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ツインレイ?の記録22

今後、学生が彼ら日本人駐在員に現地言語を教える家庭教師の件で、日程やルールなどすべて取り決めたのは彼だ。

はっきりいって私にはスケジュール管理能力と計画性がない。
私は授業は得意だが事務作業が苦手で、私の時間割や予定の管理などもしてくれてるのは学生で、この男子学生はこちらに来てからずっと私の世話係をしている。

私は彼にこの男子学生を家庭教師として紹介した。
この二人はよく似ている。
この男子学生は、いつも最悪の事態を想定して情報取集や事前準備を怠らない。
案の定彼はこの学生をすぐに気に入って、二人の今後のスケジュールに関しては問題がない。

私はコロナ以前は旧キャンパスに住んでいて、その時は部屋も広く、学生が日本人駐在員に家庭教師をする場所もきちんとあり、勉強が終わるとみんなで一緒にご飯を食べた。

でも新キャンパスに近い今の部屋は、一人暮らしをするには充分だが、部屋数は少なく、勉強するにも適していない。

wましてや今回は彼のほかに彼の部下にも家庭教師に女子学生をつけている。
二組同時に勉強する環境としては少し難しいかもしれない。

すると、彼は自分が滞在しているホテルの会議室を無料で使えるようにしてくれた。学生は私の家でするか会議室でするかを選べるようになっている。

「こちらはすべて交渉の世界ですよ」

そう言って、彼は難なく問題を解決する。

さらに学生たちとのグループチャットを作り、どのようなルールで取り組むかも光の速さで文書にまとめ、テキパキと指示を出す。

実はその前に私がグループチャットを作ったのだが、肝心の女子学生を加入させるのを忘れた上に、私が決めた決定事項に彼は素早く「まだ決定事項ではないです」「確認してください」と送ってきて、私は自分のダメさに情けなくなった。

そもそも私は彼と会う機会を増やしたいという邪な心もあり、自分も俄然参加する気でいたけれど、なんだかそれさえ見抜かれているようで、「学生たちのために」というのを第一優先に考えてくれている彼の前で、自分はあまりにも情けなくて恥ずかしくなった。

私は自分で作ったグループを消して、女子学生に私抜きでグループを作るよう指示。彼女はグループを作ったが、彼女が加入させることができるのは彼の部下と彼担当の男子学生だけ。つまり彼とは友達申請をしていないので彼は加入できない。だから彼の部下が彼を加入すればいい。

でも有能な彼から見ればこの部下は日ごろの報告も少なく苛立つ面もあるそうで、部下がすぐ彼を加入させるかもわからない。だから私は、男子学生に彼を加入させるよう頼んだ。まあそもそも全員の連絡先を知っている私がグループを作りなおせばいいだけなのだが、また白か黒か0か100かの癖が出て、「もう私は関わらない」のスタンスをとってしまった。

そして男子学生が彼を新しいグループに招待した。

それに対して彼は、

「グループに加入しました。彼のほうが配慮がありますね」

と送ってきた。

私は自分が配慮がないと言われたかのように感じて平謝り。

「いいえ、あなたに怒ってるのではなく、私は部下に怒ってます」

と彼はすぐに返事をくれた。

はっきり「怒ってます」と書いてるのが怖い。

彼を怖がってるのは私だけじゃなく、担当の男子学生も怖がっている。
初めて紹介した時も、成功者の威厳があるとかあれが勝ち組ですねと私に言ってきた。私と彼は同じ年ぐらい(しかも30)に見えるそうだが、学生によると、威厳やオーラがちがうとのこと。
要するに彼は余裕がある大人の雰囲気がある。
そして何より怖いのはその有能さだ。

「文章がかたいので怖がってるのですね。気をつけます笑」

などと「笑」までつけてくれるようになったが、

「違います。有能すぎて怖いんです。切れ者すぎて怖いんです」

と私は返事をした。

プライベートでは、どこか不器用なところを感じたのだけど、あれは錯覚だったんじゃないかと思えるぐらい、仕事上の彼はものすごく有能で、彼を紹介した人が「完璧な人」と言っていたのもうなずける。

とにかく私は彼の有能さにすっかりあてられてしまったのと、自分の下心が恥ずかしくなったので、もう関わらないと彼にも告げた。もともと私は彼と学生と繋ぐところまでが自分の役割だと。

