。スキル的にも申し分ない。そして、会社に興味を持ってくれています。あなたはその求職者を見てこう思います。「好きだなあ」。

 でもその求職者は会社のカルチャーにはマッチしません。その時あなたがすべきことは、「自分が好きな目の前の人を会社のカルチャーにマッチさせること」ではありません。

「会社に興味を持ってくれてありがとう。でも、うちの会社とあなたはカルチャーが合わない、入ってもお互い不幸だと思う。あなたにとって最適な職場はうちではないよ」と、伝えることが人事の仕事です。残念ながら、「いいヤツだから、落とすには忍びない……」は会社のためになりません。

 人事が見るべきところは「その人の人柄やいいところ」ではなく、「その人の人柄やいいところが、自分の会社が必要か? 自分の会社にあっているか?」です。「人が好き」なだけでは「人柄やいいところを見る」で止まってしまうのです。

でも、人への関心がなければ人事はできない。

 ツイートをした反響として、多くの人からコメントをいただきました。いくつか紹介します。

 「人が好き」から、人事の仕事をするにはさらにもう一歩踏み込んだ視点が必要です。その人の価値観、決定するときの倫理観、考え方に関心を持ち、それが自分の会社にとってマッチするかどうか。そこを考えるところまで含めて「人に関心がある」状態であれば、人事の仕事はむしろ向いていると思います。

今日のまとめ

・人が好きなだけでは人事をやるのは辛い

・人に関心があり、その人の価値観を見抜いた上で、「会社にとって良いかどうか」が判断軸。その人が好きかどうかは人事の判断軸にはならない。

・人事は「会社の利益を最大化するための機関」。(そのためには地味なこと、地道に頑張らなきゃいけないことも多く、人と関わるだけの仕事ではありません)

・人事になりたいなら、「自分が愛せて、絶対伸ばしてやる!」と思える会社を探すことがスタート


読んでいただきありがとうございました!


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