#178 かびるんるん生誕秘話に感じたアイロニー
生徒が、アンパンマンに出てくるキャラクター、
「かびるんるん」が生まれるエピソードを話してくれました。
インターネットで拾ったストーリーらしいです。
いつものように、
アンパンマンがばいきんまんに苦戦しています。
そう、顔が濡れて力が出ないのです笑
すんでのところで現れたバタコさん。
新しい顔をレーザービームで遠投し、
超回復したアンパンマンは、
ひとしきりの茶番のあと、
「アンパンチ!」でバイキンマンを場外ホームランします。
ここでお話は大団円なのですが、
後日談的に話は続きます。
アンパンマン一行がその場を立ち去ろうとすると、
何やら懇願する声が聞こえます。
「僕も一緒に帰りたい」
「家に連れて帰ってくれ」と。
声の主はなんと、先ほど入れ替わった、
濡れてしまったアンパンマンの顔でした。
心配気に駆け寄るアンパンマン。
しかし、ジャムおじさんはこともなげに言い捨てます。
「あと5分もすれば、その顔はカビて腐り、
ものを言わないようになる。捨てておきなさい」と。
アンパンマンは後ろ髪を引かれながらも、
ジャムおじさんの命令に従って、
何も言わずにその場を後にします。
一行がいなくなったあと、
何も言わなくなったアンパンマンの顔に、
誰かが歩み寄ります。
ばいきんまんです。
アジトに顔を持ち帰ったばいきんまんは、
カビてしまった顔から、
かびるんるんを作り出すのです・・・。
オリジナルにしてはよくできたストーリーだなと感じました。
そして、個人的には強烈なアイロニーを読み取りました。
本来、アンパンマンは弱者の味方であり、
その存在意義に基づけば、
ジャムおじさんが何と言おうとも、
助けを求めている自身の顔を、
放っておくわけにはいかなかったはずなのです。
にもかかわらず、
彼はジャムおじさんの命令に従い、
顔を置き去りにした。
一方、ばいきんまんは、
彼(顔)を連れ帰って、
新しい命を与えたわけです。
結局のところ、
一般的に正義や悪と分類される両者ともども、
自身の想いを犠牲にし、
強いものには従わざるを得ないという現実に、
強烈なアイロニーを感じました。
作者がアイロニーを込めて
物語を紡いだかどうかはわかりません。
でも、ロラン・バルトのテクスト論にあるように、
物語は作者の手を離れた瞬間に、
読み手のものになると考えれば、
読解に正誤はありません。
無造作に転がっているコンテンツにも、
気づきを得ようとして見つめ、考えれば、
何かしら生まれるものがあるはず。
生徒には、
こんな視点を大切にさせたいと考えています。
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