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「アイに夢を」ミュージックビデオ・作曲の裏話

 こんにちは、ボカロP・ミュージシャンVtuberのぼいどすです。今回は現在の私に出来る全てを詰め込んだオリジナル曲「アイに夢を」の作曲過程をメモ的に書いてみたいと思います。
 この曲のミュージックビデオでは全編VRChatによる「動く映像」での動画としました。この曲を書く少し前に、ボカロPやってるけどMV作るたびに赤字になるというのがバズ(炎上?)っていて、それならば、というわけじゃないですが、私としては凝りに凝ったMV作ってみたくなったという面もあります。また、かなり苦労した曲なので、MVもそれなりに観れるものにしたいという気持ちもありました。いつもはほぼ紙芝居みたいな止め絵のMVなんですけど、動画ですからやっぱり動いたほうがいいなと普段思いつつも、完全動画は制作カロリー高いから避けていたのですが・・。
 そして映像についてはど素人なので、その道の方には詰めが甘すぎるとかそういうツッコミどころは沢山あると思います。

 また、出演してくださった、甘野氷さんorbi子さん主任さんに改めて感謝申し上げます。


劇中劇のMV

 歌詞を追わず映像を眺めてるだけでもなんとか見られるものを作ったつもりです。以下は細かな世界観の設定。

映像のシナリオ

 氷さんorbi子さんの演技による女学生二人の物語です。二人の出会い、日常、トラブルとそこからの回復、別れという大まかな内容です。もう少し凝った流れになっても良かったかなと思いつつも、なんとなく映像と歌詞が部分的にシンクロする度合いはこのぐらいでちょうどよかったのかな?と。
 このシナリオの原案も氷さんに考えてもらったもので、2022年のねむさんの企画に参加していた、甘野氷さんが出されていたストーリー仕立てのMVが、とても胸に来るものでした。こういうアイディアを使わせてもらいたかったのです。
 映像では一瞬歌詞と演者の動きがシンクロしている感ありますが、女学生二人が何度も歌っている曲が「アイに夢を」という曲という劇中劇のような入れ子構造です。こんなふうにこの曲が好まれたらいいなという思いもあります。
 シナリオの詳細は、転校してきた少女が、見慣れぬ街で不安や寂しさを抱えるなか(雨のシーンでそれを表現)、歌うことが大好きな女の子に出会います。思い切って話しかけてみるものの、驚いて逃げてしまいますが、後に自ら話しかけにいきます。その後二人は一緒に過ごす時間が長くなり、放課後の教室で歌うときも共に過ごします。ある日、歌が好きな少女に会いにいくも、いつもの教室はおろか学校のどこにもいません。映像には出来なかった出来事ですが、この歌が好きな少女は歌のコンテストに応募を何度も試みるものの、思わしい結果を得られないでいました。それでもめげずに参加するも、手応えのあったコンテストでの落選通知(のスマホ画面とか用意したかった)。転校してきた少女は「それでもまた歌を聴きたい」と彼女に伝えます。そうして二人で歌うようになりますが、少女はまた転校という別れで物語は終わります。

VRChatで撮影

 VRChatはバーチャル空間上でアバターでもってコミュニケーションするSNSなのですが、天候に左右されない絵が撮れるなどリアルでの撮影にはできないなどのVRならではの利点もあります。VRの様々な背景(ワールド)の選択も、普段知っているストックが無いと探すのが地味に大変です。
 おおまかなシナリオが出来たところで、どのシーンをどのワールドで撮影するか・・ロケハンしながら決めていきましたが、もしこのnoteみていて参考にされたいという方が居ましたら1点だけ強くおすすめしておきたいことがあります。ロケハンでワールド回る際にできればOBSのカメラを回したりして映り込みとかを確認し、さらに可能であれば1名同行者がいるとバミリやすいです。カメラを回してみて実際に気づくことが多いので、起動しておくといいでしょう。
 また、場所の選択と撮影のシーン管理が一番大変でした。場所と必要なシーンのチェックリストの準備と、撮影日当日はチェックリストを埋めながらの撮影です。撮影自体は休憩入れてなんとか2時間で撮影できました。
 と、偉そうなことを書きましたが、この曲では自分で書いたシナリオが未完成のまま撮影に挑みました。なんとか使いまわせるシーンが幾つかあったのと、最初の電車内で一人の絵をもう一回ラストに持ってくると、物語を別れて締められることに気づけたのは動画編集中のことです。お二人にも撮れ高不足であったら再度撮影という話もしていましたが、仕事でだったらこういう危なっかしい進行は出来ないですね😥。
 またシナリオを考えるにあたっても、アイディアではこういうの欲しいというのがあっても、現状すぐには用意できない・実現が難しいものもあったりして、なるべく既存のもので表現できるよう落とし込むのもかなりカロリー使いました。ボツになってしまいましたが、実写で、店頭でソフトウェアのパッケージを手に取るシーンを使う案考えていました。

歌詞について

コンセプト・世界観

 多くのボカロPは歌にそれぞれの思いを込めて発表していると思います。そういったのを可視化というか、擬人化させて、人格感(?)を持った、AIきりたんと可不ちゃんの出会いの曲です。1番はきりたん視点、2番は可不ちゃん視点の色合いを強くしました。そのため、1番2番はサビでのハモリを無しとしました。

