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【ベガスの物語】5話:MRP2の一部である工場

上司のクリシュとの濃い2ヶ月のおかげで、様々な部署を経験するだけではなく、Lean to Teach、人に教えられるレベルまで学んだベガスは、少々緊張しながらもオリエンテーションの最終日に挑んだ。工場のリーダーシップへのプレゼンテーションにて、学びと提言をしっかり話す予定であったが、結果はまさかの途中で打ち切りとなってしまった。人事の前野のフィードバックなど、支えてくれるメンバーもいて、なんとか新入社員としての実務を始めたのは、湖畔でも水着で日光浴をする人がちらほら現れる初夏であった。

MPS/MRP担当Planner

クリシュの元で社会人をスタートし、オリエンテーションを一通り終えたベガスは、チームの元に戻って実務をスタートした。何度か親会社が変わったなかでも、生え抜きとして計画系のチームを引っ張り続けてきた、Tさんのもとで、最初の役割として受けたのが生産計画担当および原材料調達担当であった。チームは化粧品の中でも、SKU(製品)の数が多く、細やかな俊敏性が求められるカラーコスメティクスであった。

MPS:Master Production Schedule:要は化粧品工場における生産ライン(充填工程以降)で、何をいつ、何個作るかを計画する役割。
MRP: Material Requirement Planning:上記MPSを過不足なく履行するために、必要となる資材および製造(中身を作る工程)を過不足無く発注する業務

なるべくベガスの経験のないものを、かつ少量多品種のサプライチェーンにおいて、計画系の役割は重要なのかなと考えて、化粧品事業部!と希望を出していたが、本当に担当することになるとは思ってもいなかったベガスであった。

ファンデーションやマスカラなど、まずはオリエンテーションで仲良くなった現場に通いながら、計画している製品、資材とPCの中での情報と照合しながらのスタートであった。

プランナーとしてのOut putは何か?

ベガスが社会人生活を始めたころに、丁度ロータス社のNotesから、MicrosoftのOfficeに置き換わり、既にMPS/MRPもSAPを通じて実務を履行している環境であった。上長であるTさんから日々話を聞く限り、昔は模造紙のような大きな紙で、職人技で生産計画を立てていたころからすると、どこか味気ない作業、黙々とPCに向かって、Exception message(注意喚起をツールが促してくれる仕組み)やマスターデータの変更(新規資材や、新製品、BOM、レシピなどなど)に終始しており、一体全体何故この仕事が必要なのか、どのような観点で事業部に貢献しているかなどは、さっぱりイメージのわかないものであった。

おまけに、ベガスと同様にプランナーとして他にいたメンバーは違う製品を担当しており、Tさんからはひそかにベガスに対して、どうやったら1人プランナーを減らせるか考えながら実務をしたらよいか?というお題をもらってた。

近視眼的

マスターデータの多さや製品の特性をなんとなくしながら、恐る恐るPCとにらめっこする日々を数週間経験した。週次のプランニングサイクルで動いているチームの中で、各曜日で履行しなければいけないこと、毎日日履行すること。新製品のマスターデータの設定等、アドホックで設定するものなど徐々に掴んでいった。

2か月目に入ったころ、Tさんからもらっていたお題を深く考えてみることにした。その時に思ったのは、人を少なくするためには、工数を少なくする。工数を少なくするためにはルーティーンで履行しているタスクを少なくする。よって、日次のタスクを隔日に、週次の物を2週間に一度になど徐々に手を抜こうか迷い、ひいては週次のタスクであった資材の発注業務を1月分全て1週間で発注してみた。

すると、発注金額が通常週の数倍になり、Tさんから大丈夫?と問い合わせをもらった。ベガスははい!と満面の笑顔で答えたがここから数週間が大変であった。。。

1週目は特に何事もなく過ぎたが、2週目になると緊急手配する資材がちらほらあらわれ、3週目になると現場のライン長から変更ばかりで人員手配がままならない旨をおしかりを受け、4週目ともなるとMPS,生産プランはほぼ全て見直し、合わせてMRP、資材を調整必要となった。

ベガスは、サプライチェーンの俊敏性、特に予測精度に柔軟に対応する力を見誤った結果、多大な労力が必要になっただけではなく、現場や資材を供給いただくサプライヤーさんに大きな迷惑をかけることとなった。

サプライチェーンにおける仕組み:MRP2

クリシュと学びをリキャップする中で、オリエンテーションの中でしっかり学んだはずであった結局サプライチェーンという名の通り、双方向のやり取りによって、最終的に消費者に価値が提供される。

タイムラグや機会損失、過剰在庫、ひいては不要なものをなるべく排除する仕組みが、Manufacturing Resource Planning、日本語では生産資源計画という。下記定義によるMRP2の部分で、単純に資材計画ではなく、人員を含むラインにおけるキャパシティ(製造能力)や、生産計画の上流にある需要予測などを含んだ仕組みである。

MRP2とは、「Manufacturing Resource Planning」の略で、MRPで管理していた材料や部品に加えて、費用や人員、設備までカバーして算出するシステムです。日本では「生産資源計画」と呼ばれています。在庫管理の概念をほかの業務に取り入れよう、という動きが活発化した1980年代に生まれました。
参照:https://www.robot-befriend.com/blog/mrp/
画像1参照:https://viennaadvantage.com/blog/technologies/difference-between-erp-and-mrp/

ベガスはまさにMRP2の真っただ中で、ただ工数を削減する!という目標を与えられていたが、サプライチェーン全体を管理する仕組みであるMRP2の中で、工数のみに着眼してしまったための学びとなった。

仕組みを机上で学ぶことはした上で、実践に投入されていたが当時のベガスはまだまだ机上の理論を実務に落とし込める状態にはなかったが、大事には至らない中でも大きな学びとなった。


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