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光電子効果(下)

ロバート・ミリカン(アメリカ)がプランク定数を求めるために用いた方法は、学生実験レベルで行えるものです。
この実験を行うには単色光を得る装置(光路系)と光電子管回路(検出系)が必要になります。
「光電管」もしくは「光電子管」は真空管の一種で、負極がターゲットの金属であり、正極はコレクタといって電子を集める電極になります。
負極に光を当てることで負極金属表面から電子が空間に飛び出し、コレクタに向かいます。
コレクタは電子を捕捉させるために正に帯電させるように回路が設計されています。
こういったものは実験装置として市販されていますが、結構お値段が高いものですがね。

特に単色光を得る光路系は、水銀灯(またはハロゲンランプ)から単色光を取り出すために、レンズや回折格子やらスリットやら複雑な構成で、調整が難しくデリケートなものです。
水銀灯の光には紫外線はもとより可視光におよぶあらゆる光の成分が入っています。
ミリカンは切断してすぐの金属ナトリウムの面を真空中に置き、これに単色光を当てて実験しました。
金属ナトリウムはナイフで切れるほど柔らかい銀白色の金属なんですよ。

私たちは、光を当てた光電管の陰極から飛び出した電子を受ける「コレクタ電極」に与える逆電圧(-V)を変化させて、「光電子」の流れ(電流)を測定して追っかけます。
レーナルト(ドイツ)の推論では電子の運動エネルギーが、「印加した逆電圧×電気素量」よりも小さければ電子は飛び出せず、電流も流れないはずです(阻止電圧)。
電流が流れなくなる点を探ってその時の逆電圧を阻止電圧と考え、それを縦軸に、横軸に照射した単色光の振動数を取ってグラフ化すれば直線が得られます。
この直線の傾きはプランク定数を電気素量で割ったものですから、グラフの傾斜からプランク定数が求まります。

本実験の要所は、水銀灯(またはハロゲンランプ)から得られる単色光の振動数を読み取ることなんですよ。
つまり、光電管に照射されている光の素性を知らないとグラフが書けませんからね。

水銀灯(またはハロゲンランプ)をスリットを通して単色光を得、コリメータ(レンズ)で平行光に揃え、グレーティングという角度変換器に導き分光します。
分光した光はテレメータ(レンズ)で集光され、光電管に当たります。
※コリメータとテレメータは同じレンズですが、断面が半月型で裏表があって、平行光を得る向きをコリメータ、集光を得る向きをテレメータと言うのです。
そしてグレーティング(回折格子)の角度目盛で光の波長と振動数を読み取るのです。

かく言うあたしはこの実験をしたことがないんです。
だから間違った記述があるかもしれません。
物理学実験というのを工学部なら二回生くらいで履修しなければならないのですが、班によって、やる実験とやらない実験が出てきます。
必ずやる実験もあるんですが、そうでないものもあるんですよ。
「クントの実験」とか「アルミニウムの陽極酸化」「球指し」なんていう実験はみんなやるんですが、プランク定数を求める実験は装置が限られているのでやらない班もあるんです。
※二人一組で「班」をつくるんです。あたしは三谷君という高専出身の男の子と組んだんで助かったぁ。高専ではこういう基礎実験は、すでに経験済みなものもあったんだって。普通科高校出身のあたしには見るものすべて「初めて」でしたんでね。

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