見出し画像

紫波町図書館のトークイベント「夜のとしょかんに出演した話

これまでのあらすじ

岩手県にある紫波町図書館は、ゲストを呼んで「夜のとしょかん」と呼ばれるトークイベントを不定期で開催している。ゲストは地域の人から東京の大学教授、本の著者や仕立て屋さん、農家の方など様々で、僕は都合がつくときは出来るだけお客さんとして参加することにしていた。本を借りるだけでなく、そうした人との巡りあわせを紡いでくれるのがとても楽しい図書館のイベントだ。

今回、図書館と縁があり人気のPodcast《柳下今井のハッシュタグラジオ》より、校閲や本屋「かもめブックス」など幅広く手掛ける柳下恭平さんと、編集とイベント企画会社「ツドイ」などを手掛ける今井雄紀さんがゲストで来てくれることが決定し、その間を取り持ってくれた《もりおかという星で》より菅原茉莉さん、そして《しわりりひやまのどすこいラジオ》を配信している僕が紫波町代表(?)として呼ばれることになった。

紫波町のPodcast事情と図書館

紫波町では感覚的にはPodcastという文化はあまり根付いていない気がしていて、自分がPodcast配信を始めたのも別に自分自身が熱心なヘビーリスナーだったわけではない。もともと(現在確認出来る範囲では)他に《はたらく!ラジオ》と《移住ZINE》という番組が紫波町で先行して配信されていて、その波に乗って始めたわけだったが、思えばその2番組自体が全国的なPodcastの流行に乗っていたのかもしれない。

紫波町図書館の司書さんたちは僕の憧れで、図書館に行くと明るく挨拶してくれるだけでなく、困りごとを伝えると事情に合った本をすぐに見つけてきてくれたりするし、地域の情報なんかも図書館に集まるため、非常に頼りにしている。ただ、やっぱりいつもはあくまで「図書館の司書さん」としての面しか見えていないため、今回は会場設営やゲストのもてなしなど、新しい側面を見られたのは楽しかった。担当司書の竹田さんはいつも図書館の中でお話しするのとはまた違い、僕と一緒に今回のイベントに緊張しているなど、とても人間味があって面白かった。とにかく「負けない」ように励まし経ったのが印象深かった。

当日・会場前まで

みんな忙しくて事前打ち合わせが出来なかったため、当日は開場の1時間半くらい前にゲスト四人が集合。新幹線と電車を乗り継いできた柳下さん・今井さんの二人は、初対面から物腰が柔らかく僕の緊張もかなりほぐれた。柳下さんはニコニコしている方で、司書さんが用意したあらゆるお菓子を美味しい美味しいといってパクパク食べていたし、各地方のお菓子と比較してどう美味いなど話題が広かった。今井さんはそれに比べると落ち着いていて、柳下さんに冷静に突っ込んだりするけれど事前打ち合わせを熱心に行っていた。ハッシュタグラジオを聞いていても思ったが、緩急息の合ったいいコンビだ。
彼らと僕を繋いで司会進行をしてくれる菅原さんもかなり心強い存在で、以前の夜のとしょかんでもゲストのトーク相手として出演していた経験が信頼できるだけでなく、自分が以前遠野に行ったときに初めて話をしたのがまたこんなところで再会するという不思議な縁だった。おそらく本番では彼女がバランスよく話を振ってくれるだろうとは思いつつ、やはりハッシュタグラジオ組の方が知名度は高いし、トークスキルも高いため、主導権を握ってくれることが予想された。なので、自分は比較的菅原さん寄りの「話を聞く側」の立ち位置を心がけつつ、隙をついて紫波町の情報をぶっこんでいく作戦でいこうと決めた。

開場時間が迫り、お客さんより先にゲスト席に着く。いつもはお客さんとして参加しているイベントに、ゲスト側として参加するのは不思議な気分だ。ひそかに「いつかはゲストで呼ばれるくらいになるぞ!」と思っていたのは確かだが、思ったより早いタイミングなのが意外だった。

観客は50名定員、要予約ということだったのだが、さすがに有名な方々をお呼びしてスカスカだと洒落にならないぞということで、今回関わったそれぞれが割と必死に宣伝を行った。結果、前日に満員御礼となり、せっかくなので追加10席程度も募集することになった。そうして集まったお客さんは基本的にゲストの知り合いや図書館ファンの方などで、自分も見知った顔が多くあったのが緊張していたところへの救いだった。所属している情報発信団体「しわりり」のメンバーや(アバターのコスプレで僕より目立っていた。ジェラシー)、前述した紫波町のポッドキャスターに人たち。近くにある高校の先生が生徒を連れてきたりもしてくれていた。

いざイベント開始!

