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システムコーチングとベンチャーキャピタリストとしての「人」への支援:より良い伴走者を目指して


2006年にJAFCOに入社してから約17年、私はベンチャーキャピタリストとして起業家の方々やオープンイノベーションの創出に向けて挑戦されている方々とともに伴走してきました。
また、2014年からはシード・アーリーステージの投資先を中心に、30社以上の投資先支援に関わってきました。そんな中、私は一貫して「人」の成長に貢献していきたいという思いを抱えていました。

さらなる成長に向けて投資先の事業を支援し社会に大きなインパクトを生み出すことは、ベンチャーキャピタリストとして重要なミッションです。しかし、どんな企業でもその組織を構成しているのは「人」に他なりません。
特にスタートアップ企業は、PDCAサイクルをハイスピードで回しながら組織の急成長を図るため、チームマネジメントに何かしらの課題を抱えがちな傾向にあります。

そこで、VCの仕事を通じて起業家の皆さんと伴走し、さらなる価値をお届けするために、私が2021年から学び始めたのがシステムコーチング®です。
今回は、なぜ私がシステムコーチングの学びを選んだのか、具体的な実践内容も含めてご紹介できればと思います。

システムコーチング®は、CRR Global Japan 合同会社の登録商標となります。(http://www.crrglobaljapan.com)本文中では以下、®マークを省略して表記いたします。

システムコーチングを学び始めた理由:「人」の成長を支援し、さらなる価値貢献を図る

 もともと私は、20代の頃から「人」に関わる瞬間が最も楽しく、いきいきと取り組める傾向にありました。そのため、相手と伴走しながらその成長を支援する手法としてコーチングを学んでみたいという思いは随分前から感じていました。
ただ、日々の業務に全力でコミットしていく中で、学ぶべきことや取り組むべきタスクは非常に多く、結果的に自分の中での優先度を下げてきたのは事実です。

コーチングの学習に対する優先度を再び見直しはじめたのは、2017年から投資先の採用支援に携わり出したのがきっかけだったように思います。
エグゼクティブクラスを中心に500名以上と面談を実施し、コアメンバーの採用に関わっていく中で、あらためて「人」の重要性を再認識しました。

事業開発支援において、チームの雰囲気やモチベーション、未知の課題に対してどう前向きに取り組んでいくかといったマインドセットの面でのすり合わせは非常に重要です。しかし、明確な正解がなく、具体的な成果も見えづらいため、どうしても取り残されてしまいがちな課題でもあるように思います。
あらためて組織を支える「人」の部分にアプローチし、貢献価値を創り出していきたい。そんな思いから学び始めたのがシステムコーチングです。
 

システムコーチングとは何か?基本的な考え方とアプローチ法

コーチングと一言で言っても、様々な流派や考え方、アプローチ法があります。その中でも、システムコーチングは「個人」ではなく「人と人との関係性」に焦点をあてるアプローチです。

会社組織はもちろんのこと、友人関係や夫婦関係など社会には様々な「人と人の繋がり」があります。良好な関係性を築けている場合もあれば、険悪な関係や無関心同士の関係もあるでしょう。
 関係性を見ていくと、たとえば以下のように関係性の中に隠れていて、明らかになっていない情報があります。

  • 日頃伝えられていない感謝の気持ち

  • あえて口に出していない尊敬の想い

  • 業務に集中できない原因になっているプライベートでの事象

  • 責任を取らないように胸に秘めている反対意見

  • 以前のミーティングに対する不満(十分な説明なしに提案が却下された等)

  • 無視されている要望、あるいは口に出してもスルーされている要望

こういった情報は何もしなければ表に出てくることはありません。こういった「Elephant in the room(部屋の中にゾウがいるのに誰も何も言わない)」の状態のまま、私達は日頃様々な意思決定をしているのです。


Forbes「Is There An Elephant In The Room? Name It And Tame It」より画像引用

システムコーチングでは、この見て見ぬふりをされているゾウにフォーカスしていきます。つまり「その関係性が何を望んでいるのかを明らかにする」ことにコミットし、セッションを通じてこれらのブラックボックスを明らかにしていくのです。
システムコーチングにおいて大切なのは、以下の考え方です。

誰もが正しい、

ただし全体からすると一部だけ正しい



たとえばAさん・Bさん・Cさんの3人の組織があるとします。3人それぞれ違う意見を持っていますが、システムコーチングでは彼らの意見は「全員“一部分”は正しい」と捉えます。逆を言えば、誰も全体像を掴んだ答えはないと考えます。一人の人が「100%正しい意見を伝えていることはない」と考え、チームメンバーの心理的安全性に配慮しながら、全員の声に耳を傾けるのです。

もちろん最終的な意思決定をする際に、採用されない意見は必ず生じます。けれど、その裏側にある想いや経緯をきちんと紐解くことによって、新たな気づきであったり、、意思決定後の関係性が変わってくるのです。

もちろん1回1回の変化は微々たるものでしょう。システムコーチングでは「2度の変化」と表現することがありますが、その時点では角度2度分の変化しかなくても、積み重ねていくことで大きな違いが生まれていきます。

つまり、システムコーチングによって、よりよい関係性に繋がる中長期的なインパクトが生まれるのです。そうすると、結果的にプロジェクトやチームのアウトプットの質も向上していきます。
システムコーチングについて更に詳しく知りたい方は以下の記事もぜひ読んで見て頂ければと思います。

システムコーチングとは:https://crrglobaljapan.com/
システムコーチングって何ですか?:https://crrglobaljapan.com/worldworkers/systems-coaching/

200時間に渡るシステムコーチングの学びと実践:チームの質感が変わる体感

システムコーチングのプロ資格を取得するまでには、ざっくり計200時間のインプットとアウトプットを要します。
前半(100時間):理論を学び、実際にシステムコーチングを体験するインプット
後半(100時間):実際にセッションを提供し、理論を実践に落とし込む。

 私はちょうど前半を終え、今スタートアップのチーム等を対象に後半の実践に取り組んでいるところです。
先述した通り、システムコーチングのインパクトは中長期的にもたらされるため、現状では目立った成果はありません。

ただ、私自身がすでに前半パートでシステムコーチングの効果を体感しているため、よりよい関係性づくりのヒントや気づきは確実にお届けできていると思っています。

前半パートでのシステムコーチングの体験は私にとって衝撃でした。それまでは互いに深入りしない大人の学習チームだった関係性が、3日間のセッションを経た後、まるで3年間苦楽をともにしたメンバー同士のような質感に変わったのです。
https://www.facebook.com/photo/?fbid=662022065279283&set=a.222742925873868

私が体験したようなシステムコーチングによる関係性の改善効果をもしスタートアップの方々に提供できれば、組織の成長に伴って生じる価値観のズレや不満の蓄積に起因するメンバーの離脱を減らせるのではないかと考えています。

スタートアップの方々が事業を推進していくにあたって少しでもお力になれるように、システムコーチングの技法を取り入れながら、今後もベンチャーキャピタリストとしてよりよい支援のあり方を模索して参ります。

もし本記事を通じてシステムコーチングに関心を持たれた方は、西中のTwitterもしくはFacebookにてメッセージを頂ければ幸いです。個別にお話させていただければと思います。
Twitter https://twitter.com/vc_takayuki
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文章協力)株式会社SHUUU

 


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