すると彼は男子学生が私を慕っているからぜひ一緒に参加してくださいと言ってきた。

「彼は先生のことが好きみたいなので、できるだけ一緒に授業に参加してもらうことを希望します。なので、繋いで終わりは違いますよ」

「え、でも彼は私のことが苦手なんですよ? そんなに好かれてないと思いますが」

そうなのだ。

彼とよく似たこの男子学生は私のことが苦手だと前にも言っていた。
なにせタイプが正反対すぎる。

「こんな人いるんですか?」

「なんでそんなことするんですか?」

「本当に覚えていないんですか?」

といつも私が予想外のことばかりするし、言われたこともろくに覚えてないので、彼は驚嘆させられるのだ。

すべてにおいて用意周到で先を予測しながら物事を行うこの男子学生にとって私は予測不能の宇宙人。結果振り回されて疲弊するというのがいつものパターンだった。

だから彼はもちろん彼に似ているこの男子学生も私のことは苦手であまり好きじゃないんだろうと思っていたが、私は自分が好かれているかどうかはともかく、この二人は信頼できるし、何か大事なことを頼むなら、必ずこの学生に頼んだ。

私は必ずその行動の結果を見る。だからお追従する口先だけの学生のことはあまり好きじゃないし、私が苦手でも頼んだことは最後までやってくれるこの男子学生に絶大な信頼を寄せている。

でも確かに私のことでいつも苦労をかけて申し訳ないと思っているので、恩返しのつもりでこの家庭教師バイトを紹介したし、彼のようにすばらしい日本人との出会いの機会を与えたかった。

この男子学生が私を好きだと彼は言うが、私はそうは思ってなかったので、学生に直接聞いてみた。

するとこの男子学生は、私みたいな明るすぎるタイプは確かに苦手だけれど、私のことは好きだと言った。それに苦手ではあったけど、だいぶ慣れてきたと。

私はこのことを彼に伝えた。

「すごいですね! おっしゃるとおり、彼は私のことが好きでしたよ」

これに対して彼は

「あなたには学生や友だちから好かれる魅力があるということですよ」

と言ってくれていたが、「じゃあ、あなたは?」と私は聞きたかった。

学生は私のことを明るすぎる陽キャと思っているが、私は彼にネガティブだと言われている。彼に言われる言葉を基本ネガティブにとらえるからだ。

それは私が彼にだけは嫌われたくないという想いが強いからなんだろう。

だけど彼の前では情けない失敗ばかりだ。

そしてこの家庭教師の件でも私は風呂敷は広げたもののどうたたんでいいかわからないぐらいの状態になってしまい、テキパキとこなす彼にもう丸投げ状態になってしまった。

「すみません、丸投げ状態ですみません」私が謝ると

「むしろ私に丸投げでいいですよ」と彼。

「え、私いつも人に丸投げして怒られるのに。すみません、もしそれ本気なら、丸投げします」

私は渡りに舟とばかりに得意の丸投げをすると、
彼はなぜかそれがうれしかったのか、初めての絵文字。

こうして本来の目的であった彼の家庭教師の話が進んだ。

二人きりではないが、私は毎月二回は彼に会えることになった。

でも、本当はもっと会いたい。

一週間に一回は会いたい。

来年彼が帰国すれば、私たちはもう二度と二人きりで会うこともないだろう。

私の願いは些細なもので、今この時、この異国の辺鄙な田舎の町で、彼と二人で一緒にご飯を食べたりお茶を飲んだり、一緒の時間を共有したい。

その思い出があればいい。

たぶんもうこれが最後の恋だ。

それを胸に死ねたらいい。

本気でそう思っている。

そんなことを伝えたら重すぎるだろうか。
でももう私たちには一緒に同じ場所で過ごせる時間は限られている。

せめて私も彼の家庭を尊重している気持ちは知ってほしい。
今さら冷たく突き放されても、優しくしないようにされても、私の気持ちはどのみち変わらないし変えられない。

恋とはいうものの、恋ならとっくに冷めてるだろう扱いもされてきた。

最初はあんなにマメに連絡をくれて、連日無理してでも会って、あんなにやさしい目で私をみつめてくれて、楽しそうにも見えたのに、家族が体調不良になると急に態度が豹変した。

それでも私のコスタリカ面接を手伝ってくれたり、今回も家庭教師の件がうまくいくようにサポートしてくれている。

いつも私がしたいことがうまくいくよう支えてくれる。

私にいつも必要な言葉をくれる。

私が私に向き合う機会をくれる。

正直彼の気持ちはわからない。冷たいのか優しいのかもわからない。

でも私は彼を愛しているし、出会ってしまった以上、もう忘れることは無理なぐらいに彼が私の中心にいる。

ツインレイ女性に必要なのは恋愛依存からの脱却、ツインレイ男性に必要なのは回避依存からの脱却というが、私に恋愛感情がある以上、これ以上進展は望めないのだろうか。

ところが、進展するどころか、悪化としか思えない事態がこのあと発生することになる……。

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