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ツインレイ?の記録3

熱を出して駆けつけてくれた彼に初めて会った翌日の朝、8時に彼から連絡がきた。

「その後体調は大丈夫でしょうか?」

私が平熱だということを伝えると、こちらに来てから私が色々たいへんだったことを配慮して、無理をしないようにと労ってくれた。

本当に今振り返ると、この頃は本当に心底優しいと思う。

そして私もこの頃はまだメスをそこまで出していないというか、媚びも忖度もない感じで、清々しいぐらいにいつもの自分ではちきれてる。

そしてこの時は向こうの返信が早い。
仕事中にも関わらず、二時間以内に返信がきている。
昼休みなんて15分以内の返信だ。
私も素直に返信をしている。

そしてその夜も連絡がきている。

「昼間は少し熱があると言ってましたが大丈夫でしょうか?」

その時、私の熱は38.5度。

それに対して向こうは即返信。
解熱剤を飲むよう勧めている。

そして翌朝も向こうから連絡がきた。
私のSNSを見て、微熱が続いていることを心配してくれていた。
そして退社後にまた必要な物を届けてくれると言っている。

それに対して私は、お礼はしているものの「来てください」とは書いていない。ただ前回持ってきてくれたおにぎりがおいしくて感動したこと、何か特別な炊飯器やお米を使っているのかの質問等をしている。

特に特別な米ではなく日本米であること、前にいた駐在員さんが使ってた炊飯器を使っているとのことだった。
きっと高い炊飯器なんだろうなと思って読んでいたら、最後に
「食欲がないなら雑炊をお持ちしましょうか」

私は素直にお願いした。
人恋しくて、人と話したい、孤独に蝕まれていると書いたが、別に誰でもよかったわけではない。

それに対してもすぐ返信。
本当にこの時は返信が早い。
そして彼自身本来持っている優しさを私に隠そうとはしない。

私もこの頃はかなり素直に褒めちぎっている。
「この辺境の地で○○さんだけが希望の光!」
「空気清浄機!イケメンオアシス!」
はっきりいって自分自身もまだこの時は推しぐらいな感覚だ。

そして18時半、仕事後の彼が住んでいるホテルに戻った時間にまた連絡。
わざわざ私のためにご飯を炊いてくれていて、少し遅くなるという丁寧な連絡だった。

そして20時に向こうがホテルを出発、23分には着いている。

その日彼はコロナの検査キッドを持ってきてくれて、まず私に検査するように勧めた。

「自分でも気になるでしょう? 不安かと思って。これ日本製なので信頼できますよ。よかったら使ってください」

そういう彼に対して私が言ったのは、

「ああ、そうですね。そっちも気になるますよね。私がコロナなら接触者になるし、感染したくないですよね」

という言葉。

あれだけ感謝しまくってたのに、なぜかこの時はそんな言葉が出てしまった。
そしてそれに対して彼も「そんなつもりじゃないですよ」とは言わない。図星だったのかもしれない。

なぜかその時私には向こうの本心がわかったのだ。
一番心配で不安がっているのは私ではなく彼だということ。

それは唾液で検査するものだったが、私は水分不足かなかなか唾液が出ない。だから彼に言ったのが、
「なんかよだれが出そうな話してくださいよ」
ってことだった。

そんなこといきなり言われても困るだろうに、彼は即、
「からあげにレモンかけるところ想像してみてください」
と言ってきた。
「なかなかいいところついてきますね」
と私は言ったが、私はからあげが大好物でしかもレモンはかける派だ。

しかし唾液が足りないせいか、検査結果もなかなか出ない。
もう一度キッドをくわえて検査を続ける。

そんなふうに検査キッドをずっとくわえている私の横顔をなぜか彼はずっと見ていた。視線をずっと感じていたから見ていたのはまちがいない。
普通人が唾液とっているところをそんなに見続けるものだろうか。
それとも検査結果がそんなにも気になるほど不安なのだろうか。
そう思いながら彼の視線を受けていた。

考えてみたら、この日もその前も私はパジャマですっぴん状態。
普通に考えても、化粧もしないボロボロの状態で初対面の人に会うなど考えられない。
でも、なぜか彼なら平気だと思えた。
彼ならだいじょうぶだと。

だからこの日着ていた新しいパジャマも
「これ可愛いと思いません?」
と腕を広げて見せてみた。

その時もまた彼は少し困ったような顔をして黙った。
照れていたのかもしれないし、どう答えていいかわからなかっただけかもしれない。
まあ、普通に考えて、大の男を部屋に入れ、パジャマが可愛いか聞くなんて、私も大概どうかしている。

彼は雑炊のほかにも出汁巻き卵を作ってきてくれた。
むかしアルバイトで賄いも作っていたことがあるとかで、とても上手で、そしておいしかった。

正直風邪のせいか味がしないと思ったが、それでもなぜかおいしくて、うれしくて、それはまさに私の心の栄養になったのだ。

そしてその日もコーヒーを入れるからと言って引き止めた。
ただ同じ空間にいてほしかった。
もっとたくさん話したかった。
でも彼は帰る時間を決めたら絶対その時間に帰るというような人で、22時になったら「じゃ、これで」と言って去っていった。

ドアが閉まる時はいつもいつもものすごく悲しくなる。
また離れて行ってしまうという感覚。

でもこの感覚はその後に起きたことを思うと正しかったと言える。

そしてホテルに戻った彼から連絡。
「コーヒーありがとうございました」と。
引き止めたのは私なのに、話し相手してくれて感謝していると。

会社とホテルの行き来だけの毎日で、仕事と関係ない話ができただけで気分転換になったと彼は言う。
「またお話しましょう」と。

そして翌日から、私たちは毎日連絡を取る。

こんな異国の辺境の地で出会えた貴重な日本人。

それだけでも特別なのに、たとえ日本にいたとしてもこんなに素敵な人なんて出会うことなどないと思った。

そもそもそんなハイスペックな人と出会うことなど稀だし、ましてや私が好んだ男はクズばかり。
ニート、マザコン、ヒモ、DV……。

学生たちにも「日本の男の人はどうですか?」と聞かれれば
「すべての日本人の男性を知っているわけではないので、自分が接した身近な男性たちだけで言わせてもらうと…クズですね!!!!」と言ってきた。

彼にしても私の自由な生き方は新鮮だったことだろう。
彼の生きている社会にはいないような人間かもしれない。

自分の仕事の世界とは関係ない世界にいるからこそ、気楽に話もできたのだろう。

家族から離れた単身赴任、なかなかなじめないという辺境の地、言葉も通じない中で、出会えた私たちはそれだけでお互いにうれしかったのだ。

だけど本当にそれだけだったのだろうか。

紹介者である元駐在の人だって、ここまで急激に接近したことはなかった。

ツインレイの特徴としては、男性のほうが初めは積極的に女性にアプローチをするそうだ。

アプローチを文字通り「接近」と考えると、確かに最初は彼が私のSNSを見て不調を知り、家まで助けに来てくれた。
その後も毎日彼から連絡が来て体調を心配された。
そしてさらに毎日彼は仕事後必ず連絡してくるようになった。

その時の彼の気持ちはわからない。

でも確かにそうだと言えるのは、会いに来るのも連絡をくれるのも彼のほうからだったということだ。






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