見出し画像

【ベガスの物語】7話:ビジネスとサプライチェーンと

プロセスだけではなく、会ってみることで生まれるソフトな関係性などもベガスは学んでいる日々の中で季節はあっという間に秋を過ぎて冬へ。その頃のベガスはある程度担当する実務だけではなく、チームリーダーであるTさんの領域まで少しつづ手が回るようになり、チームリーダーに少しづつ近づいているような気がしていた。

方針管理・目標管理

新入社員として入社したのですでに指針がある状態でがむしゃらに動いていたが冬から方針管理の時期。3ヶ年計画を更新する時期がやってきた。といっても、新しく作り上げる類のものではなくベガスの入った会社にはしっかりとした独自の仕組みがあった。

日本語で言うと何だろう?とTさんに質問すると、方針管理やな。とあっさりと返ってくるあたりが、流石に碍子の流儀を知りつつしっかりと日本で育ったレジェンドTさんならではと感心しっぱなしであった。

ベガスの会社では、しっかりと事業部の方針が末端である製造工場及び工場で働くメンバーにも展開される仕組みがあった。しかも生半可なものではなく、どの階層においてもしっかりと上位の指標が達成されるべく、各メンバーの優先順位づけまでなされており、おまけにほぼ全てのメンバーが大変わかりやすい目標数値で管理されており、余すところなく(経営者の視点でいくと、しっかりと末端まで管理された状態)会計年度がスタートする体勢が整っていた。

文章にすると本当にシンプル極まりないが、上記で述べていることを達成するには下記の前提が必要となる:

1) 事業部が売り上げ及び利益に対するしっかりとした事業推進における指標を明確化している。例えば、事業部のOutputの指標である、売り上げを最大化させるにはA) 客数 B)客単価  C)新規顧客数 D)リピート率 etc etc のInprocessとなる指標があること。
2) 上記のInprocessとなる指標において、しっかりとした数字の根拠があること(モデル化されていること) 売り上げをX%上げるには、A)でいくとY人などなど
3)さらに、A)に対しても同様にY 人を獲得するためにはa) チャネル1でA人獲得 etc etcと細分化されて樹木図的な感じに繋がっていく
4) 上記が事業部を構成する各部、営業は売り上げに関する指標の中でお取引先に関する指標を、マーケティングは消費者に関する指標を、生産部隊は生産性やキャッシュフローなどと部署ごとに細分化されて指標となり、さらにOutput, Inprocessの関係性が数珠つなぎのように細分化されていること
5) 単年ではなく最低3ヶ年程度を作るノウハウがあり、もちろん新規商材がいつごろ入ってくるか。その売り上げや利益貢献、及びカニばりの見込みなど中期的なビジネスプランがしっかりとあること

トップダウンかボトムアップか

上記の方針管理に沿って、工場においてもPQCDSMと分別している大きな項目に分けてしっかりと目標数値が展開される仕組みを履行するのが冬から春にかけての大きなサイクルであった。基本的にはトップダウンで降りてきた数字に対して事前に準備していあった中期計画を見直す、もしくはビジネスの新規優先項目から来るような新たな優先順位に関しては、知恵を絞ってプランを練るのが大きな流れである。

工場にいてもしっかりとビジネスの話から始まり、売り上げをどの国で撮っていこうと思っている。故に利益率が少々心許ないので、生産部隊(の中に位置付けられている工場)に期待しているのは欠品から来る売り上げの機会損失よりか、直接的な経費を削減すること!ぐらいの大きな状況を俯瞰した上で、では生産計画を立案するグループとしては、どのような優先順位で組織を動かしていこうか(これがクリシュがになっている視点)。Tさんと一緒にベガスは、チームの生産性を上げるべく、生産計画を1ヶ月ごとに立てるのではなく(苦笑い)どのようにより効率を上げて生産計画を立てるか、もしくは計画見直しをいかに少なくするかなど、現状指標を見ながら重要指標の見直し、目標数値の落とし込みなどを数週間かけて行うのであった。

ベガスのチームのレベルでは、正直事業部全体の売り上げ目標や利益率にどのように貢献できるかなどは、聞いたところで実感わかないレベルであったが、もう少し視座が上がりクリシュのレベル感になってくると、かなり貢献している感じはしていたのではないかと、振り返って思う。

