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音楽と体調

本格的に体調が悪いと音楽を聴く体力もありませんが、ちょっと疲れが溜まってきて、心と体に染み込んでるな…ぐらいの時は、何となく音楽を聴いたりします。
でも、そういう時は得てして、好きなはずの曲でも心を動かすことなくスーッと通り過ぎていってしまいます。

音の波を受容する感覚が鈍っているのか、受け取った信号がその微弱さゆえ、記憶の小部屋までたどり着けずに消えてしまう。
そんな感覚です。

逆に体調が良い時は、今まで気付かなかった音に感動したり、ずっと昔に感じたきり長い間忘れていた情緒が久しぶりに蘇って、忘我の境地に入ったりします。

同じ曲を聴いても、日によってBPMが速く感じたり遅く感じたりすることがありますが、それも体調や、あるいはその日の気温や湿度が関係しているのではないか。

体調と音楽、音楽だけでなくあらゆる表現物と受け手の関係は、体調の影響ひとつをとっても常に不安定で流動的なものです。

ましてや、人生において衝撃的な出来事がおこり、価値観や、もっと言えば人格までもが大きく変化した人ならば、表現されたものに対する感性が、ガラリと変わることもあるでしょう。

好きだった曲が、まったく無価値に思えてしまうことだってあるかもしれない。

ある時には、激しく疲弊した精神が音楽に救われることもあります。

私の場合は、前向きなパワーをもらう、というよりは、音楽がもたらしてくれる、安らぎや懐かしさによって固まった心がほぐれるという感覚です。

肩の力を抜いて、世界を感じてみてほしい。
あなたが今思っているほど状況は、この世界は悪くないから。

そんな意味のメッセージと共に優しく寄り添ってくれるイメージです。

私はそういう優しさのある音楽が好きですし、自分の表現が、誰かにとってそういうものであってくれたら、とも願っています。

生きている瞬間ごとに、どんな表現に出会うかは予測できません。

常に一回きりの出来事を、出会いを体験しながら私たちは生きています。

何度も繰り返し聴いた曲でも、今までとは必ず違うものとして出会い、聴いているとも言える。

いつ聴いても、いつ見ても、感動できる表現であれば、そんな素晴らしいことはありませんし、そんな作品を作ってみたいとも思います。

しかし、やはり自分に関して言えば、そんな大それたことを思うよりも、ただ一度出会った瞬間だけでも、安らぎや懐かしさや優しさを感じてもらえるものが作れたらいいな、と考えています。

verde esmeralda

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