歌詞解説

 全部だととんでもなく長くなりそうなので一部だけ。裏の意味なども。

あの日君は突然に 不思議な名前とともに
季節外れの花 風に揺れていた

 きりたん視点の可不ちゃんについての第一印象の出だしです。季節外れの花というのは、オリジナル曲「リコリスの空」(AIきりたん)を2022年11月に発表し、1月に音楽的同位体 可不を導入、クセなどを見るために同曲を可不ちゃんに歌ってもらい、2023年2月1日にアップロードしました。いずれにしても彼岸花の季節(お盆過ぎ)じゃないです。そして歌詞を書くのは・・アイディア出しが苦手なので、周囲のネタはどんどん拾っていきます。

不器用かもしれないけどここから始めよう

 NEUTRINOはCeVIOと比較するとアクセスできるパラメーターが少ないところを不器用としてみました。AIきりたんって基本的には強めの歌唱が得意ですからね。

同じ夢見ているはずさ僕ら今 喜びや悲しみも全部

 夢は本来の意味以外にも、曲だとか、ボカロPが歌声合成にこめる想いなども含めています。なので、その後に「喜びや悲しみ~」と、様々な曲があるという下りです。

ここは一体どこだろう?不思議な景色だった
気がつけば誰かの歌が聞こえてきた

 ウチの自宅作業場(スタジオとはお世辞にも言えない・・)のことで、誰かの歌というのはきりたんです。

元気すぎた印象と 影落とした余韻
私達はどうやらAI(愛)というものらしい 

 こちらは可不ちゃんからみたきりたんの第一印象のイメージです。きりたんの強さってただ強いだけでは無いなと思っています。
 お迎え、開封の儀、起動して目覚めたばかりなのか、AI(エーアイ)をアイと読み違えている、という設定です。また、多くのボカロPはそれぞれ自分の歌声合成ソフトをそれぞれの形で愛しているだろうな、という意味も込めています。そういうこともあり、曲名を「アイに夢を」としました。
 ちなみに、さいごの「らしい」からサビのメロディーに入ってしまいます。こういうイレギュラー好きなんですよ。

最初はぎごちないかもしれないけれど ここから始めるメロディー

 完全に私が悪いのですけど、いまだ可不ちゃんの調声をつかみきれてないです。なので「ぎごちない」。また、「メロディー」も先程と同じく歌詞の最後部が次のメロディーに乗ります。

同じ風を感じてる僕ら今 喜びや悲しみも全部
これから始める物語の名前はまだ無いけれど
二人歩き出す道の遠くまで 「つなぐ手を離さないで」
夜が明けてく僕は君へと手を伸ばした

つないだ手離さぬように 強く強く握りしめた
少しの不安と大げさすぎる未来のエピソードだけど
希望や絶望ごちゃ混ぜの 君の歌が大好きだよ ラララ・・・
明日もまたね、聴かせてほしいな(聴かせてくれるかな)

 最後のラストのサビの繰り返し部分です。1番2番の歌詞を一部変えたりなどをしています。変えないほうが1回作って使いまわしできるのですが、がっちり聞いてくれる人が「お?」と思えるのを目指しました。
 前半最後の「手を伸ばした」から「繋いだ手離さぬように」という流れ、個人的にはよく出来たなと思っています。

作曲について

この曲を作ろうと思った経緯

 今(2023/09/2時点)アルバム制作に向けて準備を進めているのですが、収録曲としてこれまでバラードが無いので作った、という点が大きいです。
アルバムなら1曲はバラード無いとね・・という考えは古い?そもそもサブスク時代に合わない??
 とは言えそういう理由付けではあります。
2023年9月14日 同名タイトルのアルバムをリリースしました!
BOOTHにて販売中です。

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なかなかイメージが湧いてこない

 今回の曲はかなりの難産でした。個人的にはご依頼やリクエストを受けて、となればイメージを固めやすいのですが、ある意味自分のために作るとなると、どんな曲を自分で聞きたいか、がイメージしにくかったですね。普段だとラフ段階(ほぼコードと主旋律だけ)のものを2~3曲書いてみるとだんだんと見えてくるのですが、作っては捨てて・・を5回以上繰り返したのは初めてでした。
 いくつか参考になりそうな曲を聞くうち、恥ずかしながら最近になって「ミディアムバラード」という呼び方をされるジャンルがあるのを知りました。

作詞をしながら作曲し直し

 (ここでの作曲とは歌メロディのこと)普段であれば主旋律を完成させてから歌詞をのせていくのですが、この曲では割りと完成させつもりでも歌詞の都合で微修正をかなり加えていきました。五線にするとわかりやすいのですが、往年のJ-POPのような16部の細かいシンコペーションが多いうえ、母音を伸ばしたまま音程変化も多い歌となりました。
 ざっくりと主旋律を作り、CeVIO AIのエディターでMIDIを読み込んだ後、歌詞を考えながら入力していきました。

サビ頭部分の原案
歌詞を入力してメロディの雰囲気を足す
ラストサビ前の1度だけでてくるBメロの最後 クドい歌い方がたまらない

表現について目指したこと

 音楽ですからずーっと平坦(そういうジャンルはある)だと飽きてしまいます。Aメロはメロディ感を感じさせず語るような歌い方、サビは情感たっぷりに聞く人を揺さぶりにかかるというのを狙いましたが、語るような雰囲気は(自分の未熟さは認める)AI歌声合成でも難しいなと思いました。

最後に

 このnote見てくれる人のほとんどが私の知り合い、かつこの曲を知っている方だと思いますが、メモも兼ねて文章化してみました。ここまで長くなりましたが、私のオリジナル曲「アイに夢を」お聞き下さい。


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