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【ベガスの物語】6話:歴戦の勇者たちと

なんとなく実務はこなせるようになってきたベガスであったが、クリシュからの期待値は実務をこなせることではなく、もっともっと組織にインパクトを!ということであった。頭では理解しているものの、工場での生活に忙殺されつつあったベガスには一歩俯瞰して自分を見つめなおす余裕もなく、あっという間に時間は過ぎて行った。秋ごろになると、徐々に慣れてきて少しずつ直接の上司であるTさんが回していた仕事を引き受けるようになっていった

Tさん、Kさん

Tさんは、ベガスの入社した外資系の会社が買収した会社に新入社員として入ってからすでに35年たっていた歴戦の勇者であった。その間に何社か親会社が変わったということもあり、なんというかどしっと構えつつ、パソコンを人差し指でなんとか使いこなしている状況で、どちらかというと電話で指示をしながら、経験値でお仕事していた。

決して出来ないということではなく、まさに重鎮として工場に君臨しており、生え抜きからも買収先から送り込まれたメンバーでさえも一目、二目おかれた存在であった。

そのTさんが一目置く存在なのが、Tさんと同じく生え抜きで本社で勤務するKさんであった。慶應ボーイの前評判とは裏腹になんともねちっこい印象であった。

Kさんからの千本ノック

毎月Tさんが主宰していた、本社と工場をつなぐ月次会議、その名をPS Review、と言った。本社でのS&OP会議、第五編でMRP2の内容のキャパシティと必要数量を調整する会議に向けて、工場における主要な指標の最新の状況、特にキャパシティの部分を本社に報告するのが主な目的の会議であった。

Tさんから引き継ぐ形で秋ごろからベガスが会議の主催者として、アジェンダの作成、司会、そして会議とにミニッツまで共有して終わりということであった。日本人だけしか参加しない会議であったが、その当時から社内公用語が英語であったため、毎回緊張の面持ちでなんとか会議を進行していたが、Kさんが毎回癖のある形であった。工場における主要な生産ラインの生産見込みや前提条件を資料で提出し、その内容を会議にて説明するたびに、前提条件が甘い。以前はこうやっていた、などとかなり厳しい意見をぶつけてきていた。

Tさんは英語があまり得意でないということもあり、会議の中ではだんまりを決めている。といった状況であったため、ベガスはKさんに毎回コテンパンにやられて会議を終え、クリシュに情けない。。。と言われしまう月次会議であった。

後で振り返ると、Kさんの後進を育てよう!という気持ちにあふれた確認や質問の数々であり、後々のベガスにとって大変有意義な会議の一つであった。Kさんだったらこういう風に言うかなとか、参考に出来うる実践の質問の金言の数々は大きな財産となった。

一方で、当時のベガスにとっては、月に一度へこむことが確定している大変厄介な会議であり、工場のことを熟知していたうえで、本社で勤務するKさんは、目の上のたんこぶというか、ストレスの根源であった。。。

本社でのランチを境目に

何回かコテンパンにやられた後に、たまたまPS Reviewの会議の前後に本社でのトレーニングが入っている月があった。Tさんと相談して、たまには本社の空気吸いながらPS Reviewに参加してみ!ということになり、ただでさえお腹が痛くなりそうな会議を、Kさんのおひざ元で一緒に会議に参加することとなった。

同じ会社ながら、それまであったことがなかったKさんと本社の会議室で会ったときは緊張しすぎて、ベガスはほとんどその日のことを覚えていなかった。

会議を何とか終えた後に、みんなで社員食堂にてランチをということになりランチにてよりしっかりと、新入社員のベガスです。と自己紹介してからなんとなくよい雰囲気になった。おー、もう三〇年ほど前のことなんで忘れてもうたけど、最近の新入社員は英語しゃべれんのか!とか、東京出身なのか!とか、気さくに話していただいたことは、とても強く印象に残っていた。

このランチを境目に、生産管理のイロハを実践を通じて会得していたKさんのベガスへの接し方が少し変わった。PS reviewのPre-readを出した後に電話もらって事前に確認してくれたり、個々の数字変だから確認しておいた方がいいよ。そして事後にもここはこういう風にサマリー書いておいたらいいよなど、みっちりと教えていただけるようになった。

当のベガスからすると、千本ノックを受けている最中であり、全くありがたみを感じるどころか、以前胃の痛くなるような月一の行事であったが、後々振り返ると、ベガスが方を学んだ一つのプロセスかもしれないなと思う。

一年生の学び

ベガスはこのランチをきっかけに、少しずつPS Reviewの感覚と本社の人たちが何を欲しているか、どんな事前のリスクを本社として受け取って、ビジネスを履行する人たちに伝えるか。はたまたビジネスを支えるサプライチェーンとは?など、様々な学びを得ることになった。

ただ月一回の工場の外である本社との会議における、アジェンダ作り、プレリードのとりまとめと共有。サマリーをしっかり書いて、フォローアップを5W1H(What , Who, by When)までしっかりと書き終えて、次の会議までに進捗をしっかりモニターする。そして意思決定する上で本社と工場のリーダーの同行を目の前で学ぶ。このかけがえのない経験を一年目でしっかりと見れたことはとても大きな出来事で、工場の外の世界をしっかりと見定めてキャリアを作っていく上での礎となった。

また、本社でのKさんとのランチは、ベガスにとって足を使うことの重要性を、身を持って体感する機会となった。メールよりも電話。電話よりもウェブ会議(今の時代は)。ウェブ会議よりもFace to Faceがよりお互いを知るうえで効果的。そして、特に初対面、相手のことをよく知らないうちはFace to faceの機会を持つことで、円滑に物事が進むことが多い。こんなことを一年目のベガスは学んで行ったのであった。

次回はベガスの一年目の総括をつづってみたいと思います。

新入社員編の五編までは下記を参照ください↓

自己紹介編