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2022Earlyまでのボーカルセオリー

はじめに
2021年後半からYoutubeのボイトレ動画を色々参考にしながらセルフボイトレをやってきました。色々なトレーナーのサンプルを参照しつつこの半年で集約されたルーチンをお伝えしようと思います。
私自身としては出しづらいhi・hihiキーのアクセス改善であるとか、放射線治療後完全に潰れていたC7(hihihi)の発音成功(not発声)だとかの成果があってのお話になります。

「あくびのような動作」を分解して理解する

ボーカルトレーナーたちがそれぞれ説明する言葉の中でよく多用される「あくび」「軟口蓋に当てる」「後ろに向かって歌う」などの分かっているようで漠然とした指示について、構造的に何を狙い、何をさせようとしているのかを簡単ながら図説をまじえ説明していきます

黄色地に斜線部が軟口蓋、オレンジ色の帯が胸鎖乳突筋

水色は気道側のエリア。
音の通り道になる。

青色は食道側のエリア。

イラストについては、内部動作を完全に表現しているわけではなく一般的と思われる頭頸部縦断面をトレスしたものです

トレーニングにおいてあくび、或いはあくびのような動作を求められることが多いと思いますが、これは何を意図した作業かというと水色の領域を広くするためです。

あとの段①②の図で説明をいたしますが、あくびのような動作によって声帯から咽頭(鼻腔の喉側への接続)までの空間を確保していきます。
これによって腹圧をかけた際のエネルギーを効果的に声帯にあて、水色の空間へ導くためのルートを確保できるようになります。

◆あくびの高い汎用性、しかし意識的になぞるのは少し難しい

dあくびというのは、脳に不足した酸素を速やかに補給するための最適化された作業であり、一般的に誰もができる作業と言えます。
誰にでもできるからこそ、共通のトレーニングツールとして、歌唱という作業に代用されている。
あくまで代用というのが肝心で、歌うためには意識的にもういくつかの作業を連動させる必要があります。

大事なのは「あくびによって、歌う際に必要なパーツと思われるものが稼働する」という事実です。

ただ、人間は普段あくびを瞬間的でかつ無意識にやるもので
「あくびの状態で止める」という作業ができない、やりにくい、できているのかよくわからない〜ということもあるかも知れません。

そこで、トレーナーが意図する各動作を分解することから始めたのが、今期のセオリーの根幹となります。

① 首の付け根を基点に、頭骨を後ろにスライドする

一点を見つめて視点がずれないよう頭を後ろにスライドさせていきます。
このままスライドさせるだけだと、胸鎖乳突筋などにテンションがかかって声が詰まり加減になりますので、もう一つ作業を付け加えます

胸鎖乳突筋は耳の後ろから鎖骨の前面に向かって伸びる、頸部の表層にある大きめの筋肉です。大きな筋肉ゆえに力が入りすぎると内側の筋肉(歌で使う筋群)を圧迫します。

①頭部スライド
すごく動かした気になるけど、実際の移動距離は卵一個分程度
②喉と胸郭の持ち上げ
抜けが良い声は、声帯から咽頭にかけての空間が確保されることでもたらされる

②吸気をし、胸を張ってキープする

首を後ろにスライドさせた状態から息を吸い込みます、この辺はあくびと同じ感覚です。
あくびをするように、スライドと吸気を同時にしても問題ありません。

目一杯吸えたら、いったん息を止めてください

目一杯吸ったとき、②の図のような、胸郭の前の方が喉と一緒に持ち上がる感覚になっているでしょうか。

この、胸を張っているような状態を維持したまま、息を徐々に抜いていきましょう
舌先でスーーーと音を鳴らすように抜いていきます

…喉の持ち上がり感、胸の持ち上がり感をキープしたまま、ゆっくり抜いていきましょう。
慣れてないと背筋や首の後ろの筋肉が疲れてくるかもしれません。

息を抜き切ったら、今度は吸気します
みぞおちを意識しながら膨らませ、その上に胸郭が乗っかるイメージです。

②の図では腹圧(大)と書かれていますが、最初ほど大きく吸気する必要はありません。
なぜなら、胸を張ると胸郭底面を支えている横隔膜も展開されており、より小さな力でエネルギーを伝えられる構造に導かれているはずだからです。

