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計算の順序

加減乗除(四則とも)の混じった計算式の場合、乗除の部分から先に計算して、いったん加減だけの形にして前から順に計算していくものだと、小中学校で習いますね。
なんでそうするのか?と先生に問うても、そう言う決まりだからとしか答えてもらえませんでしょう。
このことを真剣に考えた人が、この世では、ほとんどいないからなんですね。
でも、たいていの子供たちは、この決まりについて「なんで?」という「薄い」疑問を持ったはずなんです。
それでも、たいていの子供たちは、「そんなもんか」と通過儀礼を済ませて大人になっていくのでした。
よって、ほとんどの大人はこの決まりについて、決まり以上の疑問を持たないわけだ。

私も、数学の先生に尋ねたことがあります。
純粋な理学部の数学専門の先生よりも、工学部で教職課程を修めたような先生は、少しだけ合理的な解答をしてくださいました。
※純粋な数学の先生は、「可換」とか「二項演算」あるいは「順序対」という抽象的な説明を下さったので、私が消化不良を起こしました。

工学では、「単位」に注目するんです。
加減の計算では、実は、それぞれの数の「単位」が揃っていないと計算できないという理屈というか大前提があるんですよ。
いきなり、面くらいますよね。抽象的な話ではなく、いきなり具体的な話で説明します。
たとえば、栗饅頭が(饅頭でなくてもいいんです)昨日3個、今日2個もらったんですが、全部で栗饅頭を何個もらったかといえば、単位がいずれも「個」なので5個と足せるのです。
これが水3リットルと、栗饅頭2個を合わせるといくつだというような計算は無意味だということです。

それでね、掛け算の場合、こういう問題の時に単位をそろえてから計算せよという例を示します。
1000円札で、一個200円の栗饅頭を3個買いました。おつりはいくらですか?
1000円-200円/個×3個=1000円-600円=400円
このように、一個当たり200円の栗饅頭を3個買ったという部分を先に計算することで「個」の単位が消え、単位が「円」に統一された減算になっています。

これは工学では次元解析といいます。これを知っていれば単位を覚えておくだけで物理公式が導けるのです。また単位にはその物理数の意味や、ほかの物理数との関係性までも洞察することができて、物理学がとても見通しの良い学問になります。

除法は乗法の一形式で、かける数を逆数に書きなおせますので、乗除は加減に対しては同じ扱いになるのです。
ゆえに乗除の混じった加減の計算では、乗除を先に計算してから、加減の計算をします。

また中学生になると冪(べき)を伴った数字が出てきますが、これも乗算の一種ですから、冪を伴った数を先に計算しますし、底(てい)が同じなら、冪だけを足したり引いたりできますね。
実は、分数や冪(ルートも冪の一種)は一つの数字なんですよ。だから先に計算するんです。
数といえば、整数と小数だけであり、分数は有理数の表し方の一つに過ぎません。
ルート(二乗根)や三乗根は無理数の表し方のひとつです。
※実数の世界を述べていますが、虚数を含めても加減乗除の四則演算法はそのまま適用されます。

これらのことを踏まえて、交換法則、結合法則、分配法則の三法則が理解されると、数学の計算法は完璧です。
※つまり「かっこ」のついた計算から先にするということ。また乗法の記号「×」は「・」で表現されたり、文字式の場合には全く省略されます。ただしベクトル演算では、「×」が「外積」「・」が内積と区別して表現されます。

加法の間の計算は「可換」であるから、多項の加法計算式ではどこから計算しても構いません。
加法の拡張である乗法の場合にも「可換」は成り立ちます。
ところが減法や除法では可換性が成り立ちません。
5-6≠6-5
10÷2≠2÷10
でしょう?

もういちど、加減乗除の混じった計算式に戻ります。
たとえば、
4+5×2=4+10=14
が正しい計算法でしたね。
すべて加法で書けるのですから、この式は、
4+5+5=14
という風にも書けるはずです。
この式なら前から順に計算しようが、後ろから計算しようが、まったく同じ計算結果が得られます。
もっと拡張して、
4+5+5+・・・5=?(5がn個ある場合)
おそらく、みなさん、こう書くはずです。
4+5×n
5×nは、オトナならかっこよく「5n」と書きますかね。
すると、4と5nが別々の計算だということがわかると思います。
だから、5nを先に計算してから、4に足すということが感覚的にわかると思います。

これを数学的には「二項演算の順序対」というらしい。その難解な説明を理解せずとも、掛け算(割り算も含めて)が混じった加減乗除の計算は「乗除」から先にするのだと理解できます。
これは乗除が加減の便法として(式を簡単にする法)存在するもので、あらかじめ計算しておいてその結果を加減していくというものだからです。
もっとも、これは私の理解であって、ちゃんとした数学者の見解とは違うかもしれません。


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