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2万円

 ヘッドホンが欲しい。SONYの MDR-CD900STが欲しい。モニター用で、プロユースとして音響業界などで多々使用されている。有名なところでいうと"THEFIRSTTAKE"だ。閑散とした真っ白なスタジオでこのヘッドホンをカチャっと装着する。プロユースであるも定価18000円くらいだ。家から電気屋が遠く、自転車でも億劫となる距離でなるべく近いところで買いたかった。

 家から10分程のところにSONYのオーディオ機器を取り扱う専門店があり、向かった。しかし、常連しか落ち着かない雰囲気のお店で買えなかった。専門店の後に大型スーパーに併設されている電気屋に向かったが絶望的なラインナップで買えなかった。ここまで無いとヘッドホンを買うなという思し召しなのか。と思ったが、よく行く服屋さんのインスタが更新され、大幅入荷と書いてあり、これはヘッドホンじゃなくて服を買うべきだと思い、その日は終わった。

 次の日、午後から行動を開始した。どんな服が入荷されているか期待しながら向かう。店先に自転車を止め、入店。3階まであって一気に2.3階の商品を確認する。一目惚れする服は見つからず、あっけなく店を後にした。ヘッドホン予算として2万円おろしていたが、服屋でも使えず以前諦めたちょっと遠い電気屋に行くことを決意。

 ほぼ一直線の道のりをぼーっと進む。途中、高校の横を通った時に外に固定のイスとテーブルが置かれたスペースにパティオという名がついていて変なのと思った。後で調べるとスペイン風の中庭という意味らしい。

 大型電気屋に着き、2階のヘッドホンコーナーに行くもここも絶望的なラインナップで帰ろうとすると入れ替わるように丸刈りにした高校生くらいの男の子がやってきて、オーディオテクニカのヘッドホンを手に取っていた。BOSEやないんかいと心で思いつつ店をあとにした。

 結局、2万円を崩すことがなく満たされない心のまま家に帰った。

 夜ご飯を作ろうと思い立ち、スーパーに向かい生姜焼き用の豚肉、煮る用のカボチャ、カットされている大根サラダを持ってレジに行く。641円だった。お札は2万円しかなくここでくずすのかと思って小銭入れを見ると50円2枚、100円5枚、10円4枚、1円は7枚くらいあり、小銭で払えてしまった。

 今も財布に諭吉さんが2人健在している。さすがにここまで崩せないなら口座に戻しておこうと決めた。

チキン南蛮定食をたべます。