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振り返る少女/ヨハネスフェルメール(Girl looking back)

振り返る少女/ヨハネスフェルメール(Girl looking back)

フェルメールは高く評価されるべき画家であることに異論はないでしょう。しかし日本における彼の作品の評価は他の国々における評価をかなり上回っているのではないかと思われます。
フェルメール作品が1作品しか展示していなくても『フェルメールと17世紀オランダ絵画展』と題して展示され、行列ができる国です。

日本て西洋絵画にそんなに理解が深かったでしょうか?

日本でフェルメール作品が人気なのはわかりやすい人物画が代表作であることだと思います。特にその構図に注目してみましょう。
この『振り返る少女』や代表作『真珠の耳飾りの少女』では女性が振り返る構図になっています。

真珠の耳飾りの少女/ヨハネスフェルメール

振り返る女性の美人画として真っ先に思い浮かぶのは菱川師宣の『見返り美人図』でしょう。

見返り美人図/菱川師宣

  「見返り美人図」は女性が振り返っている姿を描いているものですが、この構図は人物の全てを描くことをせず敢えて鑑賞者の想像に任せる余地を多く残しています。さらに女性の美しさを際立たせるために背景を省略して余白をとっています。

西洋絵画における肖像画というものは人物を説明するためにはっきりと描き、さらにその背景や持ち物まで詳細に描かれることが多いです。それに対して日本画における美人画はそもそも扇や袖で顔を隠したりして、まさに能における『秘すれば花』を体現した作品が描かれています。

これらのフェルメール作品では『見返り美人図』と同様に女性が振り返る構図と省略された背景により多くを鑑賞者の想像に任せて神秘的な美しさを感じさせることに成功しています。特に隠された美しさに慣れている日本人にとってこのようなフェルメール作品は非常に受け入れやすいものだったのではないでしょうか。
未公開作品。制作年不明。収蔵元非公開。


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