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灼熱のスポーツ漫画、『灼熱カバディ』を読んでほしい

『灼熱カバディ』というスポーツ漫画があります。作者は武蔵野創(本作が初連載)、マンガアプリの「マンガワン」やウェブ漫画配信サービスの「裏サンデー」で2015年から連載されており、現在コミックスが22巻まで発売されています。また今回はあまり触れられませんが、2021年にアニメ化もされています。

この『灼熱カバディ』がめちゃくちゃ面白くて、私の中では『SLAM DUNK』に並ぶスポーツ漫画という位置づけになっているのですが、そこら中で勧めているのにあんまり読んでくれる人がいません。というわけで業を煮やした私は、この漫画をnoteで全力プロモーションすることにしたのでした。
(一応言っときますが、案件とかじゃなくて勝手にやってます)

この漫画、「マンガワン」や「裏サンデー」にて無料で読めるので、とにかくだまされたと思って読んでみてほしいです。読書の秋!

○『灼熱カバディ』ってどんな漫画?カバディってどんなスポーツ?

『灼熱カバディ』はタイトル通り、カバディに青春をかける高校生たちの灼熱のひとときを描いたスポーツ漫画です。スポーツ漫画はざっくり言えば『SLAM DUNK』とか『ピンポン』のようなリアル系と、『テニスの王子様』や『黒子のバスケ』みたいな超人系に分かれます。『灼熱カバディ』は前者、リアル系になります。

リアルって言われても、そもそもカバディってなんだよという話なのですが、なんだかんだ名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。カバディとは攻撃側と守備側に分かれて行う「鬼ごっこ」スポーツで、攻撃する側は攻撃中「カバディ」と言い続けなければならないというのが特徴です。

具体的なルールの説明は漫画の中で行われるので、ここでは基本的なルールだけ説明します。カバディでは攻撃手が1人で相手の陣地に乗り込んでいき、相手をタッチして自陣に返ってくることでタッチした人数分の点数を得ることができます。1人タッチなら1点、3人タッチなら3点。もちろん、最終的に点数が多いほうが勝ちです。

守備側は最大7人で、できるだけタッチされないように避けたり相手を倒しに行ったりします。ラグビー的な感じで、けっこう激しい肉体的な接触があります。もちろん攻撃手は自陣に帰れず倒されてしまうと攻撃失敗。また、「カバディ」と言い続けなければならないので実質的な攻撃の制限時間もあります。攻撃が成功しても失敗しても、即座に攻撃と守備が入れ替わり同じやりとりを続けます。試合時間は前後半20分。休みなく攻守が交代し続けることを考えると、かなりハードなスポーツです。

守備7人対攻撃1人じゃ攻撃する側が圧倒的に不利なんじゃないの?という気がしますが、コートはあまり広くなく、攻撃手は指先でも自陣に帰れば得点になります。また、タッチされた守備はコート外に出なければなりません。コートから戻るには、自分チームが相手から得点を取る必要があります。要するに守備は最大7人ですが、状況によって減っていくということです。油断して守備が減るとその後も得点を重ねられる危険が増すので、場合によっては一気に大量の得点が動くスポーツです。

もっとちゃんとした説明は漫画内以外にもカバディ協会のサイトで説明されておりますので、もし気になったらそちらもご覧ください。

スポーツとしてはマイナーですが、その分漫画内での説明も丁寧で、読者をおいていきません。漫画だと絵も使いながら僕の説明よりわかりやすくルールを解説してくれているので、「カバディようわからん!」という方も安心して読めます。

では、そろそろ内容の話に移りましょう。『灼熱カバディ』について語りたいことは多いのですが、ここでは4つのポイントにしぼってこの漫画の面白さをお伝えしたいと思います。

○『灼熱カバディ』のいいところ①:主人公造形

主人公が魅力的でない漫画は読んでいて苦しいものです。『灼熱カバディ』の主人公は宵越竜哉、もともとサッカー全国ベスト4チームのエースだったという設定で、スポーツエリートです。

コミックス1巻表紙。一番手前、銀髪の人物が宵越竜哉

そんな彼がなぜ高校からカバディを始めるようになったのか、その点については漫画を読んでみていただきたいのですが、重要なのはこの設定のおかげで主人公の成長に説得力があるということです。

カバディというマイナースポーツだから、他の多くの選手も高校から始めている。主人公はもともと高い運動能力をもつ。なので、初心者の主人公が急速に成長しても違和感がない。うまくカバディのマイナーさを生かした設定となっています。

