見出し画像

新型コロナ対策~広島市80万人全員検査のゆくえ

はじめに

広島市4区80万人全員PCR検査の実施が全国の注目をあびたことをうけて、昨年末からの経緯を簡単に覚え書きとしてまとめておこうと思う。

異変を感じたのは去年11月下旬の3連休だった。宮島の紅葉シーズンにあわせて、旅行客で駅が人であふれかえっているのを目の当たりにした。コンビニでは「GoToクーポンは使えるか?」というやりとりも聞こえてきた。外出自粛ムードで閑散としがちだった土産物店のレジにも列ができた。海外からの旅行客はめっきり見なくなった一方で、GoToトラベルを利用しての観光客は目に見えて増加した。

ここから時系列にして広島県、広島市、国の動きを並べていく。

広島市医療崩壊の危機

嫌な予感は現実になった。そのおよそ2週間後には市内4つの基幹病院が救急搬送受入れや、手術を見送るような事態に陥った。とりわけ広島市民病院の機能がストップするというのは一大事である。

それもそのはず、12月11日~12月17日の新規感染者数(10万人比)では広島が東京の1.5倍となっていた。※11月3日の新規感染者数は0人であったことからみると何が原因かは誰でも察しがつく。

※ローカル番組 『イマナマ』より

広島県独自「新型コロナ感染拡大防止集中対策」

広島県はこの感染状況をふまえて12月12日から「新型コロナ感染拡大防止集中対策」を独自に実施。区域を指定したうえで、酒類提供飲食店の酒類提供時間及び営業時間の短縮の要請をおこなった。

政府GoToトラベル全国一斉一時停止

GoToトラベルの一時停止が決まったのが12月14日。一時停止は12月28日~1月11日(のちに停止期間延長)。

広島市成人式延期決定

広島市は成人式をゴールデンウィークへ延期することを早々と12月17日に表明した。これまでに延期を余儀なくされている結婚式関連の再予約と成人式が重なることによって美容院業界は戸惑いをみせていたが、1ヶ月前に延期を決めた広島市は正しかったと思う。それにならって県内ほとんどの市区町村が同様の決断をした(呉市を除く)。なお、松井広島市長は元厚生労働官僚であり、「霞が関の手の内を知る市長」として地元では知られている。

広島県観光連盟「ばかたれーっ!!」ポスター

また、続いて広島県観光連盟が年末年始の帰省を自粛するようもとめるポスターを首都圏主要6つの駅に掲示。観光連盟へのTwitterアカウントへはネイティブ広島弁のリプライがたくさん寄せられていた。地元が広島ではない人にもなにか響くものがあったようで、大きくニュースでも取り上げられた。アピールとしては十分パワーがあったものと思われる。

広島県湯崎知事の陳情?

そこへきて、12月28日の首相動静に湯崎知事の名前があった。例の高級朝食に同席していた宮城県知事は「早期のGoToトラベル再開」求める陳情と伝えられたため、てっきり湯崎知事も同様の主旨かと思い込んでしまった。いまとなっては、何か違う事情で陳情に行っていたと思われる。2021年秋には任期満了にともなう選挙が予定されている広島県知事もここが勝負どころかと思われる。かつて「イクメン知事」として率先して自ら男性の育児休暇取得をうながしたりと、新しいものには敏感な知事だけに。

政府「緊急事態宣言に準じた措置」検討

突如、1月14日に県単位ではなく、広島市に緊急事態宣言に準じた措置をとると西村大臣が発表した。その意味するところがよくわからなかった。

広島大規模PCR検査実施へ

翌1月15日に広島市内4区の住民・就業者を対象とした対規模PCR検査を実施するとの発表があった。国内で最初の感染者が確認されてから1年の年月をかけて、やっと世界で常識的に行われていることが自治体主導で行われることになった。あくまでも「希望者」ということで強制力をもった検査ではないが、無料で無症状者も検査を受けることができるというのは大きな前進だ。これをきっかけに「全国どこでも、何度でも」の検査体制が構築されることを期待したい。

国内の反応ネットをみれば「英断」と評価する人が多いなか、検査抑制論に影響された人の反発も少なからずみてとれた。いまだに「偽陽性が~」「検査したら陽性者が増える」という批判は理解に苦しむ。

余談だが、広島という土地柄は東京でもなく大阪でもなくといった中途半端さがこうじてか、お菓子メーカーの新商品開発の実験都市として選ばれることが多いと聞いたことがある。全員検査を試すにはほどよい人口規模だったのかもしれない。

まだくわしい検査実施体制については明らかになっていないが、来月2月からの実施と伝えられている。私もその対象に該当するので、もし検査を受けることが叶う状況であれば追って体験レポートしたいと思う。

このことは、全国紙、地方紙のみならずロイター通信によって国外にも伝えられる。検査実施の立ち遅れた国においては、〈異例〉のこととして。

政府にはしごを外される

広島がにわかに注目をあびた翌日に国から冷や水を浴びせられることになる。「準宣言地域」にあたらずと、1月16日に西村大臣が湯崎知事に連絡をいれた。これにより、広島市内のカラオケ・飲食店への時短補助に国からの援助が見込めなくなった。政府決定前に湯崎知事が発表していた協力金126万円は84万円に減額された。たった2日で政府の発表は引っくりかえってしまったかたちである。Twitterでは西村大臣のツイートはどこか上から目線で他人事のようにみえた。政府が掲げた項目全てがステージⅣという手遅れ段階にならねば国からの財政支援はのぞめない。

くれぐれも国より一歩先に動いていた広島県、広島市の努力を忘れないで頂きたい。

※と書いた矢先、1月18日広島県庁内にコロナ対策に特化した担当部署が配置され、保健所との連携も強化されたことが伝えられた。

広島はファイティングポーズをとった。

この記事が参加している募集

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?