イベントが開始してみると、柳下さんが絶好調だった。なんと司書さんが用意した日本酒を飲みながらのトークとなり、それはもう圧倒されてしまった(笑)。今井さんもそんな柳下さんに慣れているのかスラスラと会話を展開していって、ひやまは前半置物(と一緒にPodcastをやっているタロイモさんがインスタライブで突っ込んできた)だった。ただそこはさすがの菅原さん、要所要所で僕にも話題を振ってくれたので、比較的思ったようなことは喋ることが出来たと思う。ただ校閲とか編集みたいな仕事の話もお客さんは聞きたかろうと思って、前半のその辺の話題は意図的に黙っていた。
トークが後半になり、徐々にハッシュタグラジオの話から紫波町やどすこいラジオの話になってきて、僕も調子が乗ってきた。紫波町のPodcast事情やどすこいラジオの悩みなどを相談することが出来た。

どすこいラジオのお悩みとしては、やはり紫波町の情報に偏っていて、町外から聞く人はほとんどいなかろうということ、一方ででも町外の人にも聞いてもらって紫波町のことを知ってもらいたいし、要するにリスナーを増やすにはどうしたらいいかということ。

そこでもらった回答としては、「今トップのPodcastも実は地方からの配信となっていて、地方からの発信は利点である。また、収録場所の名前を出したり地名なんかを積極的に出すことも、町内にいないけれど地方に所縁のある人たちに刺さりやすい。要するに、無理せず今のままで全然いい」ということだった。友達はそれを聞いて「よかった、どすこいラジオ今のままでいいって!」と感動していたが、個人的には地方からの発信も有効であると確認出来たことや、「固有名詞出してもわからんやろ…」とこれまで避けていたことと逆の方が、引っ掛かりを作りやすいという発見があったのが非常に勇気づけられた。

あとは終了間際で、一言コメント返しみたいなノリで柳下さんがアンケートを消化していったのがさすがにプロの技でびっくりした。何よりそうした事態に臨機応変に対応し、最初時間が押していたはずなのに終了時間ピッタリに終わらせた菅原さんの手腕!とにかく、ゲストのみなさんのプロフェッショナル魂に支えられ、なんとか好評でイベントを終了することが出来た。

終了後の観客との交流

実はここからが重要な話なのだが、今回のイベントを受けて、撤収時間などに観客の反応を知ることが出来た。

・柳下今井さんとファンの方が交流されていた。地方でこういうことが出来  
 るのは非常に貴重な機会だと思う。

・花巻のラジオ局の方が声をかけてくれた。何より、しわりりと近い活動を
 しているということが興味深かった。最近自分が盛岡の方に出向している
 のでなかなか拝聴出来ないが、ぜひ町外の方とも交流して活動を広げてい
 きたい。

・先生が「高校生がPodcastを始めるならどんな番組がいいか」という質問が
 イベント中にあり、柳下今井さんたちは「高校生の今を知れる番組」「例 
 えば今どきの高校生のスマホに入っているアプリを聞いて回るとか、意外
 な発見があるかも」「ただ世間のニュースを高校生がどう思うか話してる
 だけでも、僕たちみたいなおじさんよりずっと人気が出ると思う」など、
 全国的に考えてもかなりウケそうなアドバイスをしていた。僕はまたちょ
 っと視点が違っていて、イベント終了後に伝えたのだが「STSHという高校
 生グループが以前紫波町を取材して回ってたように、高校生が地元のお店
 をレポートするだけでも自分は面白いと思います、地域を知る過程という
 か」という話をした。現状紫波町のPodcast3グループが月、火、水で更新
 しているので、木、金の枠を埋めたら毎日更新じゃん!と思った。

・キノコ大好きキノコ王子(紫波町在住)が聞きに来ていて、菌(金)曜日
 に配信するPodcastを始めても面白いんじゃないかと話していた。また、柳
 下さんがキノコ大好きらしく、終了後も帰る直前までずっと話しかけてい
 て面白かった。

・翌日今井さんが参加された菅原さん所属「もりおかという星で」の発表会
 を見に行くきっかけになった。そちらも刺激的でとても良かった。

終わりに

他にもいろいろ書くことはあったと思うが、とりあえず現状はイベントきっかけにこんな学びや動きがあったということを書いてきた。どすこいラジオとしても、これを機にいろいろチャレンジしてみようと思うことが出来、これからが楽しみだ。改めて、ゲストの方や聞きに来てくれた方、準備をしてくれた司書さんやスタッフのみなさん、お疲れ様でした。

☆配信はInstagramの紫波町図書館アカウントで見ることが出来ます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?