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どたばた引っ越し物語 その② あれ、新居に電気がきてない…

快晴で湿度の低い絶好の引っ越し日和。予定時間通りにアリさんたちがやってきた。屈強な働き部隊アリさんと司令塔の細いおじさんアリさん、紅一点のアリさんは女王アリで見守り役かと思いきや、大量の緩衝材を巻いたり解いたり忙しく動いている。

今回は、2拠点への引越しだ。まずは1か所目の荷物搬出。引っ越し屋さんは荷物を1か所目の引越し先に降ろして、再度戻って2か所目の荷物搬出。翌日に2か所目の引越し先に荷物を運んでもらうという手順。

言っておくけど、同時に2か所の引越しなんてするもんじゃない。相当疲れるわ。

荷物が運び出されていくのを横目に、わたしはご近所へ挨拶周り。
こんなぎりぎりになってもうしわけない。だってお留守だったんだもん。という言い訳を考えてお菓子を持って行ったけれど、やはりこの時もお隣は留守だった。
仕方がないので、メッセージを書いた。忙しいのにい、と思いながらも、ちゃんと文例を調べてしまったりして、わたしの優先順位はどうなっているんだ。

***

夫は荷物の搬出後のガス屋さんの立ち合いや、空っぽになった家を最後にきれいにする担当。そしてわたしは、引っ越し先に先回りして、トラックを出迎える担当。

新しい引っ越し先は、地下鉄で2駅のところ。そんな近くなら引っ越さなくてもよかったのでは、と思うけれど、そこは金銭的な問題があるので仕方ない。急いでそちらへ向かう。
今まで7年間住んだマンションとはお別れなのだけれど、感傷に浸る暇はなかった。

***

新居のマンションに着いた。
最初にするのは、ブレーカーを上げて、電気をつけること。

しかし、ブレーカーを上げたのに、電気がつかない。
いくつか並んでいるスイッチを上げたり下げたり、順番を変えてみたり。パズルのようにスイッチを上げ下げするがどうやってもダメ。

「引っ越し先で電気がつかないとき」というサイトを見てもダメ。

夫に電話して聞いてみても、当然ながらダメ。

高い場所にあるスイッチをモップの柄で上げ下げしているので、名実ともにお手上げ状態。

そうこうしているうちに、アリさんが到着した。着々と荷物が運びこまれていく。
「電気つけてもらえますか?」
そりゃそうだ、暗い場所もあるし、冷蔵庫とかの電化製品もあるし。つけたい、わたしもつけたいのだ。けれどつかないの。

「ここがブレーカーで合ってますよね?」わたしはおずおずと聞いてみた。引っ越し屋さんに余計なことを聞くのは憚られたけれどしょうがない。頼れる人はあなただけ。

「あー、そうですね。つかないっすね。」淡々と答えて、荷物運びに戻るアリさん。わたしも再度、電気をつけるすべをスマホに問い続ける。

わたしの眉間のシワは深く深くなっていたと思う。初めのうち、「これはどこに置きます?」と丁寧に一つずつ聞いてくれていたアリさんは、「これはこっちに置きますね」と事後承諾っぽくなっていった。申し訳ない。いっぱいいっぱいで、返事も上の空。
結局、部屋のレイアウトはアリさんが考えてくれたようなものだ。ばっちりです。ありがとうございました。

***

アリさんが去った後、段ボールの山に囲まれながら、わたしが考えるべきは電気のことだけではないことに気づいた。

この後、洗濯機がやってるのだ。

この古い(よく言えばヴィンテージの)マンションには、洗濯物を外から見えるところに干してはいけないというルールがある。故にベランダで干すのも禁止。
その代わり、屋上に干してもいいよ、ということで、ドラマの最後に一悶着あった医者と看護師が語り合うようなスペースがあって素敵なのだけど。毎日、素敵なドラマごっこをやるのもそれはそれでしんどいであろう。

やはり、乾燥までがっつりやってくれる洗濯機が欲しい。ということで、新しく購入した洗濯機様がやってくるのだ。

洗濯機様のお通りする道を確保しなければ。
わたしはきれいに積んでもらった段ボールの山を移動していった。
通り道ができても、実際に置けるか、水道がちゃんとつながるかといった問題もあるのだけれど、そこはプロに任せる。
わたしはできる限りのことをして、洗濯機様を待った。

***

洗濯機様がやってきた。
洗濯機様の巨大な箱は、ようやく部屋のドアを通り抜けてて、浴室の手前に鎮座ましました。
さて、その箱を開ける前に、設置が可能かどうかの見極めが始まった。何せ、古いマンションなので、洗濯機置き場はかなりこじんまりとしているのだ。水道の蛇口の位置もかなり低い。買う時にその辺りをまったく気にしなかったのが悔やまれる。

プロ達がああだこうだ言い合っている間、ドキドキしっぱなしだった。
そして結論が出た。ホースを変えればギリギリ可能とのこと。

「別料金かかりますけど、どうしますか?箱を開けちゃうとキャンセルできなくなります。」

そりゃ、「お願いします!」の一択だ。
この洗濯乾燥機が、120kg以上もあることを偶然知ってしまったのだ。この部屋までに着くまでには階段もあった。キャンセルするので持って帰ってください、なんてことは言えない。
もちろん、いろいろ吟味して選んだ機種だということもある。サイズのことは頭から抜けてたけど。それを最初からやり直すなんて、・・・イヤ。

そんなわけで、洗濯機はかなり存在感をアピールしながら、無事に設置された。

「電気が通ってないんで、試運転はできません。」
ですよね。仕方ないです。

・・・

段々と、日が傾いてきた。
電気はこない。しかし、ガスは…、そう次なるお客様はガス屋さん。

続く。









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