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タンハンター すずめ

彼女は喋る事が出来ない。
ただ黙々と「敵」の「舌」を狩る。
それで呪いが解けると信じているのだ。
それは、哀れな事だと思う。

「この穴だ」
森の奥も奥だ。正直言ってもう帰りたい。
この穴への案内は三度も断ったのに、それでも引き受けたのは、彼女の腕前を信頼したからなのだが…。

「…」
手を細かに動かして何かを伝える。よくわからんが、ここで待てという事だろう。大きく頷く。

彼女の腰には多数の「刃」。脇差ほどの刀が二振。バラバラの形の小刀が多い。鋸刃もある。そして…大鋏。その全てが「敵」を倒す為の武器だ。

「…!」
彼女が背を丸めながら穴に潜ろうとした瞬間。

ジャア!!

危ない!穴から飛び出たのは蛇…それも、穴の大きさと同じ幅、穴の深さが窺い知れるほどの長さ…左右に四対の腕…人の顔…!「妖怪」!

彼女の目が光る。悲しげに。否、嬉しげに?
妖怪が舌を出す…彼女も…「舌切りのすずめ」も…無残に切れた舌を出す…笑うように。

【続く】

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