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自己紹介&今の課題意識

少し長くなりますが、自己紹介と今何を考えているかについてまとめてみました。

現在、私はスタートアップと大企業の架け橋となり、インパクトのあるオープンイノベーションを創り出す仕事に2008年からチャレンジしています。 そんな私が、何故VC産業に飛び込み、今もなおVCの立場からチャレンジしているかについて書いてみました。

スタートアップを支え社会を変える一助となるVC

VC(ベンチャーキャピタル)の仕事は、本質的には投資ではなく、

世界を変えていく力を秘めたスタートアップ企業を支え、共に事業を創り上げる仕事である。

VCの一角、JAFCOに新卒で入社し、スタートアップと大企業のオープンイノベーションを推進する業務を10年以上手掛けてきた私としては、あらためてその認識を強くしています。

私がVCの存在を初めて知ったのは、立命館大学在学時の授業のときでした。もっと詳しく知りたいと思った私は、大学生協で「アメリカを創ったベンチャー・キャピタリスト」という本と出会いました。

GoogleやAppleなどの名だたる企業にもかつて不安定だった創業期がありました。そういった企業のポテンシャルにいち早く目をつけ、まだ知名度も低い時期から経営面・資金面で支援を続け、ともに事業を育てていったベンチャー・キャピタリストたちのインタビュー記録をまとめた本です。

VCの支援がもしなかったら、GoogleやAppleの革新的な商品・サービスのリリースはもっと遅れたかもしれません。


今よりもVCの認知が日本ではまだ低かった時代です。「そんな仕事があるのか!」と学生だった私は驚き、同時に強いあこがれを抱きました。

いずれVCで働けるようになりたいという思いで、就活ではファイナンスや経営コンサルの会社を中心にエントリーしていました。半ば記念受験的に受けたJAFCOでは、新卒ではどうせ受からないだろうと純粋にVCへの憧れや自分の熱量をひたすらぶつけたのですが、結果的にご縁を頂くことができました。


そうして、私のベンチャー・キャピタリストとしてのキャリアが始まったのです。


スタートアップと大企業のオープンイノベーション推進における課題

JAFCOに入社してから、私は次のような業務を経験してきました。

2006年~2008年 投資業務

2008年~2013年 ファンド組成・資金調達・投資家対応業務

2013年~2014年 出向先の日本M&AセンターにてM&A仲介業務

2014年~現在   ビジネスディベロプメントGにて投資先支援業務。現在は事業開発支援と採用支援に注力。

様々な経験を積んできたことで、スタートアップ・大企業それぞれの立場からオープンイノベーション推進の知見を深めることができたと考えています。

オープンイノベーションに関わる方々の共通見解として、「スタートアップと大企業の間には翻訳者が必要だ」とよく言われています。

GAFAMの存在が世界市場において社会的インフラとして根付き、日本においてもレガシーシステムからの脱却が迫られる中で、多くの大手企業がデジタライゼーションの流れの中で新しい試みをやっていかなくてはならないという思いを強く感じています。自社だけでは狙いづらい市場を補完する協業先を探すために、スタートアップの情報を集めようと動く企業が増え、VCへの出資にもより高い関心が寄せられるようになりました。

10年前と比べれば、スタートアップと大企業とをつなぐインフラは充実してきました。現在ではスタートアップ企業がSNSや各種メディアを通じて情報発信を盛んに行っているため、大企業側もスタートアップの情報を以前よりも得やすくなっています。しかし、情報が増えすぎたことで「自社のビジネスと本当にマッチするスタートアップがどこなのか」を見定めるのが逆に難しくなったのも事実です。

DXにせよFintechにせよ、当該領域の事業を行うスタートアップは無数にあります。スタートアップ側も当然全ての情報を公開しているわけではありませんから、それこそインサイダーに近いレベルで情報を正確に共有できるかどうかが協業を成功させるポイントの一つになります。大企業からするとスタートアップの魅力に目が向きがちですが、様々な課題についてもきちんと把握する必要があるのです。

スタートアップ企業の強みは、スピードと突破力です。小規模な組織だからこそ、社会や市場の変化に柔軟に対応でき、自社の理念や価値観に基づいて事業を加速させていく力があります。一方で、大企業よりも振れ幅が大きく、成功だけではなく失敗のリスクも大きいのもスタートアップの特徴として理解しておくべきでしょう。

スタートアップと大企業とのオープンイノベーションの現場では、大企業主導ではなくスタートアップ側に軸を置いた協業の方が成功しやすいように思います。協業の真価が発揮できれば、双方の利は非常に大きくなります。実例として、ある大手企業と技術系のスタートアップとが協業したケースを挙げてみましょう。

ある大企業は「日本におけるものづくりを強化したい」という問題意識を強く感じていました。そして今後のためにも革新的なプロダクトを生み出していく必要があると考え、ソリューションの一環としてあるスタートアップの技術に着目したのです。窓口となった大手企業の担当者は社内でコンセンサスを取ってから、スタートアップに対して出資と人員の出向を行いました。結果、それまで5~6億規模で売上が横ばいだったスタートアップの業績は短期間で一気に2倍に跳ね上がったのです。

このように、スタートアップと大企業のオープンイノベーションで爆発的な成果を出せた事例は一定数あります。しかし、そのような事例の大半には次のような共通点があります。

①    スタートアップ側に大企業の経験者や理解者がおり、スタートアップ側の主張と大企業側の期待値をうまく調整している。

②    大企業側にスタートアップの経験者や理解者がおり、スタートアップと組む理由について社内であらかじめ合意を形成してから協業を進めている。

これらの成功条件では、スタートアップと大企業側いずれかに相互の文脈を調整できる人材がいるかどうか属人的な面が強く、意図的に再現することが難しい状態です。

スタートアップと大企業の協業を進める際、多くの場合は利害関係者の間で次のような構造的な問題が生じます。

スタートアップと大企業とが協業で成果を出すには、ともに事業を創るパートナーとして本気でぶつかりあった上で、大企業側でも新規事業担当部署だけではなく事業部全体で次のコンセンサスを形成する必要があります。

