第16回書き出し祭り自作語り 4-16「花旦秘華物語 ~後宮で国一番の女優を目指します~」

 小説家になろうで開催された「第16回書き出し祭り」の参加作品「花旦秘華物語 ~後宮で国一番の女優を目指します~」のセルフ解説記事です。

 企画趣旨についての詳細は企画会場をご覧いただくとして、簡単に説明すると「誰の書き出しが一番読者を魅了し、序盤でひきつけられるのか!?」をテーマに、「タイトル・あらすじ・冒頭4000字」のみを作者名を伏せて公開し、読者投票で順位をつける&忌憚ない感想をもらって今後の参考にする……という企画です。あるいは、単発アイディアを放り込んでみるのもアリですね。一次創作者で興味のある方は、ぜひお試しください。次回開催分は10/8よりtwitter上で募集予定とのことです!

 プロアマ混合で行うこちらの企画、実は第1回から参加させていただいておりましたが、今回初めて! 会場&総合1位をいただくことができました。読んで投票してくれた方々にお礼を申し上げるとともに、何を意識して書いたかの備忘録を纏まった形でこちらに投稿しておこうと思ってこちらの生地を執筆しております。

 さて、さっそく拙作の解説や期間中にいただいたご感想への回答に参りましょうか。

タイトルについて
・「花旦」が読めない・分からない
→ですよね。ごめんなさい。
 作者としては「かたんひかものがたり」との読みを想定しておりました。
 意図としては、「漢字の塊で中華ものだと分かってもらえばOK」「副題の後宮+女優の組み合わせで珍しいなと思って欲しい」というものでした。また、書き出し祭りではタイトル→あらすじ→本文と時間を置いて公開していくのですが、タイトル段階で深読みしてくれる方がたくさんいるので、誰か調べてくれるだろうと思ってました。事実、「花旦」の意味を調べて発信してくださった方も何人かいらっしゃったのでとても助かりました。ありがとうございました。
 ちなみに「花旦」は音読みなら「かたん」、ピンインなら「ファダン」と読み、京劇で活発な若い女性の役どころを指します。意味と言い、字面の華やかさと言い、ヒロインのイメージに合うと思ってタイトルに入れました。
 さらにちなみに、書き出し祭りではYouTubeやtwitterのスペースなど、音声媒体で感想を流してくださる方も多くいらっしゃいます。その際、本作は読みに迷われてしまうのも観測しましたので、やはり初見で読めないのはデメリットだな……とは認識しました。万が一書籍化したら表紙等ではルビを振っていただけると良いですね!

・「秘華」は秘めた想いや密偵役を示唆しているのでは!?
→すみません、宝塚モチーフなので単純に「秘密の花園」の意味での命名でした。芝居バカのヒロインなので恋愛要素は今のところ(10万字規模内では)予定していません。読んでいただければ分かるとは思うのですが、「秘華園」という後宮の一角があるんですよ、という点はあらすじにも入れておこうと思いました!

あらすじについて
 ヒロインの心の叫び「女が女を演じて何が悪いのよ!?」は女性読者の共感を呼び・ヒロインの性格を示し・物語の方向性を示すということで好感触のようでした。やったぜ。
 また、最後に「皇帝は華劇嫌い」と述べたことで物語の障害・ドラマ性への期待も持ててもらえたようで良かったです。突っ込まれなかったので自分で言いますが、後宮で歌舞音曲に耽溺するのは暗君ムーブなので仕方ないですね。
 あらすじを公開した後でも恋愛色を期待される声がちらほら見えたので、そう見えないような表現を考えたいですね……あとは作中のヒロインの言動で「そういう子じゃないんだな」と早めに分かっていただくか。女性向けは恋愛への期待圧が強いと感じましたね。

本文について
 ルビの多さ・難解さへのご指摘は覚悟の上だったので問題ないです! 中華もの好きの方にはむしろ雰囲気を好ましく受け取っていただけて良かった、かも……? 企画の規定文字数に合わせるために、主に初出時のみにルビを限定したので、連載時は難読語や独自(というか京劇)用語はすべてルビを振ろうと思いました! また、カクヨムのプレビューで見たところ漢字ルビon漢字はものすごく見づらかったので、極力開いて、ですかね……。読みやすさにも配慮しつつ雰囲気は残しておきたいです。
 個人的な・無駄なこだわりかもしれないのですが、読みづらいと指摘された「日本語とズレのあるルビ」、例えば老公(だんなさま)、翻転(とんぼがえり)、坏女孩(ふりょうむすめ)などは、「これは日本とは異なる文化言語の世界での物語ですが、便宜上日本語に翻訳してお届けしています」という体を演出するために必要な表記だと認識しています。

