今どのように立ち上がるかが、これからの日本の姿を決めると考えています

今回は先日、厚生労働省のホームページに公表された第4回LINE全国調査の結果についてお話します。第四回調査においても18,121,559人と非常に多くの方々から有効回答を頂きました。調査回収率が落ちた理由としては、関心と反応率が少し下がったことと、質問項目を多くしたことが起因しています。ただ、それでも今回質問しなければならなかったのは、緊急事態宣言の中で、人々がどの様な痛みを感じ、どのような格差が生まれているのかを明らかにする必要があったからです。ご協力頂いた方々に改めて御礼申し上げます。

既に報告されているように、米国の失業保険の申請数は天文学的数値に上っています。

これはリーマンショックを遙かに超える数で、それだけ新型コロナウイルスの影響が甚大なことを物語っています。一方でロックダウンや行動制限の方法、経済的な保障については、各国状況が異なっています。新型コロナウイルスとの対峙の中で生じた痛みや格差については、日本は日本の現状のデータに基づいて考えていく必要があります。

まず第一に強調すべきことは、幾つかの業種については、業種の規模を問わず非常に大きな影響を受けていることです。

“収入・雇用に不安を感じている”と答えた人は、タクシードライバーで82%、理容・美容・エステで73%、宿泊業・レジャー関連で71%、飲食業で66.2%と大多数となっています。これらの業種については、5000人以上の雇用を抱える大企業から中小企業関係なく、一律に大きな影響を受けていることが図からも伺えます。

またこうした雇用、収入の先行きの厳しさは精神面にも影響を及ぼしています。”毎日のように憂鬱であった”、”楽しめていたことが楽しめなくなっている”という抑うつ傾向を示していた人達も、何れの業種においても10%前後と、高い割合を示していました。これらの業種で働く人達を、どの様に支えるかは社会にとっても喫緊の課題であると言えます。

また業種の中でも今後の見通しが異なることにも注意が必要です。緊急事態宣言が解除された後、以前と同様とはいかないまでも、一定の制限で働くことができる職業と、客入りが根本的に変わる職業があります。ドイツでも観光業の3分の2が倒産危機という報道があります。特にインバウンドに関連した人の移動に関わるビジネスは、今後も厳しい見通しであり、どのようなアプローチでサポートするのかは重要だと思います。

それ以外の業種においては、”収入や雇用に不安を感じている”という項目に最も大きな影響を及ぼしていたのは事業規模でした。これは、以前からも指摘されていたことです。既に政府も様々なアプローチでサポートを始めていますが、小規模企業の不安の割合は、大企業と比べるとどのカテゴリにおいても2倍〜3倍となっており、この点も迅速かつ効果的な支援が必要であるといえます。

最後に強調しておかねばならないのは、最も強い抑うつ傾向を示していたのは、学生達であったということです。若年者については新型コロナウイルスにかかっていたとしても比較的軽症であるということで、”いうことを聞かずにかってに出歩く”という文脈で加害者的に扱われることもありました。しかしながらクラスター班の分析でも、繁華街の出入りで最も人の出入りが減少してたのおは10代、20代でした。もちろん全員ではないですが、日本の多くの若者達は適切に自粛をしていたといえます。

一方で今回の調査で学生の回答は、”毎日のように憂鬱であった”が14.4%、”楽しめていたことが楽しめなくなっている”が13.0%と全カテゴリでトップです。大学生に限定するとより顕著になりますが、これは身体面への不安ではありません。発熱者に限定して、同様の質問を行った場合には学生は一番不安が低くなります(若年層の重症化割合が低いという情報が影響していると思われます)。では彼らは何故苦しんでいるのか?1つはアルバイトが出来なくなり学費が払えない、生計を立てられない学生が一定数いることは背景にあるでしょう。もう1つは、リーマンショックを超える不況の中で、職を得ることが出来ないという不安を抱えていることもあるかもしれません。いずれにしても、コロナ禍の中で最も辛さを感じている立場の1つが学生達であり、彼らの未来を守るための対策もまた不可欠であるということです。

3月から長く続いた自粛は、日本の多くの人々に影響を与えました。これから各々の経済活動や社会活動を取り戻していくことも非常に重要です。一方で、こうした状況下で辛い思いをしている人達をどのようにサポートして、一緒に立ち上がるかが、その国の未来の姿を決めるのだと思います。

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