新型コロナウイルス第2波、その先の流行と向き合うために

LINE社と連携した第5回「新型コロナ対策のための全国調査」の結果が公表されました。調査の概要は厚労省のページに公表されています。この調査から第一波と何が違うのか?これから何に気をつけなければいけないのか?について解説したいと思います。

1.第2波の感染はどの程度拡がっているか、3月の流行と比べて何が違うのか

表に8月12日時点(第5回調査)での4日以上の発熱が続く人の年代別の割合、それと対比する形で4月1日時点(第1回調査)の年代別の割合を示しました。8月のこの時期は熱中症による発熱もありますが、複数の臨床医の見解では熱中症では”4日以上の発熱”とはならないため、この症状での比較を行いました。もちろん無症状患者もいる中で、この症状がある人が新型コロナウイルスに罹ったひとの全てではなく、また4日以上の発熱が続く方々が必ずしも罹患している訳ではありませんが、感染の広がりを推測する上で有効な方法だと考えました。

発熱者の割合_第5回

こうしてみると全国的に、15-44才群は前回と比較してやや高い割合で症状を有し、45-64才群は若干減少、65才以上の群は減少傾向である、ということが言えます。ただ4月の時点と比べて、年代別の症状の分布はあまり変わってないことが示されています。日本の流行の第1波においてもアクティブに動く若年層が多く罹患していたが、重症症状を有する人が少なかったため、陽性者として把握されていなかったと考えられます。一方で、今回の流行では65才以上の人々が特に気をつけて行動していることが示唆されていますが、後述するように全般的にリスク管理には改善の余地があります。

では感染は4月と比べてどの程度拡がっているのか?検査の基準が変わったため、陽性者は7月8月の流行で大幅に増えましたが、4日以上の発熱者においては都道府県単位でみると”埼玉県、東京都、神奈川県、新潟県、大阪府、兵庫県、鳥取県、岡山県、香川県、高知県、福岡県”の11都道府県で統計的に有意に低い割合となっています。一方で岩手県では逆に高くなっているなど、感染自体の広がりに注意しなくてはなりません。感染予防行動や感染管理の対策により、爆増には至っていませんが、地方であっても感染は拡がりうるのです。特に把握されている陽性者と、症状を有する人々の割合に乖離がある地域は注意が必要かもしれません。厚生労働省のページでは解像度が悪いため、公表されている表に基づいて、もう少し高い解像度で図に市町村毎の症状分布を示しました。御参照頂ければ幸いです。

図1

2.今後何に気をつけて生活しなければならないのか?

第5回の調査で新たに収集したのは、”働く場で感染対策を行っているか?”です。今回は”飲食店”を”接待を伴わない飲食”と”接待を伴う飲食”に分けて、手洗いやマスク着用だけでなく、3密回避や体調管理などガイドラインで提示されているような対策を行っているかを確認しました。職種毎のリスク管理実施状況と、統計検定の結果を表にお示しします。”+”のマークがついている項目で、その対策を実施している職場で働いている人が、対策を実施していない職場に比較して、統計的に有意に症状の割合が低い項目です。

第五回予防行動_職種別

因果関係の詳細な検討は、追って追加解析で行いますが、驚いたのが、ほとんど全ての職種×項目でリスク管理が重要だったことです。正直調査実施前は、一部は有効ではない組み合わせもあるのではと考えていたのですが、想定以上にリスク管理は重要でした。(続報で公開予定ですが、地域別でも大きな差があります。感染拡大が顕著だった地域は特に対策実施割合が低くなっています。)

全体を見ていくと課題も浮かび上がります。マスク着用は全体的に遵守されている一方で、飲食においては、よりリスクが高いと考えられる”接待を伴う飲食”で実施割合が低いということです。また3密回避が難しい、飲食業やタクシーなどでも密閉密接の対策を諦めているケースが散見されます。しかしながらタクシーであっても、窓の開放による換気、ビニールシートによる運転席と後部座席の密接対策などできる三密対策はあります。そしてこうした対策を行っている働きの場では症状を有する従業員の割合が低いのです。これは飲食店を含めた他の職種でも同様です。一方でオフィスワークにおいても、体調管理の実施が低いことが明らかになりました。体調が悪くても休めない人が依然半数以上に上っている点には改善が必要です。今後は対策が難しい働き方こそ、取り組みをサポートしていくことがより重要になります。

別表に個人としてのリスク対策の状況を示しました。

第五回予防行動の変化

第4回(5月1日)調査と比較しても、ほとんど全ての項目でリスク対策が甘くなっていることが示されています。オフィスにおけるテレワークの実施割合の激減などは、象徴的な変化です。オフィスワーク以外の働き方では、テレワークの導入は困難ですが、テレワークの導入が有効であることは先行する調査でも明らかになっています。

ワクチンの普及、治療・検査方法のイノベーションなどで、状況が改善する見通しはまだ明確ではありません。WHOによって今後2年以内という見通しが示されましたが、それまでの期間においては、”もちこまない”、”うつさない”、”拡げない”の感染対策は非常に重要になります。今回お示ししたように様々な領域で、働き方・すごし方には改善の余地があります。いのちを守ることと、経済・社会活動を両立するうえで、日々行う取り組みが重要であることを今一度共有できればと思います。


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