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【ピアノ】大人の学習者を苦しめるシューマンの”呪いの言葉”

最近、noteを見て気づいたのが、Youtubeの「大人の中級、無理だから諦めろ」みたいなこと言っている動画のことを話題にされている方が何人かいること。

noteって穏やかというか、スルースキルが高い人が多いので、XやYoutubeより平和だなぁと思っているのですが、それでも(私を含めて)取り上げるということは「やはり心が傷つくよね」ということなんだと思います。

私はピアノレッスンにおいて、最も重要なことは生徒のモチベーションを上げることだと思っているので、たとえ、それがただ視聴数を稼ぐのが目的で過激なタイトル付けているだけで真意は違うんだよ、ということであっても、教える立場の方がそういうことをやるのはよくないと思っています。

まさに、ピアノレッスンにおける「 #駄言 」。
ちなみに「#駄言」というのはこちらの本からの引用です。

心を打つ「名言」があるように、心をくじく「駄言」(だげん)もあります。
駄言には無意識の思いこみ、特に、性別のステレオタイプによるものが多くみられます。
これは、そんな滅びるべき駄言を集めた辞典です。

朝ドラの「虎に翼」の「スン」にも相通ずるといいますか、音大などでピアノの専門教育を受けていて、さらに先生という生徒に対して「上の立ち場」にいる人たちこそ、選択する言葉には気を使ってほしい、というのが私の正直な気持ちです。

元ネタはシューマンのユーゲントアルバム

私は、ピアノの先生は権威主義的な傾向があるように感じていて、以前の私の先生もそうでしたが、何か自分の持論としてすごくいいアドバイスをしているつもりでも、実は何らかの引用だったりします。

今回の「大人は中級あきらめろ」みたいなことの元ネタも、シューマンの『子供のためのアルバム(ユーゲントアルバム)』に書かれているものをアレンジしたものでしょう。

やさしい曲を、上手に、美しく弾くように努力しなさい。難しい曲をいい加減に弾くよりはずっとましです。

『子供のためのアルバム(ユーゲントアルバム)』 R. シューマン

かのシューマン大先生が言う「名言」なのだからということで、生徒に紹介するピアノの先生は結構いるのではないかと思います。

実際、以前習っていたピアノ教室の発表会のプログラムにも、わざわざこの言葉が書かれていました!

よっぽど、生徒から「発表会の曲はとにかく難しく聴こえる曲、映(バ)える曲をレッスンしてくださ~い」とリクエストされてムカついていたんだろうな、と思ってしまいましたが(w💣

中級を目指すのはある意味当たり前

さて、そんな虎の威を借る、もといシューマンの威を借りて大人の生徒に苦言を呈するピアノの先生方の言う通り、僕たちは易しい曲をあえて練習すべきなんでしょうか。。。

例えば、僕は自分にとっての難しめの曲、ベートーヴェンのソナタの練習をしていてうまく弾けていませんが、それをすっぱり諦めて、シューマン先生のいうとおり、例えば、ユーゲントアルバムを練習すべきなんでしょうか。

そんなの無理!
だって、シューマンには悪いけど、ユーゲントアルバムは正直つまらないですから。

例えば、「楽しき農夫」とか、いまさらその曲を美しく弾くことに情熱を燃やせません。まったく奮起できないです。せいぜい、楽しき農夫って「崖の上のポニョ」のパクリ元の曲だよね~、ってネタ的に弾くだけでしょう。

実際、初級レベルのユーゲントアルバムは、大人の生徒に全く人気がないように見えます。好んで弾いている人見たことない。

一方、同じシューマンでも、易しめの中級レベルである「子供の情景」、例えば「異国から」や「トロイメライ」とかは、大人からピアノを始めた人でも挑戦しているのをよく見るし、それとは大違い。この違いは何なんでしょうか。

要するに、シューマンという大作曲家といえども、初級レベルの難易度で誰もが弾きたくなるような名曲を作るのは至難の業だということだと思います。

実のところ、多くの人が弾きたくなるような名曲のほとんどは中級以上、というのが現実じゃないだろうか。だから、皆さん、中級を目指すんでしょう?

それをあきらめてしまっては、ピアノの本当の楽しさを9割方捨てるのと一緒なんじゃないか、と思ってしまいます。

だからですね。
僕は、せっかくピアノを始めたのなら、一部分だけでもいいから、ただ音を並べるだけでもいいから、素晴らしい中級以上の曲を弾いてみようよ、と言いたいです。シューマンの呪いの言葉なんか気にしないでね。

ピアノが上達するには難しい曲を弾くことも必須

それにですね。
僕は、ピアノって結局、難しい曲をあえて弾かないとうまくならないのでは、とも思っています。

以下は、私が子供の頃(小学生、中学生)の実体験を経て至った、現在もほぼ変わっていない考えです。

1.ピアノの名曲は、中級以上の曲がほとんどである。
(名曲というか、自分が練習してみて、弾いてみてよかった!感動した!と思えるような曲ですかね)

2.初級レベルの曲を弾くことでかえって挫折する可能性がある
(小学生のとき、ピアノの先生に練習していた曲をすべて中止され、まさに簡単な初級レベルの曲に戻って美しく弾くレッスンを強制されました。その結果、心が折れてしまい、ピアノを弾く意欲を一時期なくしました)

3.易しい曲を練習して、ピアノが上達したという実感はない。
(実際、心が折れたので、上達するも何もなかったです)

4.自分にとって無理めの曲に挑戦すると、ピアノは格段に上達する。
(例えば、中学生のときの合唱コンクールの伴奏とか。ソナチネの簡単な曲を習った程度の腕前ではそれこそ無理ゲーと思いましたが、あきらめずに頑張った結果、何とか仕上がったし、ピアノも確実に上達しました)

この小中学生のときのピアノに関する苦しい経験と、大人になってもピアノを楽しめるきっかけとなった出来事は、次回以降、書こうかなと思います。

ときどき、僕は「大人からピアノを始めた人がうらやましい」と思うときがあるんですよね。

子供のときに、ピアノの先生や音楽の先生からされた嫌なことの記憶・経験に苦しめられることがないから。

大人である今と違い、子供のときって大人(=ピアノの先生、音楽の先生)の言うことに逆らえなくて、ヤラレっぱなしになってしまうんですよね~。

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