この状態から、今度は発声してみます。
①のみのときに比べると、胸鎖乳突筋のテンションが弱まっており、声の抜けが回復していると思います。

これでセット完了です。

○「あくびのような」動作によって期待される内容まとめ

★頭を後ろにスライドさせることによって、持ち上げた喉のパーツを空気の通り道、エネルギーが効率よく当たる場所に寄せられる

★この時、軟口蓋に声を当てやすいようにも導かれている

★胸郭を張った結果お腹を使って呼吸をする構造に誘導され、腹式でかつ安定的な発声に繋げやすい

★喉と胸郭を持ち上げることによって声帯の振動が胸郭側に伝わりやすくなり、チェストボイスにつながりやすくなってもいるでしょう。

★吸気発声のロングトーンでも安定してエネルギーを供給できる

この時の胸郭を、図では傾いた四角形として描いておりますが、実際の骨格はここまではっきり変化するわけではないため、あくまでイメージとして捉えてください

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どんな声(ケーキ)を作り上げたいですか?

ここまで説明した段は、ケーキで言えばスポンジ、土台の部分です。
単なる吸気作業であるあくびを、意識的に利用することによって
エネルギーの通り道をしっかりと確保し、また安定してエネルギーを送り出す構造へとシフト、まさにずらしていく、そんな感覚の作業かと思います。

ここで、トレーナーが多用する表現について改めて説明をすると

軟口蓋に当てる〜
口腔上顎の後側は柔らかい肉の板なのですが、こちらに声を当てるという主旨です。
あくびの吸気の際に口腔の奥を広げるようなモーションが存在するので、それを利用して音を広げることを期待されています。後段であくびを「アーー〜あッ」で表現した際の「アーー〜」の部分がそれです。
図を見てわかるように、何もしなければエネルギーは鼻腔に抜けてしまうか、口腔を通り抜けていくだけです。ここへ意識的に当てにいくことで音の広がりをつけることを期待できます。

後ろに向かって歌う、うなじで歌う〜
私の場合はしっかり後ろに引いて、腹圧をかけて鳴らせている時、あたかも”ぼんのくぼ”の裏に声帯がついていて、それが喉の空間で響いて後ろに広がるような感覚に「なるにはなります」。
が、果たしてそれが正解なのか?ということについては甚だ疑問。
そういうことからすると「響きのポイントを意識でき、それを移動させることができるか」が大事だと考えます

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【1】エッジを「あくび発声」で絞り込む

いよいよケーキの土台にかぶせていくクリーム─声を絞り込んでいきましょう。
前段では、あくびのような〜という代用作業でしたが
今回は本当にあくびをします。

アーー〜あッ、と絵に描いたようなあくびをしましょう
前段で言っていた、頭をスライドとか胸郭を持ち上げるとか気にしなくて大丈夫です。

あくびのモーションに入ったら「いつもよりちょっと長め・大きめに声を出しながら、最後のあッで止めます

この「あッ」が腹圧をかけて歌う際に実に丁度いいポジション、エッジになります。

最初は出しやすいキーで、エネルギーがエッジに当たってメロディをなぞれるよう調整しつつ発声します。
最初は軽めに、エッジを意識しつつ鳴らし、出来るだけ大きく鳴らせるように使うエネルギーを上げていきます

この際に、前段で申し上げた 「あくびのような動作」を組み合わせることで、エネルギーを安定して供給することを期待できます

あくび発声はいわば「お手軽に作れるケーキ用クリームレシピ」と言えます

○「あくび発声」により期待される内容まとめ

★声帯各部の具体的な名称とかは知らんでも、エッジを利用した効率的な発声ポイントに導ける

★ “頭をスライドし、胸郭を持ち上げて〜”が全く分からなくても、あくび発声を繰り返すことで自然とその状態に近づける

★エッジだけの練習に比べて、実践的にエッジと腹圧を利用した歌唱の練習ができる

he土台を組み上げ、エッジにエネルギーを効果的に当てることで中音域を発声することができたとして、最高音域に到達できないといけないわけですが。
その際あくび発声だけではどうにも届かなかったり、歌っていて苦しいなどという事があります。

そこで私が利用しているのが「吸気発声」です。
これによって、音の起点となるエッジをさらにコンパクトなエネルギーで発声させることと、安定して発声させるポジションを探すことの二つを解決させるイメージで使っています。

【2】ピッチを「吸気発声」で持ち上げる

こちらのトレーナー様の動画を参考に吸気発声をやってみてください。
(from: ゆーき先生of歌ゼミ)
https://youtu.be/zbUnCDf60Mw
裏声ベース
https://youtu.be/c-dqYnN1MiQ
地声ベース

