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新型コロナウイルス感染症治療薬候補②プラケニル(ヒドロキシクロロキン)・カレトラ配合錠(ロピナビル・リトナビル)薬剤&臨床試験解説

【この記事は現在進行中の臨床試験を紹介・解説するものであり、特定の医薬品を推奨するものではありません。現在、新型コロナウイルス感染症に有効であるという確かな知見が確立された薬剤はありません。】

今回はプラケニル(成分名:ヒドロキシクロロキン)とカレトラ配合剤(成分名:ロピナビル・リトナビル)の臨床試験について解説していきたいと思います。なお、プラケニルについては成分名のヒドロキシクロロキンの方が一般的に知られている名称のため以降ヒドロキシクロロキンで表記します。

尚、より詳しい臨床試験情報は、下記リンク(臨床研究実施計画・研究概要公開システム)をご参照ください。
https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs031190227
(新型コロナウイルス感染症におけるロピナビル、リトナビル、ヒドロキシクロロキン硫酸塩製剤の3剤併用の有効性、安全性を評価する多施設共同非盲検前向き単群試験)

まず両薬剤の解説を簡単に。
 ヒドロキシクロロキンは抗炎症作用や免疫調節作用を持つ薬剤であり、日本においては難病指定されているエリテマトーデスという疾患の治療薬として承認されています。また海外ではマラリア原虫が引き起こす感染性であるマラリアの治療薬としても使用されています。
 カレトラはウイルスが増殖のために用いるプロテアーゼという酵素の働きを抑制する薬剤であり、HIV感染症の治療薬として用いられています。ロピナビル・リトナビルという二つの成分を一錠に含む配合錠(または内容液)という特徴があります。
 この両薬剤を併用することにより、新型コロナウイルスの増殖と炎症を抑えることができるのかが今回の試験で考察されます。

 さて、本題の臨床試験ですが、「新型コロナウイルス感染症におけるロピナビル、リトナビル、ヒドロキシクロロキン硫酸塩製剤の3剤併用の有効性、安全性を評価する多施設共同非盲検前向き単群試験」という名称となっています。
 試験の対象となるのは、入院している方であり、その中でも37.5度以上の発熱があるか、胸部レントゲンもしくはCTにて肺炎が確認されている方となっています。この試験は既に4/1より開始されており、50名の参加を予定しており、4/30の終了が予定されています。

 この薬剤の有効性は、投与開始日から投与開始10日後の血清中の炎症反応の数値がどれだけ改善したかによって判断され、安全性は投与開始後14日目までの重篤な副作用の発生率とその内訳によって判断されます。
 また、この試験は群馬大学付属病院が主体となって行われますが、群馬県内の他の病院もこの臨床試験に参加しています。

 今回の試験は単群試験という、比較対象として薬剤を服用しないグループを設けないタイプの試験のため、結果にどれくらい薬剤の効果が寄与しているのかがわかりにくいことや、複数の薬剤を併用するため果たしてどちらの薬剤がどれほど効果を示したのかがはっきりしないという懸念があり、今後各薬剤の効果を裏付けるためには更なる臨床試験が必要となってくるのではないかと個人的には考えています。

 しかしながら日本においてこれらの薬剤についての治療結果について、これだけの例数のまとまった報告はないため今後の対コロナ戦略において貴重なデータとなると期待されますので、試験の進行を注意深く見守りたいと思います。

あとがき(用語解説)
・前向き
⇒薬剤を服用することで患者さんの状態がどう変化・改善するかを検証することです。反対の言葉としては、後向きという治療結果から遡ってどのような治療がされていたかを調べ検証するものがありますが、信頼性は前向き>後向きと言えます。