ここで重要になるのがあくまでもやること(HOW)がありきで次の年度のプランを立てていくのではなく、しっかりとビジネスの方針に沿った形でトップダウンで降りてくる優先順位を履行するための仕組みを体感していたのであった。後にクリシュが原材料を供給しているサプライヤーさんとの改善業務につくにあたり、特に自動車業界でボトムアップで改善が進んだ結果、事業部の効率が良くなる(著者私見)とは大きく組織の運営方法が違うことを知ることになる。

3ヶ年計画を出し続ける上での秘訣:最初から出しすぎない

チームに目を向けてみると、毎年のように3ヶ年を更新しつつ結局は単年の数字をどれだけ出すかに組織として躍起になるあたりは年中行事になっていた。ベガスにとっては初めての!であるため、かなり気合入れて来年度は頑張るぞーとなっていたが、他のメンバーを見ると異動前にガッツリ結果出しておこう!、役割変わったとこなので来年度しっかり数字出していくぞ!と言う心意気の人もいれば、いったんゆっくり目にしてと言う人まで多岐にわたっていた。ある程度経験を積んでいる人は3年で数字は見せつつ、単年の数字を盛り過ぎるとターゲットとなる指標がより厳しいものになるために、ある程度改善できる場所があるものの最初は様子見と言ったところで、2回目の提出ぐらいの時にある程度固めて、3回目の提出で最終の数字を出す!と言ったように、コントロールしながら機会点や改善案などを出していた。

ベガスが出し惜しみなどせず最初からありったけ機会てんと改善案などをもりもりに盛り込んだプランを持っていったため、またもTさんから温かいご指導いただき、クリシュに提出する数字は8がけで最初の提出を終え、もう少しでないのか?と言う2回目になって、残りの20%を上乗せして、ことなきを得たのであった。

もちろん数字の見せ方も重要な要素であるが、ここまでしっかりと方針管理がなされている場合にもう一つ重要なのが、新規性であった。毎年恒例の行事となっているため、常に課題や先のことを考え続ける良い仕組みではあるものの、出し方や見せ方を間違うとただの継続に見えてしまうため、より新しい視点で改善点を見つけた結果、より大きな効果が見込めます。などの新しい視点、手法を用いて、そしてその新しい指標が業界の最先端であるとか、事業部の追い求める優先順位に合致するなどの、新規性の視点がかなり重要であった。

Windows Media Playerで動画作成する中での学び

方針管理終盤になると、ベガスはクリシュから今年の方針管理を何らかの手法で綺麗にまとめたいんだけど。と言う話をもらった。まだインターネットの速度もかなり遅い時代であったが、新規性!と言う意味で何か発信したのかなと感じとったベガスは、パワポにまとめてと言うことではなく動画作ってみたらどうか?と提案した。

たまたまマーケティング部に配属された同期が、上司のフェアウェルにて動画をCM風に作成して流していたのをみて、作ってみようかなと考えたのであった。何か動画編集ソフト入れてみたらできるのではと安易に考えていたのであったが、経費が即利益に直結する工場にて1円たりとも追加の出費をお願いすることはできずじまいであった。かなり試行錯誤しながら、何とかパワーポイントで作った資料をjpgにし、Media playerで編集することを繰り返し、クリシュのOutputである、生産計画部隊の指標をダイジェストでまとめるところから初め、その後にクリシュ下の各グループの要点をまとめる建て付けで3分ほどの動画にした。

クリシュに見せると、音楽を!と言うのと、さらに上位である事業部の優先順位とどうクリシュの指標が結びつくのか。そして受け手に何を持って帰って欲しいのか?など結構なフィードバックであった。さらに試行錯誤し、DEPAPEPEの爽やかな曲をバックに入れ、音楽のキリが良いところでスライドを変えるなど試行錯誤を繰り返し何とかクリシュの期待に応えることができた。

後日談ではあるが、クリシュの狙いとしては方針管理のまとめを通じて、クリシュの視点で何を達成しているのか?どのような優先順位を持っているのか。ベガスのいるグループ以外のグループの主要な指標、及び優先順位をまとめること。ひいては要点をしっかりと確認する作業を通じてしっかりとビジネスと工場のつながり及び上位の視座をかなり早いタイミングで叩き込んでもらうことであったのだ。ベガスはこの後に待ち受ける突然の上司の変更、職責の変更の数々を経ても新入社員にここまで考えてタスクを渡せる自信はなく、改めて最初の上司がクリシュであったことに感謝の気持ちでいっぱいになる。(この時のベガスは、ただついていくのに必死で考えもつかないことであったが)