スポーツに関して、宵越の思考は一流です。貪欲にまわりから吸収して初心者の自分がどうすらば一流の選手に追いつけるか、ストイックに試行錯誤を繰り返します。

『灼熱カバディ』20話より


『灼熱カバディ』35話より

宵越のスポーツに対するさっぱりした姿勢は、読んでいて気持ちいいものです。そのスポーツでは初心者だけどスポーツマンとしてはすでに一流、というのは、なかなか珍しく魅力的な設定ではないでしょうか。

挫折や失敗を繰り返しながらも常に上を目指し続ける主人公をまわりと一緒に応援する。そうしたスポーツ漫画王道の楽しみを、この『灼熱カバディ』ではちょっと変わった形で楽しめます。

○『灼熱カバディ』のいいところ②:「チーム」をうまく描いている

カバディはチームスポーツなので、メンバー同士の連携が肝になります。『灼熱カバディ』ではチームスポーツとしてのカバディが丁寧に描かれており、時に主人公はフィジカルが高すぎて=自分だけ早すぎて連携が取れないという壁にさえぶつかります。

やっぱり団体で戦う以上は、主人公の活躍だけでなくチームでの活躍も読みたい。ひとりの優れた選手だけでは相手に勝てない、チームで勝つ、というのが『灼熱カバディ』の中心的なテーマです。

チームメイトの活躍のさせかたもうまく、細かいコマの描写などからスポットが当たっていない選手もしっかりアシストしていることがわかる描き方になっています。

また、描写が全体として合理的に説明がついていて、「とにかく頑張った!」という形になっていない点もいいところです。うまくいったならうまくいったなりの、逆なら逆なりの理屈があり、読者が納得できるようになっています。読んでみるとわかります。

○『灼熱カバディ』のいいところ③:決めコマがかっこいい

漫画ですから、やはり絵が気になるところ。『灼熱カバディ』のいいところは、かっこよくあるべき「決めシーン」がちゃんとかっこいいところです。

『灼熱カバディ』15話より
『灼熱カバディ』200話より

序盤の方はやや絵に癖があり、もしすると読みにくく感じてしまうかもしれませんが、そこは連載作家、画力は急速に成長していきます。僕は漫画のカッコいいコマスクショ取って集めているのですが『灼熱カバディ』は集めても集めても足りないくらいかっこいいコマばかりです。灼熱!

○『灼熱カバディ』のいいところ④:敵チームも好きになる

スポーツ漫画ですから当然相手のチームも出てくるのですが、どのチームも魅力的で読んでいるうちにどんどん愛着が湧いてきます。

もちろん多くのスポーツ漫画で人気キャラが必ずしも味方チームばかりではなかったりするので(テニプリの跡部とか)、相手チームが魅力的なのはそんなに珍しい話でもないのですが、この漫画のいいところは過剰な情報を出さずに相手プレイヤーのキャラクターがわかるようになっているところ。

もちろん回想シーンなどはありますが、それよりもひとつひとつのプレーにそのキャラクターがあらわれるように書いており、キャラの背景や設定を読まなくても試合を読むと「こういうキャラクターなんだな」と納得してしまいます。しかもキャラ付けに一貫性がある。

『灼熱カバディ』95話より

たとえばこちらの敵キャラ。見ての通り嫌なキャラとして描かれています。実際の試合でも嫌らしいプレーを仕掛けてくるのですが、しかし反則をしたり姑息なプレーをしたりするわけではありません。「真っ当にプレーしてるのに嫌なキャラ」という面白いキャラ付けです。それでいて、試合が進んで描写が重なるにつれ、別に大和の性格が変わったわけでもないのに、つまり嫌なやつのままなのに嫌なやつに感じられなくなってきます。矛盾しているでしょうか?読んで確かめてみてください。

また、相手チームの負けさせ方が上手い。主人公チームの勝ちが決まり始めると相手チームにスポットを当てて、さまざまな「負け」を描いていきます。負けるシーンがしっかりと描かれることで、相手チームのカバディにかける情熱がより伝わる形式になっています。この漫画に対する読者コメントで「主人公チームが勝った回なのに相手チームが負けた神回になる」というものがありましたが、まさに言い得て妙だと思います。

○終わりにーーとにかく読んでほしい

以上、主人公・チーム描写・絵・相手チームという4つの視点から『灼熱カバディ』のいいところを紹介してきました。

正直この漫画の魅力を十分に語れたとは言い難いのですが、無料で読めるのでとにかく読んでみてほしいです。序盤も面白いですが、特に部長が出てきて練習試合が始まったあたりからは加速度的に面白さが増していきます。

いま連載はちょうど決勝リーグの真っ最中で、一番盛り上がっているところです。連載でこの盛り上がりを追えるのはいまだけですし、話数もそんなに多くないので、残暑も吹き飛ばす灼熱のカバディを読書の秋にいかがでしょうか。
※なお、本記事のトップ画像は上に挙げた「裏サンデー」のバナーから引用しております。


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