トリックオアトリイト

この時期になると思い出す。
奴の名は「トリイト」
遂に奴を逮捕することは叶わなかった。
逮捕されるほどの犯罪はしてないからだ。
奴のやることなすこと全てが「いたずら」止まりだった。
勿論、迷惑防止条例とかで逮捕も可能だったろう。
だが…奴がしたことは大抵、驚かし程度だったり、物が勝手に動いたり。
どれもこれも「いたずら」なんだ。それも手の込んだトリックを使った。

時には、大胆にも有力な政治家とか警察幹部なんかを相手に「いたずら」を仕掛ける。
そして…そんな「いたずら」に掛かるのは「きな臭い」連中ばかり。

昔で言う「義賊」なんだろう。だが、俺から見れば字面どおりの「愉快犯」だ。
いつも楽しそうに笑っていた…。
その笑顔は嫌いではない。

そう、あれは今夜のように、月がまんまるな夜だった。

Trick 01 風船の城

街が橙と白と黒に染まる。もうじきハロウィンだ。人々は浮かれている。俺もだ。
来年には息子が入学だ。浮かれもするさ。

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