もしもプロジェクト参加時の資料がUXデザインのプロセスに則っていなかったら
UXデザインのプロセスをプロジェクトに組み込むことは、時に複雑で挑戦的な作業となり得ます。特に、プロジェクトの既存資料がUXの原則に即していない場合、どのようにしてこれらをプロセスに適合させるかは、多くのUXデザイナーが直面する一般的な問題です。
この記事では、そのような状況で役立つ心構えと対策を、具体的な例を交えて紹介します。
UXデザイナー参加時に想定される問題
プロジェクトにUXデザインのアプローチを取り入れる際、プロジェクト開始時や初期段階でUXデザイナーとして参加できれば問題はありません。しかし、多くの場合はプロジェクトの方向性や特定の要件が既に決定された後にタスクが割り当てられます。
例えば、ビジネス戦略を立てるチームから指定されるペルソナ、要件、機能などの条件下で作業することになることがあります。また、顧客サポートやカスタマーサクセスチームからのユーザーのフィードバックに基づく要望を取り入れる必要がある場合もあります。
時には、熱心な担当者が夜を徹して資料を作成してくれることがあります。その献身的な姿勢には心から感謝していますが、そのような情熱的に作られた資料をUXデザインのプロセスに合わせて再構築する必要がある場合、担当者への配慮が必要になることがあります。これは、上層部との関係性とは異なる種類の課題を生み出すことがあります。
大前提として、UXデザイナーはファシリテーターである
私のnoteでは何度も書いていますが、UXデザイナーの役割は単にユーザーの視点を理解し取り入れることだけではありません。私たちはプロジェクトのファシリテーター、つまり進行役としての重要な役割も担っています。
この立場から、様々な人間関係や発生する問題を通じて、プロジェクトの全員が一致団結できるような合意形成を目指し、プロジェクトを前に進めることが求められます。ですから、私たちのプロセスへのこだわりを少し脇に置いて、プロジェクトをスムーズに進行させるファシリテーターとしての役割を果たすことが大切です。
基本的にはUXデザインプロセスの通り進める
UXデザイナーのプロジェクトへの参加タイミングは非常に多様です。プロジェクト開始時から参加することもありますし、プロジェクトの上流段階や開発要件が固まった後に参加することもあります。
どの段階で参加するにせよUXデザインの基本プロセスである「ダブルダイヤモンドモデル」を意識して従うことが重要です。このプロセスは、いつでもどの段階にも戻ることができる柔軟性を持ち、それを最大限活用する方法となっています。
たとえ要件が既に決定していても、ビジネスの目的やターゲットのペルソナ、元々の課題感などを再確認することを推奨します。
既存の資料がどのようなプロセスで作成されたのかを把握する
プロジェクトに参加する際、最初のステップとして、既に定義された資料を収集し、それらがどのような背景で作成されたかを理解することが重要です。
例えば、「ペルソナ」に関して言えば、誰が、いつ、どのような目的で設定したのかによって、その背景は大きく異なります。もしビジネス戦略チームが作成したものなら、外部コンサルタントの意見や大規模なデータ分析に基づいている可能性があります。一方、カスタマーサポートが提供したペルソナの場合は、個々の意見や問い合わせの数値的傾向に基づいているかもしれません。
さらに、カスタマージャーニーとペルソナが整合しているかどうかなど、資料間の関連性もチェックしておくことは後に行われるユーザーテストのために非常に重要です。
それぞれの資料がどのように連携し、プロジェクトの全体像にどのように貢献しているのかを把握することで、より効果的なUXデザインを目指すことができます。
厳しすぎる「UXポリス」になる必要はない
プロジェクト開始時に受け取る資料の中には、UXデザインの観点から見て不十分なものが含まれることがあります。例えば、実在しない想像上の人物に基づいてペルソナが設計されていたり、ユーザーの実際の行動を反映していないカスタマージャーニーがあるかもしれません。
これらの資料がプロジェクトのニーズに合わない場合は、必要に応じて見直しや再作成を検討することもあります。しかし、UXデザインのプロセスに固執しすぎる必要はありません。実際のデザインの現場では、厳しすぎるUXデザイナーを「UXポリス」と呼んでやや揶揄することもあります。
UXデザイナーはファシリテーターの役割を果たすため、チーム内での合意形成が最も重要です。ペルソナの設定方法に関わらず、重要なのはチーム全員がそのペルソナを共有し、それに基づいてプロジェクトを進めることに納得しているかどうかです。プロジェクトの成功は、共有された理解と合意に基づいています。
すべてのデータはテストするまで仮説でしかない
企業やプロジェクトの文化によっては、上層部から提供された資料を改めることが難しい場合があります。これらの資料がほぼ確定事項として扱われることもあり得ます。このような状況では、ユーザーテストを行うまで全てのデータを仮説として扱うことが一つのアプローチとなります。
実際、課題や提案された解決策がユーザーにとって響くかどうかは、UXデザイナーが決定することではなく、ユーザーテストによってユーザー自身が判断することです。そのため、ユーザーテストからスタートし、そこから得られる洞察を次のステップに活かすことが、UXデザイナーの腕の見せ所と言えるでしょう。
このプロセスを通じて、実際のユーザーのニーズとフィードバックを基に、プロジェクトの方向性を微調整していくことが重要です。
まとめ
UXデザインのプロセスをプロジェクトに適用する際は、柔軟性と適応性が鍵となります。プロジェクトの各段階で遭遇する挑戦に直面したとしても、基本的なプロセスを理解し、チームとのコミュニケーションを重視することで、ユーザー中心のデザインを成功させることができます。
重要なのは、プロジェクトの目標とユーザーのニーズを最優先に考え、柔軟な思考でアプローチすることです。最終的には、チーム全体が共有する理解に基づいて、共感とユーザー体験の向上を目指すことが、私たちの使命です。このアプローチを通じて、どんなプロジェクトも、より良い方向に導くことが可能です。
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