・漢文すごい
→ありがとうございます。が、DeepLを利用しつた単純な翻訳なので漢詩のような韻はまったく意識していません! すごくないです! 一応、中国語チョトデキルので、機械翻訳結果を見て「このほうが言いたいことに近そうだな……」「ここちょっと変えたほうが格好良いな……」くらいの操作はしております。あと、機械翻訳に突っ込むのは単純な文章で、日本語訳(?)をかなりの意訳にしているので、その辺りも良さげに見える理由かもしれません。

・舞踏の描写が綺麗
→ありがとうございます。当方ヅカオタ・ミュオタのため、これまでの観劇経験が活かされていると思います。(言うのも恥ずかしいくらいの成績・年数ですが競技ダンスとベリーダンスをやったこともあります)また、本作を構想中はYouTubeにて京劇の動画を見まくりました。衣装や演技の描写は本作の肝心なところになりそうなので頑張って勉強を重ねたいです。

・ヒロインが某商業作とほぼ同姓同名だよ
→事前に検索していたのですが上手くヒットせず気付いておりませんでした。大変申し訳ございませんでした。連載時にはヒロイン名を変える予定です。
 今後の反省として、中華ものは漢字二、三文字だと中華料理店、花の品種、酒の銘柄、SNS・投稿サイト各種のHN等々がヒットしてしまうため、フルネームや「+後宮」「+小説」など検索を工夫する必要があると思いました……。

構成について
1.冒頭で世界観を示しつつヒロインの実力を描写する
(この時、漢字&独自用語たっぷりで読者を「分からせる」つもりで)
2.ヒロインの目標「女だけど舞台に立ちたい」を明示
(対抗軸として父親の頑固さも描写)
3.霜烈の登場によって変化・旅立ちを示唆
 ……を意識しておりました。

1.は読者を振り落とすかも……との懸念もありましたが、興味を持ってくれる方も一定いらっしゃったようなので良かったです。「ふだん中華ものは読まないけど読みやすかった」というようなご感想は大変心強かったですね。

また、2.については要は「海賊王に俺はなる!」なので、1話の段階で入れられるのはやっぱり強いんだろうなあ、と。書き出し祭りは過去にも何度も参加しておりまして、さほどの成績は残せていなかったのですが、分かりやすいコンセプトを真っ先に伝える・いわゆるログラインが伝わるようになっていることようになかったのが敗因のひとつだったんだろうな、と……書き出しに大切なことを改めて実感しました。
 もうひとつ、書き出し祭りはキャラを印象付けるのも恐らく大事で、父・梨詩牙のキャラも分かりやすい「頑固おやじ」として好感を持ってもらえたのかな、と思います。「女が舞台に立てない理不尽さを描くなら、父は男旦(おんながた)でも良かったのでは?」と提出してから気付いたのですが、臉譜(くまどり)姿で戟を振り回して追いかけてくる姿が面白すぎるのでこれで良かった気もします。

3.について。物語の冒頭として・1話の引きとして、主人公の状況を示したうえで何か変化が起きる・この後の展開を予想させると良いのかな、と思いました。現代日本に生きている私たちは女優も、女性だけの劇団もごく普通に馴染んでいるのですが、この世界ではそうではないので「女の劇団!?」という発想が驚きに見えるようにここまでで描けていると良かったです。あと、非日常への案内役は美形であって欲しいですね。宦官が美貌を保てるかどうかについての実際のところは無視してロマン重視でお届けしております。また、宦官と言えば黒衣、ということで(ヒロインは知らないけど)中華ものに詳しい読者なら察してもらえるだろうという計算もありました。

その他小ネタ等
 身内に「宝塚が好きなんだから宝塚みたいな話は書かないの?」と言われて思いついたのが本作でした(たぶんそういう意図ではない)。タイトルあらすじの段階で「中華+宝塚やんけ!」と気付かれて作者バレしそう……と思ってたけど意外とそんなこともなかったですね。本文公開後は指摘してくださった方もいらっしゃいましたが。ヒロインが男役だったらまた違ったのかも……?

作中作「梅花蝶《メイファディエ》」は創作です。そういった演目が京劇にある訳ではありません。「こんな民話、中国にありそう~~」で作っております。今後も、中国史等をもとに造った「っぽい」演目を散りばめていこうと思います。今のところ考えているのは「雷照出関《ライジャオチュグァン》」「探秘花《タンミーファ》」とかですね……どんなお話なんでしょうね(´艸`)

女の劇団のリアリティについて。封建社会では異性装による秩序の混乱を警戒する風潮があり、特に女性の男装は陰陽の気を乱すものとして非難される(余興で男装した妃の逸話はありますが、批判的な文脈で語られます)ので現実にはあり得ないですが物語だから良いでしょう。ヒロインは、そういう考えの相手とも対峙することになるかもしれませんね。

今後について
 本作は長編化の上、12月から募集開始のカクヨムコンテストに応募する予定です。その際はどうぞよろしくお願いいたします!!

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