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コロナの感染死亡率は1%に 変異株流行後に半減 主要国の中で最低水準

 新型コロナウイルス感染症のいわゆる第5波(7月〜)が収束に向かう中、陽性者数に占める死者数の割合(死亡率)は全国平均累計で約1%となり、今年3月に比べ、ほぼ半減していたことがわかった。
 感染者の大半が未接種者とみられ、そのうち高齢感染者の割合が大きく減少したことが要因とみられる。
 欧米の主要国の死亡率もやや低下傾向にあるが、その中でも日本の死亡率は突出して低くなっている。
 人口あたり感染者数も日本は欧米より低い水準で、ワクチン接種も進んできたが、行動制限の緩和は欧米に比べて先送りされる状況が続いている。

デルタ株の第5波で死亡率が大幅低下

 累計陽性者数に占める累計死者数の割合(死亡率)を調べたところ、昨年春を除いて最も高くなったのは、第3波(今冬)が収束したころの3月中旬ごろだった。

 関西圏ではアルファ株のまん延の影響で3月下旬から急増し、第4波が起きた。そこで、3月23日前後で累計死亡率を比較してみたところ、死亡率は1.96%(第4波まで)から0.67%(第4波〜第5波)に大きく低下していることがわかった。(冒頭の表。9月14日時点、死者数は発表日ベース。以下同)

 最も感染者が多い東京都は、死亡率が1.41%(第1波〜第3波)から0.41%(第4波〜第5波)に低下。全期間の累計死亡率は0.73%となった。

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 一方、比較的死亡率が高い大阪府でも、死亡率が2.37%(第1波〜第3波)から1.20%(第4波〜第5波)に、ほぼ半減していた。

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 累計死亡率の推移をみると、大阪府では「第4波」で死亡率がかなり上昇したものの、首都1都3県では下降。7月以降の主にデルタ株のまん延による「第5波」で、全国的に大きく低下したことがわかる。

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高齢感染者の割合が大きく低下

 では、なぜ第5波に入って死亡率が大きく低下したのか。

 はっきりと言える要因は、死亡リスクの高い高齢感染者の割合が大きく低下したこと、逆に言えば、死亡リスクの低い若年感染者が大半を占めたことである。
 以下は、東京都の新規陽性者数に占める65歳以上の割合の推移である。
 第3波(昨年12月〜3月ごろ)は、65歳以上が20%超の時期が続いたが、4月以降の第4波では10%前後になり、6月以降はさらに割合が低下していた。

【東京都の新規陽性者に占める65歳以上/75歳以上の割合】
(2020年10月6日〜2021年2月1日)

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(2021年2月2日〜5月24日)

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(2021年5月25日〜9月13日)

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(以上、東京都モニタリング会議資料より)

 高齢陽性者の割合が低下した要因は不明である。

 高齢者優先のワクチン接種による感染予防効果があったと思われるかもしれないが、先にみたように、東京都で65歳以上の感染者の割合が大きく減ったのは4月であったが、65歳以上の接種が進んだのは5月以降で、効果が出るとされる2回接種完了者の割合が5割を超えたのは7月に入ってからであった。
 したがって、4〜6月(第4波)において高齢感染者の割合が以前より低く抑えられた要因は、ワクチン接種以外にあると考えられる。

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NHK新型コロナ特設サイトより)

 一方、7月以降(第5波)において、高齢の感染者数は、若年者ほどでないにせよ、第4波を大きく上回った。
 ワクチン接種が進んでいなければ高齢感染者がもっと増えていた可能性も否定できないが、ワクチンの感染予防効果が果たしてどの程度、高齢感染者の抑制に寄与したのかは明らかでない。

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未接種者の死亡率も低下

 また、65歳以上のブレークスルー感染者の死亡率は、未接種者より大きく低下しているとのデータがある(詳細はこちらの記事)。
 いわゆる重症化予防効果が発揮されたことで、高齢感染者の死亡率が低下した可能性がある。

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第50回厚生労働省アドバイザリーボード資料2-6より)

 ただ、実は、ワクチン接種が進む前から、高齢者の死亡率は低下していた。
 以下のデータは、厚生労働省がHERーSYSのデータをとりまとめたものであるが、6月の65歳以上の死亡率が1〜5月より大きく低下していたことがわかる。

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第51回厚生労働省アドバイザリーボード資料2-6より)

 6月は以下のグラフのとおり、まだ高齢者のワクチン接種完了率は5割に満たない時期であるし、そもそも感染者の大半は未接種者であるため、6月の高齢感染者の死亡率低下はワクチンと無関係に生じた現象とみられる(7月以降も高齢感染者の多くが未接種者とされる)
 そうすると、高齢感染者の死亡率低下は、死亡リスクが低くなったブレークスルー感染者が多少寄与したとしても、その割合は小さい。未接種高齢者の死亡率低下はワクチンの重症化予防効果では説明がつかない。
 デルタ株の高齢感染者に対する病原性(毒性)が従来株より低下したか、季節性要因があるのかもしれない。

【65歳以上のワクチン接種率】

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政府CIOポータル・ワクチン選手ダッシュボードより)

主要国で日本の死亡率は最低水準

 欧米でも日本でも、ワクチン接種が進んだにもかかわらず、7月以降、デルタ株による感染が拡大した。

【100万人あたり陽性者数(7日間移動平均の推移】

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Our World Dataより)

 死亡率はどの国も低下傾向にあるが、その中でも日本は最も低い水準にある。検査数の少ないことを考慮すると、他国との差はもっと大きいとみられる。

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【主要国の累計死亡率(9月18日時点)】

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(死亡率の高い順にイタリア、ドイツ、イギリス、カナダ、フランス、アメリカ、日本。Our World Dataより)


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