「どうしてイノベーションを起こす必要があるのか?」

「協業で解決したい課題は何なのか?どうして『本気で』解決したいと思うのか?」

土台の部分の言語化と共有ができないまま、スタートアップと大企業が協業を進めてしまうとどうなるでしょうか?よくあるのは、あくまでも何かしらの目的を達成するための手段である協業が、いつの間にか目的になってしまうケースです。そうなると、本来目指していたゴールとは方向性がずれて途中でアライアンスを断念することになったり、本来はもっと高い地点までたどり着けたはずなのに途中で妥協が生まれたりしてしまいます。

オープンイノベーションの推進においてはスタートアップと大企業双方の歩み寄りが必要ですが、資金的・人材的キャパシティを多く持っていることから、より歩み寄りやすいのは大企業側であることが大半です。協業の強みを殺さないためにも、大企業側がスタートアップの意図を汲み取りながらアライアンスを進めると効果的な協業体制を作りやすくなります。


新規事業の担当部署はそういった背景を理解できていることがほとんどですが、他の事業部や統括部からすれば「なぜスタートアップと組まなくてはならないのか」を理解できないことがほとんどです。そのため、第三者の新規事業コンサルを入れて事業部や統括部が協業のメリットを理解できるようにストーリーを組み立てるケースが増えているのですが、あまりに細かくストーリーを組みすぎるあまりに適切な協業先スタートアップの選択肢を狭め、アライアンスの可能性を減らしてしまうこともよくあります。

実際、「協業先を探している」と大企業の方からご相談を頂いた際に、いくつかのスタートアップの候補や協業した際に見込める効果をご提案すると、「なにか違うんだよね」といった反応を頂くことがあります。どうしてそういった反応になるのかを調べていくと、既に出来上がったストーリーとご提案した内容がずれていることが多いのです。


通常の事業であれば、綿密なストーリーを組み立ててからビジネスプランを進めていくのは当然のプロセスです。しかし、ストーリーに当てはまる理想的なスタートアップが存在しないことは多々ありますし、仮に合致するスタートアップがあったとしても、そことの協業がうまくいくとは限りません。

ことスタートアップとの協業においては、アライアンス先を選ぶ段階ではある程度のファジーさが必要です。そういった点も、オープンイノベーションの課題をさらにややこしくしています。

私はVCの一員として様々なオープンイノベーションの事例を経験してきました。大企業側の文脈をうまく理解できないまま、マッチングの機会をとにかく増やそうと動き、なかなかうまく行かない現実に悩んだ時期がありました。

構造的な課題を抱えたイノベーションの現場で、本当に機能する「翻訳者」を作り出すのは容易ではないと、自身の経験から痛感しています。

だからこそ、より価値あるオープンイノベーションを今後創出するために、ぜひ多くの方と問題意識を共有しながら一緒に考えていきたい。そういった観点から現在、大企業で新たなチャレンジを模索されている方を対象とした「& JAFCO Meet upシリーズ」などの場で様々な情報発信に取り組んでいます。


「やりたいこと」をフラットに見つめ直してチャレンジを続ける


現在、投資先への支援として主に採用のサポートも行っていますが、スタートアップへの関心は転職希望者の間でも高まっていると感じます。証券会社やコンサルファーム、商社、公認会計士など幅広い出自の方からご相談が増えました。

単純な条件面だけを考えるなら、スタートアップへの転職は不利なことばかりです。年収はまず下がりますし、福利厚生や教育制度も整っていないことがほとんどです。転職後は今後のキャリアの選択肢も減るでしょう。

「成長機会がもらえる」「権限が増える」というように与えられるチャンスを理由にスタートアップへの転職を考えている人には、「止めておいたほうがいい」と言います。変化が激しいスタートアップでは、入社前に期待していたチャンスが会社の方向転換であっという間に失われる可能性もあるからです。

逆に「スタートアップに転職すべき」と背中を押せる人は、自分のやりたいことが明確で、その関心分野にコミットするためにスタートアップの道を選ぶ人です。たとえば「仮想通貨はこれからの世界を変える!」という情熱を持った人であれば、仮想通貨を扱うスタートアップで価値観が近い企業に入社すればやりたいことに100%コミットできます。そういう人はスタートアップに転職した後、どのような立場になったとしても成果を出せる傾向にあります。

最終的にはご自分の決断次第だとは思いますが、キャリアに迷われている方は「自分のやりたいこと」と「今置かれている環境」についてフラットに見つめ直すことをおすすめしたいと思います。

あなたの情熱を傾けられる「やりたいこと」は、何でしょうか?ぜひご自分に問いかけてみて頂ければと思います。

やりたいことの内容によっては大企業のほうが実現に向いている場合もあるでしょうし、スタートアップの方が適している場合もあるでしょう。どんなキャリアであっても、「やりたいこと」に向けてチャレンジを続けた先に道が拓けてくると思います。

私がJAFCOで今後挑んでいく「やりたいこと」は、日本のオープンイノベーションをとにかく推進させていくこと。オープンイノベーションに関わる業務を長年続けてきたからこそ、誰もが「課題」を感じているのにアクションを起こしきれていない現状が本当にもったいないと感じています。

日本にある様々なアセットを活かしきれないまま、リソース不足に悩むスタートアップと大企業とを繋ぎ、さらにインパクトのあるオープンイノベーションを未来に生み出していく。それが、私の未来に向けたチャレンジです。


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