ケーキに使うクリームに例えるなら、任意の柔らかさ、ツノまでだせるかどうか〜といった狙いを定めた練習に当たるでしょうか。

動画の練習はいかがだったでしょう?
地声ベースの方が私的には難易度が高くて、見つけるのに月単位で時間かかりました。
トレーナーに比べるとやや雑味が混じりますが、全く手がつけられなかった頃に比べれば雲泥の差です。

この吸気発声というのはおそらくフースラー・メソッドに基づいてのお話だと思いますが。アンザッツの履修であるとか、理解は必要ではありません。
たった一つの物理的合理性を追求していくのがこの段の目的です。

「吸って出るなら、吐いても出る」

非常に短絡的な話ではありますがこの言葉に尽きます。
(動画を見た最初は半信半疑でした←)
「引いて歌う」という言葉を体現するような、喉奥への引き込み感を学習できるかと思います。
また吸気のロングトーンはしっかりとお腹を使った吸気をしないと安定しないはずで、「あくびのような動作」の絶好の活用シーンになりました。

私の中では「裏声で出る音までが、歌えるキー。吸気で出る音までが、限界キー」という認識で練習を繰り返しております。

吸気の場合、使えていないパーツ、使えてない筋肉を稼働させるせいか消耗が早いです。最初の頃は練習10分後には潰れ加減でまるで声が抜けてくれない状態になったり。
ネットで「短時間(数分の練習)にしょう」みたいな注意書きをされていたことを体感する羽目に。喉が重いというか、腫れぼったく感じる日が続いて困りました。

練習を繰り返すうちに、詰まっていた部分(多分エッジの隙間)に微妙な通り道ができるようになって、そこを狙って空気を当てる、といった練習ができるようになりました。

今のところ、C7まで行けるようになったのですが取り組む楽曲の要求はD7。
あと一音なんだけどここが越えられない…出てさえくれれば使いようも整えようもあるけど、出ない…
そういう、物理的限界を見極めるためにも吸気発声は有効だと考えています。

○吸気発声により期待されるメリットまとめ

★数分の練習で充分(マジで喉への力入れすぎ・使いすぎ注意)

★呼気だけで音を探ると力みが生じ無理をしがちだが、吸気で力んでいるとそもそも発声しずらいので力みを回避しやすい

★口を閉じたままできるので人気がないところならどこでも練習できる

★口を閉じているので喉奥のパーツに意識を向けやすい

★歌う際の普段使っていない筋肉を鍛えることができる

ハミングができたらロングトーン→ビブラート→吸気で歌ってみる、といった難易度変更によりセルフレベリングが容易

◉目的別まとめ

・声量をアップしたい、低音を増したい、声を太くしたい、安定させたいなど、声のパワフルさやエネルギーを改善したいケース
→「あくびのような」動作

・エッジに当てる感覚の練習、お腹の圧力を使った操作感、ざっくりお歌の練習始める時
→「あくび」発声の利用

・声のピッチ、音程感を安定させたい、もっと楽に奏でたい、響きを原曲通りにフォローしたいといった声の操作を改善したいケース
→「吸気発声」

総括

吸気発声のモーションは「より少ないエネルギーで鳴らすこと」が是とされるもののせいか。防音室でしっかり声を出さなくても、喉的には使った感触になります。
お風呂や自室、お行儀悪いですがトイレでもやろうと思えばやれますね、隙間時間に最適だと思います。

「あくびのような動作」で身体が整ったら「あくび」で軽く鳴らし。
キーが届かない、ピッチをよりオリジナルに寄せたい時は「吸気発声」で整えてから再トライ〜という組み立てです。

吸気発声の出来に関しては、まだまだ呼気と同等になるほど整ってはいません。
ただ、繰り返すことで筋肉やスペースがちょっとずつほぐれるようです。
完全に何もしない日を含めて数日後に『あれ?!なんか(空気)抜けてね?』という現象がしばしば。
なので、これもネットでちらほら目にする「最高音へのアクセス(トレーニング)は常々やっておくべきだ」というお話も嘘ではないなと実感する次第なので、積み重ねが大事な部分でしょう。

今現在、hihihiキーの安定に向けて練習してますが、もっとパーツごとの解像度を上げた制御をしたいですね。今のところざっくりCT上げて・TA引いてみたいな認識でしかないので、今年後半はその落とし込みをレポートできるようにしたいところです。

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